【目次】
タレントマネジメントとは従業員の能力を管理・活用する人材管理手法
タレントマネジメントが注目される理由
タレントマネジメントの導入手順
タレントマネジメントを導入するメリット
タレントマネジメントのまとめ
タレントマネジメントとは従業員の能力を管理・活用する人材管理手法
「タレントマネジメント」とは、従業員一人ひとりが持つタレント、つまり能力や経験、スキルなどを一元管理し、人材配置や人材育成、人事評価などに活かす人材管理手法を指します。
タレントマネジメントの概念は、1997年にアメリカの大手コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーが掲げた、「war for talent(人材育成競争)」というキーワードに由来しています。これは「企業間の業績の差は、優秀なマネジメント人材を発掘・育成・配置するための施策を実施しているかどうかが影響している」という、マネジメント層の人材育成に対する考え方がベースとなっています。
タレントマネジメントの最大の目的は「企業の経営目標を達成させること」であり、そのためには戦略的な人員配置など、個々の能力を発揮するための人事戦略を実行することが重要です。
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タレントマネジメントが注目される理由
タレントマネジメントが注目されている理由としては、以下の3つが挙げられます。
労働力不足
タレントマネジメントが注目されている理由のひとつが、労働力不足です。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計) (外部サイトに移動します)」によると、日本では少子高齢化が進み、労働の中核的な担い手とされる15~64歳の生産年齢人口が減少の一途をたどる中、人材の確保はますます難しくなっていくでしょう。
慢性的な人手不足と、容易に人員補充ができない環境において企業には、限られた人材を最大限に活用するためにはどうすればいいかを検討する視点が求められます。生産力を維持、向上させるために、どのような育成が必要か、またどのような配置が適切なのかを検討することが重要となります。
働き方改革
政府が働き方改革を主導していることも、タレントマネジメントが注目される理由として挙げられます。労働力不足の解消を目的とする働き方改革により、長時間労働の是正をはじめとする働く環境の整備は、日本のすべての企業にとって喫緊の課題です。そのような課題を解決し、生産性を向上させていくためにも、限られた人的資源を効果的に活かせるよう管理していくことが、企業に求められているといえるでしょう。
人材の流動化
人材の流動化もタレントマネジメントが注目を集める理由のひとつです。終身雇用が事実上崩壊したといわれる日本において、いまや転職することは珍しいことではありません。自身の能力や価値が正当に評価されていないと判断すれば、人材は別の企業に移ってしまいます。人材獲得競争が激しくなっているので、優秀な人材ほど流出してしまう可能性は高くなっているともいえるでしょう。
タレントマネジメントの導入手順
ここからは、タレントマネジメントを導入する際の基本的な5つの手順について説明します。
1. 目的を設定する
まず必要な手順は、タレントマネジメントを行う目的を設定することです。目的が不明確では、タレントマネジメントを行うこと自体が目的になり、成果につながりにくくなります。自社の状況を把握し、必要な人材の基準を作るためにも、最も重要なステップだといえます。目的が明確になることで、どのような人材が必要なのかが見えてくるでしょう。
2. 人材を発掘する
次のステップは、人材の発掘です。属性や仕事内容、これまでの経験やスキル、評価といった人材情報をデータ化し、従業員を特徴ごとに分類して可視化します。求める人材像に合致する従業員がいれば育成し、いなければ外部から新たに人材を採用することになります。ここで、採用と育成のどちらを行うかを決定しましょう。
人材情報の管理はタレントマネジメントのベースとなる重要なプロセスです。必要に応じて、従業員の情報を一括管理できるツールとして、タレントマネジメントシステムの導入も検討するとよいでしょう。
3. 適正に活用する
設定した目的に沿って、集めたデータを活用していきます。設定した目的から外れないよう注意しながら、発掘または採用した人材を適所に配置していきましょう。配置後は人材が能力を発揮できる環境か、モチベーションに問題はないかを確認するなどのフォローが必要です。
