SNSの登場で、経営者の「思い」や「考え方」をカジュアルに発信できるようになった昨今。ビジネスオーナー自ら発信し、「共感」を集めることで自社のファンを増やすことも、珍しいことではなくなりました。コミュニケーションの方法が多様化され、変化を続けているいま、「届ける」ことの意味、方法、トーンや目線といったことだけでなく「受け取る」側の印象、捉え方についても重視し、届けたい声やメッセージがちゃんと伝えられるようにするためのアップデートは不可欠と言っていいでしょう。
平山潤氏が編集長を務めるウェブマガジン「NEUT Magazine」 は、Z世代の若者を中心に多くの人に支持されています。同メディアではオフラインイベントも開催しているとのこと。それは「コンテンツを生み出すうえでオフラインの交流は不可欠」なものだからと平山氏は言います。今回はその意図を綴っていただきました。
読者を巻き込むことが、新たなコンテンツづくりにつながる
NEUT Magazineは、ジェンダー・セクシュアリティー・人種・セックス・環境問題・メンタルヘルスなど、世間で「エクストリーム」だと思われるようなトピック、人について取り上げています。人のストーリーや考えを扱っているメディアであるため、直接人と会うことはコンテンツをつくるうえで欠かせません。
また、NEUT Magazineの特徴はつくり手と読者に垣根がないことです。実際に読者がインタビューを受けることや、コラボレーターとして一緒に仕事をすることもよくあります。読者を巻き込んで一緒につくりあげるメディアだからこそ、その人たちが何に興味を持ち、普段どのようなものに触れているのか、直接会って知ることでコンテンツづくりの参考にしています。
NEUT編集長・平山潤氏
オンラインメディアとして「リアルな場」を提供する
創刊1周年の際は、アニバーサリーイベント『NEUT BOWL』を笹塚にあるボーリング場・笹塚ボウルで開催しました。笹塚には商店街があり昔ながらの懐かしさを感じされられると同時に、最近ではおしゃれなカフェも展開され都会の要素もある多様な街です。クラブでイベントを行うとなると、人によって音楽の好みがわかれたり、ハードルが高く感じてしまう人もいるかもしれません。ですが、ボーリング場はゲームセンター感覚で気軽に行けますし、昔と現代ならではの要素が絶妙に交わった笹塚ボウルというクールな空間も同時に楽しめる。だからこそ笹塚ボウルという場所を選び、読者やコラボレーター、取材対象者など、さまざまなコミュニティーの人が一同に集まり交流できるイベントを立ち上げたのです。
ほかには、なるべく誰でも参加できるような場づくりを心がけ、未成年の読者に向けてノンアルコールのカクテルを提供したり、ボーリングができない人でも楽しめるトークショーやポップアップを開いたりしました。また、馴染みのある渋谷から少し離れた笹塚でイベントを開催することで、NEUT Magazineを本当に好きだと思ってくれる人がこのイベントを目的に来てくれて、そこで会話ができると思っています。そういったオフラインでの人との繋がりを大事にすることで、NEUT Magazineの読者と直接知り合うことができますし、コンテンツをつくるうえでの大事なリソースにもなります。
もちろんオンラインで営業活動を行うこともありますが、最近は直接会ったことのある人から仕事を依頼していただくことも増えました。それは、相手が僕のことを知ったうえで、信用してくれているからこそだと思っています。例えば、カフェで待ち合わせをするだけでも、余裕をもって来る人もいれば時間ギリギリで走って来る人もいたりと、行動だけでその人の性格がわかることもあります。ですが、オンラインのコミュニケーションとなると、相手が約束の時間直前まで何をしていたか想像できません。ズボンだけパジャマだとか、誰かが話しているあいだにメールを送っていたとしても、画面上ではわかりません。やはり、実際に会ってお話しするほうが、お互いを理解し信頼関係を構築しやすいのだと思います。また、信頼関係があるからこそ、自分の友達を紹介したり、逆に紹介してもらったりと、人との繋がりも広がっていくと考えています。
オフラインとオンライン、それぞれの魅力を活用する
NEUT Magazineはオンラインコンテンツだからこそ、フィジカルなモノをつくることが人との繋がりを強化すると感じています。オンラインコンテンツは実体ではないので、そういったメディアからでたフィジカルなモノを手に取った読者は、珍しいものを所有しているような嬉しさや価値を見出してくれると思っています。例えば、NEUT Magazineの象徴であるイモリのステッカーは、販売はせず、僕に会った人やグッズ、雑誌を買ってくれた人に渡しています。そうすることで、もらった人は喜んでスマホに貼ってくれたり、SNSにあげてくれたりと、エンゲージメントが高まっています。ウェブマガジンは実体として見えないからこそ、フィジカルなモノを共有することで繋がりを可視化させることができるのです。
イモリのステッカー 撮影:WOODDY
逆にフィジカルなモノをまわりに宣伝やシェアしたいときは、発信の手段としてはオンラインが有効でしょう。インターネットが主流となる現代では、多くの人がオンライン上で情報を収集しています。そのため、「何かを知ってもらいたい」ときは、オンラインを活用するようにしています。
インターネットやスマホが発達し、近頃はオンラインに投資するのが主流になってきてはいますが、オンラインだけに依存するのではなく、オフラインでのコミュニケーションを大事にすることを心がけています。そうすることにより、「ヒト」に焦点を置くNEUT Magazineが目指す、「より多くの人にニュートラルな視点を届けること」への第一歩となりますし、結果的にオンラインメディアを成長させる秘訣となっていると感じています。
■プロフィール
平山 潤
1992年神奈川県相模原市生まれ。成蹊大学卒。ウェブメディア「Be inspired!」編集長を経て、現在は「NEUT Magazine」創刊編集長を務める。同メディアでは、「既存の価値観に縛られずに生きるための選択肢」をコンセプトに、先入観に縛られない視点を届けられるよう活動中。
NEUT Magazine ※外部リンクに移動します
■スタッフクレジット
文:平山潤、Honoka Yan 写真提供:NEUT Magazine 編集:服部桃子(株式会社CINRA)
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