時代とともに変わる、農業のあり方を模索
谷口浩一氏が経営するvegetaは、広島県内の庄原市や三次市、安芸高田市、福山市、尾道市の合計5市に総面積約130ヘクタールの農地を有する大規模農業の会社だ。標高差を利用し年間を通して出荷しているキャベツのほか、大根、青ネギ、トマト、さらに麦やトウモロコシ、飼料作物も栽培している。
その広大な農地は、一般にイメージされる日本の農業とは異なるように見える。自動収穫機をはじめ大きな農機がいくつも導入され、ドローンが上空から農薬を散布する。手作業で農作業をする人の姿は見当たらない。最近注目されている「スマート農業」の具体例として、日本の農業の将来性を感じさせる力強さがここにはある。
同社代表取締役社長の谷口氏は現在57歳。地元広島の兼業農家に育ち、高校を卒業して農業関係の短大に進んだ後、20歳で就農した。
「同級生は県庁や市役所に就職したり、実家の農業を継いだりする人が多く、私のように自分で農業を始める人はほとんどいませんでした。なぜ一人で農業を始めたかといえば、社長になりたかったから(笑)。そのいちばんの近道が農業だと考えたんです」
株式会社vegeta代表取締役社長 谷口浩一氏
1986年に「谷口農園」の代表として、ホウレンソウの雨よけ栽培と原木シイタケの栽培からスタートした。しかし、数年後には中国産のシイタケ輸入が増大したため、ホウレンソウのハウス栽培に切り替えた。94年には有限会社を設立し、年間を通して収入を見込める葉物野菜の栽培に転換。
「農業もつねに、時代とともにニーズが変わります。90年代後半はガーデニングブームに乗って花壇苗の生産に着手しましたが、数年後に撤退。次のブームはベビーリーフでしたが、こちらも競争相手が増えると事業は縮小せざるをえませんでした」
谷口氏がそんなチャレンジを続ける一方で、地域では農業者の高齢化に伴い耕作放棄地が増加。その有効活用や、次世代を担う農業者の育成が問われるようになる。やがて農業に対して投資を積極的に行う、いわゆるファンド型投資が本格化したが、有限会社が資金調達するのは限界もあった。そこで谷口氏は2015年に有限会社を「株式会社vegeta」に衣替えし、資金調達をしていくようになる。
「農業では高齢化や人手不足がよく課題に挙がりますが、株式会社ならスタッフの雇用を守ることができると考えたんです」
つねに新しいチャレンジを欠かさない谷口氏は、目の前に課題があれば解決するために人に話を聞き、情報を集めて分析し、自分の仕事の中で何ができるのか追求していく。翌16年には、広島県のキャベツ推進事業を受け、15ヘクタールの土地でキャベツ栽培に着手した。
ご存じのように広島はお好み焼きが名物だが、実はキャベツの生産量は少なく、全国の収穫量のうち約0.7%しか生産できていない※。そこで県が主導してキャベツ生産の推進を図ることに。さらに21年には大手食品メーカーとコラボレーションし、加工用トマトの栽培もスタートした。こうして農地が年々拡大していく一方、人員の確保や作業時間の短縮が課題となっていった。
※出典:「作物統計調査 / 作況調査(野菜) 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」より都道府県別10アール当たりの収穫量を基に推計
ドローンでキャベツの収穫量を自動予測する技術も
しかし、こうした課題こそがデジタルツールを活用した「スマート農業」への入り口となっていく。作業効率化のため2018年にはドローンを導入。同時に新会社を設立し、ドローンスクールの運営と農作業現場へのドローン普及に携わっている。さらに19年からは農林水産省の「スマート農業実証プロジェクト」の下、2年間の実証農場となった。
「ドローンは農薬散布だけでなく、農場の見回りや生育確認も行います。現在ではドローンで撮影した画像から葉の枚数や重さをデータとして収集し、収穫量を自動予測する技術の研究にも取り組んでいます。また二次元コードを用いた育苗管理システムも活用しています。苗を育てる育苗箱に1つずつ二次元コードを配布し、栽培記録を管理。二次元コードを読み取れば、種をまいた日付などを確認できるうえ、畑に植え替える時期も把握でき、家にいながら作業の計画を立てられます」
