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今回のテーマは、「上質なお寿司を高いコストパフォーマンスで食べるテクニック」。ポケットコンシェルジュのお寿司担当、大岩純也さんに指南役をお願いし、プロフェッショナルだからこそ知るノウハウと実践法、おすすめのお店を教えてもらいました。高級寿司店との新しい付き合いをここから始めましょう。

「一流店のお寿司をコストパフォーマンスよく食べたい」。寿司好きなら誰しもが抱くこの願望。名店であればあるほど敷居が高く感じられてしまうお寿司屋さんですが、実は視点を少し変えることで、想像以上に高いコストパフォーマンスで楽しむことができます。

大岩さん曰く、キーワードは「ランチ利用」「中心地から離れたエリア」「立ち食い」の3つ。以下に、それぞれの方法やポイント、コスパよく食べられる理由について解説します。

・高級寿司店の「驚愕ランチ」を狙う

コストパフォーマンスを考えるならランチを利用するのがおすすめ。超一流と言われる高級寿司店でも、ランチ営業をしているお店はあります。しかも、なかには「こんなにお得に？」と驚愕するお店も。コスパのよさを実現するのが、高級寿司店における昼と夜の業態の違いだそうです。

「ひと昔前までは、夜に高級寿司店で食事をする場合、カウンター席で自分の好きなネタを頼むのが一般的なスタイルでしたが、今は『夜のお任せコース』と言って、店側がその日の仕入れ状況をもとにコースで提供するのが基本的なスタイルになっています。概ねの構成は、最初にお酒のあてになる一品料理が４〜６品が出てきて、その後に握りが12〜14貫ぐらい。一方、ランチ営業は、基本的に握りのみでやっているお店が多いです」

では、その上で、なぜランチ利用だとコストパフォーマンスがいいのでしょうか？

「ポイントは、夜のコースで提供される一品料理の原価が、握りに比べて高いこと。ランチではその一品料理を省くため、価格がぐんと抑えられます。しかもお客さんは『ランチではお酒とともに料理を楽しむのではなく、純粋に上質な握りを食べたい』という人が多数派。そのニーズにダイレクトに応えたのが、高級寿司店のランチです。今、夜のお任せコースの主流が３万円台。それがランチでは１万円を割り、お店によっては5,000円前後で提供しているところもあるので、かなりお得感があると思います」

大岩さんの知る限り、昼夜でネタの質を変えるお店はほとんどないそう。肩肘張らず高級寿司店デビューをしたい方や大切なお相手との食事でも、ランチ利用はおすすめできるそうです。

・中心地から少し離れたエリアの店へ行く

次にご紹介するのは、中心地から少し離れたエリアの高級寿司店を利用する方法です。中央区銀座や港区六本木・西麻布などの一等地ではない分、家賃と人件費が抑えられ、それが価格に反映されるためです。加えて、このエリアのお店には、「なぜこの地を選んだのか、独自のストーリーもあるのが付加価値になります」と大岩さん。

「多いのは、有名店で修行を積み、ご自身の地元で独立するケースですね。地元を愛し、馴染みのある場所にお店を構え、ご近所の方にもふらっときてほしいという想いでやられている。とは言え、その姿勢は一流。生半可な気持ちで経営されてはいないので、銀座などで提供される３、４万円のコースをうちだったら２万円で出しますよ、という気概が感じられるのが特長です」

地元以外では、落ち着ける風情を求めて、神楽坂などで開業されるケースも。どんな環境で、誰を相手に寿司を握るのか。明快なコンセプトに導かれた、コストパフォーマンスの高い極上の寿司を味わえるのが、最大の魅力です。

・「立ち食い」で好きな寿司のみを堪能する

気軽にさくっと上質なお寿司を食べたい。そんな願望を叶えてくれるのが、高級路線の立ち食い寿司です。

寿司といえば、これまで高級寿司と手頃な価格の回転寿司の二極化が顕著で、中間層が少ないとも言えました。それが、図らずもコロナ禍を契機に、高級寿司店が新業態としての「立ち食い寿司」を相次いでオープン。その手軽さや、高品質ながら比較的安価で寿司を堪能できるスタイルが新たなトレンドとなっているようです。

「もともと夜のお任せコースを楽しむ人の中には、一品料理のつまみはほどほどでいいから好きなお寿司を好きなだけ食べたい、という人もいます。そのニーズを察知した高級寿司店のオーナーが、コロナ禍を追い風に経済的課題解決と手軽さを追求して具現化に踏み切ったと言えますね。コースであれば夜の営業時間で2回転の営業が限界のところ、立ち食いであれば５回転は可能。お店としてはその分価格を抑えられることになり、お客さんは美味しいネタのお寿司を手早くリーズナブルに食すことができる。まさにwin-winの関係ですね。

