父の会社が倒産寸前に…別業界からの転身を決意
京都市伏見区で空調衛生設備の設計・施工や配管・ポンプユニットなどの生産を行うホーセック。多くの企業が集積する工業団地の一画に位置し、従業員数は40名ほど。各セクションの技術者たちがフレキシブルに対応しながら生産能力を高め、顧客への高品質での短納期対応を実現させている。1981年の創業以来、関西の建設業界を中心に高い信頼関係を築き上げてきた京都の地場企業だ。
「長年の経験で培われてきた技術の伝承と、進歩し続ける最新技術の導入と習得により、双方の強みを生かせる人づくり、組織づくりを大切にしています」
そう語るホーセック社長の毛利正幸氏は、現在45歳。創業者である父の跡を継いだ2代目経営者だ。しかし、その事業承継はすべてがスムーズに進んだわけではない。次男である毛利氏は、もともと同社を継ぐ意識は薄く、大学卒業後はまったく別の業界に就職した。
株式会社TRECON/ホーセック株式会社 代表取締役社長 毛利正幸氏
「大学では経営学を勉強しましたが、建設業には興味が湧かず。とにかく自分のやりたいことをやろうとイベント会社に就職。ラジオやテレビ、ファッション関連のイベントや展示会などの企画運営に関わっていました。家業に戻るという選択肢は、まったく考えていませんでした」
そんな毛利氏が入社3年目だった2003年、家業に戻ることになる。どんなきっかけがあったのだろうか。
「ちょうど、今後のキャリアをどうしようかと悩んでいたとき、父の会社が倒産寸前で、実家が抵当に入っていることを耳にしたんです。ならば家族である僕が父を助けるしかないと思い、父には会社の内情を知っていることはおくびにも出さず、父の会社で働かせてもらえるようお願いしたんです」
イベント運営という華やかな世界から家業へ戻ったとき、天国から地獄へ来てしまったと感じた。仕事の進め方が非合理的で、矛盾だらけだったからだ。最盛期は年商約25億円、従業員数も100名に達していたホーセックだが、入社当時に従業員は30名まで減少し、すべて業務が回っていない状況。改善を持ちかけても、誰も聞いてくれない。そんな暗澹(あんたん)たる状況の中で、毛利氏は5年間ほぼ無休で、寝る間も惜しんでとにかく必死に仕事をしていった。
「まずは全従業員がどんな仕事を抱えていて、何に困っているのか。自分の目で見て、現状を把握するよう努めました。私は社長の息子でありながら、建設のことを何も知らない素人でしたから、当然ヒラ社員から始め、手取り12万円の給料で5年間働きました。とにかく、自分の家族が迷惑をかけてしまっている従業員を守りたいという一心でした」
下請け業者のためのWebシステム「建設タウン」
そうした努力が功を奏し、毛利氏は徐々に会社の状況を改善していった。そして入社から10年目、2013年に父から会社を引き継ぐことになる。しかし課題は根深かった。ただでさえ業界全体として人材不足、労働人口の高齢化が進む中、濃厚な人間関係が重視され、現場の管理は非常に甘い。そのうえ、コミュニケーションは紙などアナログがベースで、作業の無駄が多い。当然、ミスもトラブルも絶えなかった。ホーセックに限らず、これは建設業界特有の課題だった。
建設業界全体で直面している課題
調査でも人材不足や高齢化は多くの建設企業で顕在化。こうした企業では専門のバックオフィス部門や担当を置いていない場合も多く、建設業界においては月間平均で約107時間も経理業務に関わる時間を割いていることが明らかになっている。「2023年カード利用状況報告」 (アメリカン・エキスプレス社向けに株式会社マクロミルが作成)による
こうした課題にデジタルで対処しようと、毛利氏は本格的な業務改善に動き出した。