4. 部署連携で育成・評価をする
人材を配置した後は、育成しながら同時に評価を行っていきます。従業員の成果や生産性について評価・レビューすると同時に、従業員が抱える課題や業務姿勢の変化なども確認しておくことが大切です。特に、仕事内容に対する希望や将来のキャリアプランといった志向に関わる部分は変化しやすいため、随時キャッチアップするとよいでしょう。
5. PDCAを回す
人材を定着させて継続的な活躍を促すためにも、常に新たな情報を集めて最適化を繰り返すなど、PDCA(「Plan」「Do」「Check」「Action」)サイクルを回して、検証・改善することが重要です。
タレントマネジメントを導入するメリット
タレントマネジメントを導入することでもたらされる、組織、および従業員にさまざまなよい影響、メリットについて詳しく見ていきましょう。
適材適所の人員配置が可能になる
タレントマネジメントを導入することで、適材適所の人員配置が可能になります。各従業員が持つ能力を一元管理し、最適な人材を最適なポジションに配置できれば、最小限の人数で効果を最大化させる人員配置を行うことができます。結果として、業務の効率化や最適化にもつながるでしょう。
従業員のモチベーションアップ
タレントマネジメントによって適材適所の人員配置をし、従業員それぞれが、各自の能力を十分に発揮できる場所で働けるようにすることで、従業員の満足度やモチベーションを上げることが可能です。従業員はそれまで以上に仕事に意欲的に取り組むようになり、生産性も向上するでしょう。加えて、自身の能力やスキル、努力などを評価してくれている企業への感謝と信頼の気持ちが強くなり、愛着や忠誠心を意味する従業員のエンゲージメント向上も見込めます。結果として、優秀な人材の離職を防ぎ、定着率を上げることができるといえます。
仕事の質が向上する
従業員がモチベーションを高く持って働いている組織は、活気に満ち、仕事の質も高くなります。仕事の質の向上も、タレントマネジメントがもたらすメリットのひとつといえます。また、自分の適性やキャリアの志向性に合った仕事をすることで学ぶ意欲が高まり、積極的にスキルアップに励む従業員も増えるでしょう。人材の能力やモチベーションの向上などにより、顧客によりよいサービスや商品を提供でき、顧客満足度の向上にもつながることが期待できます。
リーダーや後継者の育成に有効
タレントマネジメントを導入することは、リーダーや後継者の育成にも有効です。データを基に、資質がある従業員を選抜して育成することによって、企業にとって理想的な人材を継続的に生み出していくことが可能となります。また、求める要件に沿った人材がいるかどうかも把握できるので、人材が不足している場合は、すみやかに外部に向けた採用活動に切り替えることもできるでしょう。
採用や育成コストが軽減する
タレントマネジメントをうまく活用することで、「採用」「育成」という採用部門の二大コストを削減できるようになることもメリットといえるでしょう。タレントマネジメントの運用を最適化することで、内部で優秀な人材が育てることができ、人材の採用や育成にかかるコストを圧縮することが可能です。
また、タレントマネジメントにより従業員のエンゲージメントを向上できれば、自社に優秀な友人・知人を紹介するリファラル採用を考える従業員も増えるので、さらなる採用コストの削減につながる可能性が広がります。
タレントマネジメントのまとめ
ここまで、タレントマネジメントの重要性と導入メリットなどについて解説しました。以下に、その要点をまとめます。
・タレントマネジメントは、従業員の能力や経験を最大限に活用する新しい人材管理手法
・労働力不足や働き方改革、人材の流動化などを背景に、タレントマネジメントの導入が注目されている
・タレントマネジメントの導入により、適材適所の人員配置、モチベーションの維持、仕事の質の向上などのメリットがある
・企業は、タレントマネジメントを適切に活用することで、採用や育成のコストを削減し、組織の持続的な成長を実現できる。
従業員一人ひとりの能力を最大化できるタレントマネジメントの導入は、企業の競争力を高めるための鍵となるかもしれません。企業の持続的な成長のために、タレントマネジメントの導入を検討してはいかがでしょうか。
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