現在、同社の社員は35名。この少人数で130ヘクタール以上の広大な農地を管理できるのも「スマート農業」を実践しているからだ。なお、収穫には全自動収穫機を導入し、作業を効率化。また、キャベツの裏作として栽培しているもち麦の収穫に使うコンバインには、農地ごとの収穫量を自動記録できる。収穫しながら収穫量と土の水分量を測定することで、その年の生産状況や土の状態をリアルタイムで把握できるという。
「当社には現場で作業をするスタッフ以外に、畑と離れた場所からテレワークで対応しているデータ分析専門のオペレーターがいて、データを基に現場にいるメンバーと相談して、次の作業を判断しています。さらに、畑での作業記録はすべてスマートフォンで管理しています。農業も、全員が現場にいる必要はないと思うんです。当社では、それぞれのスタッフが最大限に能力を発揮できるよう、テレワークも選択肢に入れた働きやすい環境を整えています」
農業には無限の可能性がある
谷口氏はゲームチェンジャーとして、農業の未来をどう考えているのか。
「農業には今、大きなビジネスチャンスが生まれています。新しいツールをどんどん取り入れて、効率的に生産し、安心・安全な生産物を全国に届けていく。そのためにも、経営を進化させていく必要があります」
その一環として谷口氏は今年、アメックスのビジネス・カードを導入した。
「限りある人員でやっているので、今後はビジネス・カードの力を借りて、事務作業をもっと効率化していきたい。農業というと、ビジネス・カードとは遠い業界に思えるかもしれませんが、仕事のやり方を変えるツールの1つとして導入に踏み切りました」
なぜ数あるビジネス・カードの中で、アメックスを選んだのだろうか。
「何といっても知名度と信頼性があります。スマート農業へ移行する中で、さまざまな会社と取引するようになりました。ほかの業界の経営者もアメックスを使っている人が多く、『経営者として持っておきたい』と感じさせる風格があるところにも引かれましたね。実務面でいうと、普段取引のある一部の農機具会社がアメックスのビジネス・カードの加盟店になっていたこともあり、簡単に仕入れの決済処理ができるようになると考えました」
実は谷口氏のビジネス・カードは、まだ手元に届いたばかり。今は新しいツールを手にしたことで、どんな活用ができるのか考えを巡らせるのが楽しくて仕方ないという。
「例えば、農機具会社との決済や税金など公的資金の支払いは、ビジネス・カードに集約していきたいですね。そのために必要なカードの支払い限度額の上限もアメックスなら一律で設定がなく※、柔軟に対応できるところも助かります。メリットとして大きいのは、やはりポイント還元です。さらに還元されたポイントは、スタッフの研修のための交通費などに積極的に活用していきたいと思っています」
※ご利用限度額は、カード利用実績、支払実績によって決まります。ご希望に沿えない場合もございます。
農産物は種をまいてから、収穫し現金が入るまで長い時間がかかるため、谷口氏のケースでは資材購入費など大きなコストを先行して支払わなければならないことも多いという。しかし、ビジネス・カードで決済すれば、現金を扱う手間が省けるうえ、資金運用にも余裕が生まれる。こうした大小のメリットが、結果的に経営システムの効率化につながっていくのだ。
経営者としての意欲がみなぎる谷口氏。2年前からは一人息子が共に働いており、息子にも従業員用の追加カードを発行してもらう予定だ。
「息子も、農業の将来に希望を見いだしたからこそ、就農してくれたのでしょう。昔は農家の息子であることは自慢できないことがありましたが、今は違う。農業には無限の可能性があります。今後も地域の方々と連携しながら、息子と一緒に日本の農業に新たな農業経営の形を提案できるように努力していきたいと思っています」
■プロフィール
谷口浩一 氏
株式会社vegeta 代表取締役社長
総面積約130ヘクタールの広大なほ場で、キャベツとトマトを中心に営農。加えてスマート農業の実証プロジェクトに参加するなど、新しい挑戦を続けている。
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