その中心となったのが、2017年に毛利氏が設立したIT企業・TRECON(大阪市)だ。同社が提供するのは、建設業務に関する情報を一括管理できるWebシステム「建設タウン」と、全国の建設現場や専門業者の情報がわかるシステム「Gembastation(現場ステーション)」。事業に関する情報登録から、作業員の管理、受注、請求、入金、出退勤まで一括管理したり、実際に現場まで足を運ばずとも、現場の状況を一目で確認したりできる環境を整えた。導入企業からは「まさにこの下請け目線で作られた一元管理できるツールを探していた」という反応が多い。今後は各専門職種の業界団体にも働きかけ、拡大していく方針だ。
「いちばんの特徴は、いずれも下請け業者のためのシステムであることです。世の中には無数のツールがありますが、その多くは元請け向け。たくさんの元請けから受注する下請け業者は、それぞれのシステムに合わせる必要があり、業務が非常に複雑になってしまいます。かといって、大がかりなIT投資はかなりのコストがかかるため踏み出せない。そんな下請け業者のDXを支援したいと考えています」
経営管理に欠かせない、アメックスのビジネス・カード
実は今、建設業界では毛利氏と同世代の若手経営者を中心に、デジタル化による業務改革が進みつつある。まさに“ゲームチェンジ”が実現しようとしているのだ。アメックスのビジネス・カードは、一般的にカードに設定される一律の限度額※1が設定されていない。経費処理のような日々の業務から、意外なところでは建設資材や機材購入などの高額出費まで決済対応ができる。だからこそ経営のDXを進めるうえで、欠かせない経営管理ツールとなっているのだ。
※1 ご利用限度額は、カード利用実績、支払実績によって決まります。ご希望に沿えない場合もございます
毛利氏自身も、2020年からアメックスのビジネス・プラチナ・カードを導入している。複数の選択肢がある中で、なぜアメックスを選んだのか。
「建設資材などの業界関連の加盟店が多く利便性が高いことに加え、何よりもブランドの信頼性が高いからです。そのアメックスのビジネス・カードを持つということは企業として与信力が高いということであり、信用・モチベーションにもつながっていく気がします。プラチナ・セクレタリー・サービス※2という出張手配や会食の会場手配はもちろん、細かな困り事も24時間気軽に相談できるサポートは自分の秘書が1人できたようで頼もしいです」
※2 アメリカン・エキスプレス®・ビジネス・プラチナ・カード会員様のみのサービス
ビジネス・カード支払い利用のメリット
利用者は振込手数料、ポイントといった支払い時に発生するメリットのほか、業務の「効率化」や「与信確認」に関する利便性も実感している。 「2023年カード利用状況報告」 (アメリカン・エキスプレス社向けに株式会社マクロミルが作成)による
毛利氏は今、経費精算のほか、与信管理の延長として資材購入においてもアメックスのビジネス・カードを利用している。使えば使うほどポイントが貯まっていくのも大きなメリットだ。今後さらなるDXの本格化を見据え、幹部社員にもビジネス・カードの追加カード※3を導入していく意向だという。
※3 基本カードのアカウントにひも付けされる、従業員用のカード。基本カード会員がいつでも追加カードごとの利用状況を把握・利用限度額の設定も可能
「決済履歴を自動的に経費として分類する会計ソフトと連動させているので、社員にも導入すればより効率的な経営管理が可能になると思います。経営のDXが進めば、当然ながらビジネス・カードが必要になる。あまり難しく考えずに例えば接待交際費のようなわかりやすいものから使い始めれば、だんだんとその経費決済ツールとしての便利さに気づき、用途も広がっていくと思います」
多くの企業が経営管理を効率化するために、そしてDXを実現するために、ビジネス・カードは有効なツールとして期待が高まっていくだろう。
■プロフィール
毛利正幸
株式会社TRECON/ホーセック株式会社
代表取締役社長
イベント会社にて、ディレクター・プロデューサー業務に2年従事。父親が経営する建設会社ホーセックの経営危機を知り、同社に転職。営業、設計、会計、生産管理までの業務を約10年経験した後、代表取締役に就任。
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