SNSの登場で、経営者の「思い」や「考え方」をカジュアルに発信できるようになった昨今。ビジネスオーナー自ら発信し、「共感」を集めることで自社のファンを増やすことも、珍しいことではなくなりました。コミュニケーションの方法が多様化され、変化を続けているいま、「届ける」ことの意味、方法、トーンや目線といったことだけでなく「受け取る」側の印象、捉え方についても重視し、届けたい声やメッセージがちゃんと伝えられるようにするためのアップデートは不可欠と言っていいでしょう。
Z世代の若者を中心に多くの人に支持されているウェブマガジン「NEUT Magazine」の編集長であり、経営者でもある平山潤氏。媒体自体からの発信はもちろんのこと、公式アカウントからも、自身のアカウントからもコミュニケーションをつくり続けています。平山氏が考える現代の「共感」についての見解や、企業として向き合うべき姿勢などを綴っていただきます。
情報を受け取る側も、発信者の一部になった
こんにちは。NEUT MEDIA代表 / NEUT Magazine編集長の平山潤です。ウェブマガジンであるNEUT Magazineは「Make Extreme Neutral(エクストリームをニュートラルに)」をスローガンに、ジェンダー・セクシュアリティ・人種・セックス・環境問題・メンタルヘルスなど、世間で「エクストリーム」だと思われるようなトピック・人について発信し、先入観に縛られない「ニュートラル」な視点を届ける活動をしています。
NEUT Magazineの前進であるBe inspired! Magazineから数えると、6年以上かけてウェブマガジンを成長させてきたなかで、僕は次第にメディア市場に注目するようになりました。ソーシャルメディアの誕生により、誰もが情報を発信できるようになっただけでなく、賛同や好意を示す「いいね」や、コンテンツを周りに共有する「シェア」など、情報を受け取る側も発信の一部となる時代に突入しています。いいねやシェアによって、共感とともに口コミが広がり、商品や記事が自ずと拡散していくのです。メディア市場がどんどん拡大していくいま、「共感」が一つのキーワードとなっていると言えるでしょう。そこで今回は、SNS上での「共感」に対する僕の考えについて、お話します。
NEUT magazine
NEUT編集長・平山潤氏
情報的価値と個人の魅力
SNS上には毎日さまざまな投稿が溢れていますが、いいねが多くつくコンテンツの特徴に、「情報的価値の高さ」があるように思います。例えば僕の場合、個人のInstagramの投稿でエンゲージメントが高いのは、実際に行ってよかったレストランの紹介や自分の対談記事について。それらの投稿にいいね数だけでなくセーブ数(投稿を「保存」した数)が多くつくのは、ユーザー自身があとで「行ってみようかな」「読んでみようかな」と行動に落とし込めるからではないでしょうか。見るだけでなく、情報として吸収し行動に移すきっかけになるような投稿は、比較的いいねがつきやすいような印象です。
ほかには、自分の写真や誕生日の投稿に対してもリアクションを多くもらいます。「いつも応援してるよ」「誕生日おめでとう」といったメッセージがいいねと連動していたり。このように、さまざまな種類の「いいね」が存在するのは興味深いです。共感を得るためには、「個人が魅力的であるか」「情報的な価値が高いか」、そういった点が重要視されているように感じます。
オンラインの共感が、オフラインにも繋がる
しかし、「いいねが多いからいいねする」「フォロワーが多いからフォローする」など、「共感の数そのものが個々の感情を左右する」こともあります。オフラインでも同じように、行列のできたラーメン屋を見ておいしそうと感じたり、周りで話題になったアニメを見てみたりするなど、大勢が評価しているからいいと思うことは少なくないのかもしれません。また、情報が無限にあることで、同時に真偽不明な情報も簡単に見聞きするようになりました。
そのような状況下で、ビジネスオーナーなどの発信者が「質の高い共感」を呼ぶには、どうすれば良いのでしょうか。やはり、「自分の足で、魅力的なものを見つける」ことだと考えます。自分で見つけたからこそ心に残りますし、自分の言葉となり文章にも説得力が出る。個人的な体験を言語化して発信する一次情報は、深い共感度を呼び、「いいリファラーである」と、信頼獲得にも繋がります。
NEUT Magazineでは、編集者がオフラインでいいなと思ったトピックや人をオンラインで紹介することで、ほかで見たことのないような独自性を追求しています。ありがたいことに、ウェブ上に掲載している記事を読んでくれた読者が、メディアを魅力的に感じてくれて、オフラインでのイベントの開催時や紙媒体の雑誌を発行した際にも訪れてくれました。NEUTという「人格」をいいと思ってくれる人が増え、オンライン、オフライン問わず認知されるようになってきたと感じています。
最近ではさまざまな企業がウェブマーケットに進出していますが、プロダクトやサービスそのものに魅力を見出すことも重要視する必要があります。そうでないと、共感は表層的なものとなってしまうので、フォロワーが増えたとしても強い共感や信頼は得られにくいかもしれません。オリジナルな情報やプロダクト、サービスを発信することでフォロワーはその発信者の「人格」に強い魅力を感じるようになり、オフライン上でも足を運んでくれるようになるのです。
■プロフィール
平山 潤
1992年神奈川県相模原市生まれ。成蹊大学卒。ウェブメディア「Be inspired!」編集長を経て、現在は「NEUT Magazine」創刊編集長を務める。同メディアでは、「既存の価値観に縛られずに生きるための選択肢」をコンセプトに、先入観に縛られない視点を届けられるよう活動中。
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■スタッフクレジット
文:平山潤、Honoka Yan 写真提供:平山潤 編集:服部桃子(株式会社CINRA)
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