仲間とお酒を飲みながら楽しむ時間は、かけがえのない大切な瞬間だ。一方で昨今、「若者のお酒離れ」という言葉を耳にする機会が増えた。国税庁が発表している「酒レポート 平成31年度3月 ※外部リンクに移動します」(出典:国税庁ホームページ)によると、20代の男女が週に3回以上飲酒する割合は、それぞれ、全体平均の3分の1程度だという。ただし、「若者=まったくお酒を飲まない」というわけではないようだ。お酒は若者のなかで適度にほどよく楽しむものとなりつつあり、それと同時に「ノンアルコールドリンク」も注目を集めている。
ノンアルコール飲料市場の推移は年々上昇傾向で、大手飲料メーカーはノンアルコールドリンクのラインナップに力を注いでいる。さらに近年では、「Bar Straw ※外部リンクに移動します」や「0% ※外部リンクに移動します」など、ノンアルコールドリンクを専門的に扱うバーも現れた。
そこで今回は、Z世代の若者を中心に多くの人に支持されているウェブマガジン「NEUT Magazine ※外部リンクに移動します」の編集長であり、経営者でもある平山潤が、自身の友人であり、日常的にノンアルコールドリンクを楽しんでいるChirikoさん(23歳)に、Z世代のノンアル事情についてインタビュー。代々木上原にあるクリエイティブスペース&カフェバー「No. ※外部リンクに移動します」で、4種類のモクテル(ノンアルコールカクテルを示す造語)を飲みながら、じっくりと話を聞いてみた。
「若者のお酒離れ」は本当? Z世代にインタビュー
こんにちは。NEUT MEDIA代表 / NEUT Magazine編集長の平山潤です。「Business Class」での新しい連載がはじまりました。前回のシリーズでは、NEUTを運営し、SNSや、取材対象者や読者コミュニティーとのふれあいをとおして気づいたミレニアルズ、Z世代の特徴などについて書きました。今回の連載は、マーケティングのなかでいわれている、若者の「〇〇離れ」のウソホントや、若者の新しいお金の使い方に注目。毎回ゲストを招き、インタビューしながら若者の実情を探っていきます。
第一回は、「若者のお酒離れ」が囁かれるなかで、新しい選択肢として普及しているノンアルコールドリンクやモクテルを好んで飲んでいる方に取材し、新しいお酒に対する価値観やお金の使い方を探りました。
コロナウイルスによる自粛期間をきっかけに「ノンアル」に目覚めた
平山:自己紹介をお願いします。
Chiriko:Chiriko(23)です。ファッションPRと、ガールズパーティークルー「11PM」で、イベントオーガナイザーをしています。「11PM」では、「11時に終わるヘルシーなパーティー」をコンセプトにイベント主催をしたり、グッズ販売を行なっています。趣味は料理です。
左からChirikoさん、平山潤。取材はクリエイティブスペース&カフェバー「No.」にて行なった
平山:いまの若い人は昔に比べてお酒を飲まなくなっているといわれているけれど、Chirikoさんはお酒好きなほうですか?
Chiriko:私自身はお酒が好きですし、まわりにもお酒を飲む人が多いですね。アルコールが好きでお酒を飲むというよりは、お酒のおいしさを重視していますね。ノンアルコールドリンクも好きでたまに飲みます。
平山:「ノンアルコールドリンク」はまだまだニッチなジャンルですが、なにをきっかけに飲み始めましたか?
Chiriko:私たち「11PM」主催のパーティーには大学生など、まだ20歳になってない友人や知り合いも遊びに来てくれるので、ノンアルコールドリンクのことを考えはじめました。ノンアルだけど、映画でのパーティーシーンなどで欠かせないカクテルの可愛さみたいなものは自分たちのパーティーで大事な部分だったので取り入れるようになり、飲むようになりました。
あと約二年前に、新型コロナウイルスが流行して外でお酒が飲めなくなったことと、ワイン好きの母が禁酒を始めたことがきっかけです。ノンアルコールドリンクといっても、いろいろな種類があって、それぞれにこだわりがあるんです。一度、母と一緒に群馬県の「白井屋ホテル」にノンアルコールのペアリングコースを体験しに行きました。そのとき、コースで出てくる一品ずつの料理に対して完璧にマッチングされたカクテルに感動して、さらにノンアルコールドリンクの世界にのめり込むようになりました。
もともと、食事に合わせて甘いカクテルやナチュラルワインを飲むことが多かったんですけど、アルコールが入っているせいで体調を崩したり、次の日に響いてしまったりすることに悩んでいたんです。お酒を飲む機会が減って、健康的においしく飲めるノンアルコールドリンクの存在を知ったことで、「これが自分にいちばん合うんじゃないか」と、積極的に選ぶようになりました。
平山:どんなときにノンアルコールドリンクを飲みますか?