もちろんネタは高品質なので、一貫の価格は概ね400〜500円台から。短時間で上質なネタを好きなだけ食べて、大体7,000〜8,000円程度です。先程のランチと同価格帯にはなりますが、『短時間で上質なお寿司を食べられる』のが大きな違いであり、メリットです」

高いコストパフォーマンスを叶える３つの方法。何を優先するかにより選ぶお店が変わるため、自分なりの優先事項をリストアップしておくと、それぞれのお店を訪れた満足度も飛躍的に向上しそうです。

ちなみに大岩さんによると、昨今食の業界では「地方に食べに行く方法」も新たな選択肢として浮上しているのだとか。

「旅行やワーケーションを兼ねて遠方に赴きお寿司を食べて帰ってきても、東京の一流店に行くのとコスト的にさほど変わらない、むしろ安くなる場合もあるという現象が起きています。食事以外のプラスアルファの体験まで含めると、かなり充実していますよね。老舗や隠れた名店だけでなく、現在は大将が地方に移住して開業するケースもあり、選択肢も増えています。地方活性化の一助になるという点でも、今後ますます可能性が広がる分野だと期待しています」

ここでは、大岩さんが主に夜のコースとランチの差額に着目し、プロフェッショナルの視点で厳選した東京の高級寿司店6店舗を紹介。店内の雰囲気や使い勝手なども参考に、ぜひ足を運んでみてください。

・鮨十（すしとう）

「以前に母親と訪れた思い出深いお店です。夜のコースは22,000円～ですが、ランチは12,100円～と手頃。米は職人自ら生産地・熊本まで足を運び、収穫まで携わったオリジナル米を使用していて、シャリはネタによって赤酢と米酢を使い分けるこだわりよう。大切な人を招待しやすいプライベートサロンのような店内で、比較的予約が取りやすいのも魅力です」

・鮨 銀座おのでら

「世界統括料理長の坂上氏は、札幌の名店『すし善』さんで10年間研鑽を積んだ経験を持ち、仕入れの一部は故郷・北海道の仲買人からも魚介を厳選しています。夜のコースは27,500円～と高級ですが、ランチは何と5,500円～。ランチはディナーとは異なり、握りと他一品の提供ですが、夜との価格差が大きく、コストパフォーマンスを重視するユーザーには特に魅力的。ランチ利用は非常にお得感があると思います」

・銀座 鮨 かねさか 本店

「銀座の代表的な名店のうちの一軒と言われ、現在は世界的なグルメガイドで二つ星を獲得。夜のコースは60,500円～と超高級、ランチも30,250円～と高価格帯ですが、誰もが一度は訪れたい銀座の名店の味ですが、お昼なら背伸びをして手が届く価格に設定されているのは魅力的です。江戸時代の茶室をイメージした店内、葛飾北斎らが描いた富士山画、そして北大路魯山人作の器などを通して極上のひとときを味わえます。ランチ営業をやっているのを知らなかったという方も多いと思いますね。姉妹店の『青山 鮨かねさか』ではランチ4,235円～と、よりリーズナブルに楽しめます。」

・鮨崚（すしりょう）

「銀座の『鮨崚』さんは夜のコースが15,000円～で、銀座では比較的手頃な価格帯。同店の最たる特長は、火〜日曜のランチタイムに、二番手の職人さんがお任せコースを担当していることです。独立を視野に入れたお弟子さんがいらっしゃる時期のみですが、大将の指導のもと、二番手さんが握ることで原価を抑え、8,500円～と価格を抑えたランチを実現。将来独立する職人さんを、早い段階から知ることができるのもこのお店ならではの魅力です」

・鮨 一條

「日本橋近辺に位置する『鮨 一條』さんは、2023年に世界的なグルメガイドで一つ星を獲得。夜のコースは27,500円～で、ランチは13,750円～と、夜の半額で提供されています。開業の地に選んだのは、創業100年を超える江戸前寿司の名店『都寿司』さんがかつてあった場所。大将である一條氏が小学校の頃から家族でよく通い、寿司職人を志すきっかけになったお店跡という、ゆかりのある場所です。大将は器への造詣も深く、人間国宝から現代作家の作品まで、自らが見立てたこだわりの器も必見です」

・鮨 和さび

「中心地から少し離れた新宿区四谷で営業する『和さび』さんは、高品質なネタと技術を持ちながら、ランチ・夜共にお任せコースを19,800円～で提供。この価格は、感覚的には銀座の同レベルのコースの半額以下。また、夜と同じ内容を昼にも楽しめるスタイルは希少性があり、デイタイムを有意義に過ごしたい方や海外の旅行者からも人気です。大将の軽快なトークと気取らずに寛げる空間が、仲間同士のカジュアルな会食をさりげなくサポートしてくれます」