Chiriko:落ち着きたいときは、「/shrb(シュラブ)」というブランドのノンアルコールドリンクを飲んでいます。ビネガーベースにハーブやスパイスなどの自然由来の材料を使っている甘みのあるドリンクで、とてもリラックスできるんです。
あとは、おいしいレストランを予約したとき、ノンアルコールドリンクがあったら頼んだりします。そのお店だけのこだわりを知れるような気がしますね。あとはノンアルコールだから、昼間からとか、仕事の合間にも気にせず飲めるのもいいですよね。
平山:お酒とノンアルコールドリンクをスイッチしながら飲むのもいいですよね。「親子で一緒に」とか「高校生がちょっと背伸びして」とか、ノンアルコールの楽しみ方ってまだまだありそう。
大量生産・大量消費ではない「こだわりの品質」が特別感を生む
平山:ノンアルコールドリンクをバーやレストランで飲むと、一杯1,000円以上しますよね。安いお酒を何杯か飲むことができる値段だと思いますが、わざわざノンアルコールドリンクにお金を払う理由は?
Chiriko:いちばんは、気分が上がるから。安いお酒より断然楽しめる要素が多いんですよね。見た目、香り、味、全部いっぺんに楽しめる特別感があるんです。
平山:日常をアップデートすることができるアイテムとして楽しんでいるんですね。安くて手軽に飲めるようになったらいいと思いますか?
Chiriko:それは難しい……(笑)。前に手軽な値段で買えるノンアルコールビールを試してみたことがあるんですけど、私は普通のビールのほうがいいなと思ったんですよね。ノンアルコールドリンクも価格が下がればクオリティーも絶対に下がっちゃうと思うし、缶から直接飲むのも気分があがらないんじゃないかな。やっぱり満足感のあるものって、価格が高いのかも。でも、お店と変わらない品質のものを家でも楽しめるようになるのであれば、すごく嬉しいです。
平山:ノンアルコールドリンクのいちばんの魅力は?
Chiriko:大量生産・大量消費されるようなメインカルチャーではないからこそ、こだわってつくられているものが多いこと。使われている素材や、それができるまでの背景はもちろん、パッケージやラベルまで可愛い。一つひとつ丁寧につくられていることを実感できるのが、ノンアルコールドリンクの魅力だし、そこにみんな価値を感じているんだと思います。
平山:いろいろな角度から楽しむことができるんですね。Chirikoさんのまわりの同世代は、ノンアルコールドリンクを飲んでますか?
Chiriko:まわりの流行りに対して感度の良い友達は飲んでいる印象です。でもノンアルコールドリンクについては、お母さんがいちばん詳しいです(笑)。ナチュラルワインが好きな人は、同世代でもいるかな。
平山:ナチュラルワインも、パッケージが可愛かったりしますよね。
Chiriko:ナチュラルワインが好きな人は、ノンアルコールドリンクも好きなイメージがあります。どちらも、食や健康への意識が高い人が好む飲み物ですよね。
私の場合、食事に合わせてもおいしく飲めて、甘さもほしいんですよ。ノンアルコールドリンクは普通のジュースと違って、料理とのマッチングを考慮していろいろな材料を調合するので、味に奥深さがあるんです。それから、いま飲んでいるノンアルカクテル「TOP OF MOCK」に入っている青唐辛子みたいに、普段はあまり口にしないような材料が入っているところも楽しみの一つです。ジュースとも手軽に飲めるお酒とも、まったく違う特別感があるんですよね。
平山:総合的に楽しめる「新しい価値」として飲んでるということですね。
唐辛子が入ったノンアルカクテル「TOP OF MOCK」
まとめ:ノンアルコールドリンクの価値は「未知の味」
ノンアルコールドリンクの価値は、単なるお酒の代わりというだけではない。
Chirikoさんは、自身の体やライフスタイルに合わせてノンアルコールドリンクを選択し、「こだわり抜かれた総合演出」から生まれる「未知の体験」を楽しんでいた。手軽さではなく、質の良いものを日常に取り入れることが彼女の心地良いライフスタイルにつながっている。
ノンアルコールドリンクは、食や健康に関心が強い人、新しいものが好きな人、安さより高い品質を追求するモノに惹かれる人などを中心に親しまれている。アルコールが入っていないからこそ、無限のシチュエーションで、より幅広い層が「未知の味」をさまざまな角度から体験できる。想像以上の新鮮さを味わえる飲み物だから、ノンアルコールドリンクが感度の高い若者のあいだで注目されているのではないだろうか。
■プロフィール
平山 潤
1992年神奈川県相模原市生まれ。成蹊大学卒。ウェブメディア「Be inspired!」編集長を経て、現在は「NEUT Magazine」創刊編集長を務める。同メディアでは、「既存の価値観に縛られずに生きるための選択肢」をコンセプトに、先入観に縛られない視点を届けられるよう活動中。
NEUT Magazine ※外部リンクに移動します
Chiriko
2000年生まれ。大学時代、クラブにもっと気軽に足を運んでもらうことをミッションとするガールズパーティークルー「11PM」を友人と結成。現在は、ファッションのPR会社に勤めながら、「11PM」での活動を続けている。
■スタッフクレジット
文:Nao 撮影:日比楽那 編集:平山潤、服部桃子(株式会社CINRA)
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