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【目次】
STP分析とは新規事業の立ち上げに有用なフレームワーク
STP分析の要素
STP分析を行うメリット
STP分析の手順
STP分析の注意点
STP分析のまとめ
STP分析とは新規事業の立ち上げに有用なフレームワーク
STP分析は、製品を軸にしたマーケティングから顧客や消費者のニーズに寄り添うマーケティングに移行した1970~1980年代に、近代マーケティングの第一人者であるアメリカの経済学者フィリップ・コトラーが提唱したマーケティングの手法です。
Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つの単語の頭文字を取ったもので、市場戦略を構築し、新規事業の立ち上げに有用なフレームワークを指します。STP分析を行うことによって、顧客のニーズ、競合他社の状況、市場の全体像などが明確になり、自社の強みを活かした効果的なマーケティング戦略の策定へとスムーズに移行することが可能です。
STP分析の要素
STP分析の「STP」を構成するSegmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つの要素はそれぞれ連動しています。詳しく見ていきましょう。
Segmentation(セグメンテーション):市場や顧客をさまざまな指標で分類する
セグメンテーションとは、市場や顧客などを何らかの指標に基づいてセグメント(集団)で分類することを指します。マーケティングでは、ターゲットを特定することが非常に重要です。まずは、ターゲットとして考えられる市場や顧客を属性(年齢、性別、家族構成、居住地、職業など、特有のデータ)や購買行動など、さまざまな指標でセグメンテーションします。
Targeting(ターゲティング):細分化した中からターゲットを定める
ターゲティングとは、セグメンテーションで区分した顧客層や市場から、アプローチするターゲットを絞り込むことです。ターゲットを定めることで、市場に対して一律にサービス提供を行う戦略ではなく、限られた経営資源を有効に活用した、効果的なサービス提供をすることができます。
Positioning(ポジショニング):競合他社との明確な差別化を図り、立ち位置を明確にする
ポジショニングとは、自社の立ち位置を明確にすることです。ターゲティングで定めたターゲットを対象にした際の自社の優位性を見つけ、市場におけるポジションを決定します。自社の強みが発揮されやすいポジションでマーケティング戦略を展開することで、有利にビジネスを進めることができます。
STP分析を行うメリット
企業がSTP分析を行うことにより、どのようなメリットを得ることができるのでしょうか。以下にSTP分析のメリットを紹介します。
顧客のニーズに沿った効率的なビジネスができる
STP分析を行うメリットのひとつは、顧客のニーズに沿ったビジネスが可能になることです。
新しい製品やサービスを展開するうえで、「誰に求められているのか」を把握し、具体的なペルソナを設定することは非常に重要といえます。商品をペルソナに合わせてブラッシュアップする、あるいは自社商品に合ったペルソナに効果的なアプローチをすることで、効率的で無駄のないビジネスモデルを確立できます。
効果的なマーケティング戦略ができる
STP分析によって、効果的なマーケティング戦略ができる点もメリットです。STP分析で自社製品の強みや独自の立ち位置が明確になり、それぞれを活かしたマーケティング戦略が策定できます。また、他社との差別化要因が言語化されるため、組織内で共有しやすくなり、属人的になりがちな営業活動の均一化にも役立つでしょう。
競合との消耗戦を回避できる
STP分析は、自社と競合との違いを踏まえて、自社が確実に勝てるポジションを探すことにもつながります。自社の独自性を発揮できる市場で戦うことで、大手が圧倒的なシェアを取っている市場や、先行する競合が大量にいる市場で、価格勝負などの消耗戦を回避できることもメリットです。
STP分析の手順
STP分析は、一般的に以下の手順に沿って行われます。必ずしも、この手順どおりでなくても問題ありませんが、基本として押さえておきましょう。
1. STP分析を行う目的を明確化する
STP分析の前提として、「なぜ分析するのか」を明確にしましょう。STP分析は市場戦略の構築に役立つと解説しましたが、目的が明確でなければ分析を行うことができません。
主な目的には、ユーザーニーズの把握、他社との差別化、マーケティング戦略の明確化などがあります。
2. 市場や顧客を細分化する(Segmentation)
目的が明確になったら、市場や顧客についてセグメンテーションを行います。
セグメントとしては、年齢・性別・職業などで分類する人口統計的変数や、国・自治体・地域などの地理的変数、価値観や趣味嗜好などの心理的変数、購入頻度や問い合わせ数などの行動変数が代表的です。指標が決まったら、以下の「4R」でセグメントが適切か否かを評価しましょう。4Rとは、その有効性を確認する評価基準です。
<セグメントを評価する4R>
- Rank(優先順位):自社の戦略に沿ってセグメントの優先度を決定しているか
- Realistic(有効規模):対象の市場で、十分な利益を見込めるか
- Reach(到達可能性):適切なプロモーションやセールスを届けることができるか
- Response(測定可能性):プロモーションやセールスの効果を測定できるか
3. ターゲットを定める(Targeting)
セグメンテーションで細分化した市場や顧客の中から、市場の成長度合いや顧客ニーズの有無、競合の数などから複合的に検討し、狙うべきターゲット(市場や顧客など)を決定します。ターゲティングでは、主に以下の3つのタイプが用いられます。
- 差別型マーケティング
差別的マーケティングは、セグメンテーションした複数の市場に向けて、それぞれに合った商品、価格、流通、プロモーションを用意します。差別型マーケティングを行うことで、自社の顧客となりうるあらゆるセグメントに適切な提案をすることが可能です。
差別型マーケティングは細やかな対応によって売り上げの最大化が見込める反面、各市場に合わせたサービス展開をするためコストの上昇は避けにくく、バランスのとり方が重要です。比較的経営資源に余裕があり、規模の大きい企業向けの手法だといえるでしょう。
- 集中型マーケティング
集中型マーケティングは、単一、もしくは少数のセグメントに絞って同じ製品・サービスを提供します。特定の市場に存在する顧客のニーズや好みを深掘りして、ターゲットにとってクオリティの高い製品を提供できるため、限定的な市場でコストを抑えて優位性を確立することが可能です。ただし、ターゲットにある程度の規模がないと売り上げを上げるのが難しくなります。
- 無差別型マーケティング
無差別型マーケティングでは、セグメンテーションした市場にこだわらず、市場を単一のものと捉えて製品・サービスを展開します。年齢や性別が変わっても、同じ商品を欲しがる人が多い場合に効果的です。
すべての市場に同じ製品で同じアプローチをするため、コストを抑えられるのがメリットですが、細かなニーズには応えられません。また、あくまでも市場の平均的なニーズを捉えた戦略のため、顧客のニーズが多様化する現代にはマッチしないこともあります。
4. 自社の立ち位置を把握する(Positioning)
ターゲティングで決定した市場や顧客を詳しく調べ、ポジショニングによって、他社との比較に基づいて自社がどのような立ち位置につくべきかを検討します。価格、品質、機能、店舗数、販売チャネルなどを軸に分析するポジショニングマップを活用するとスムーズです。
STP分析の注意点
市場戦略の構築に有効なSTP分析ですが、うまく活用していくためには注意点があります。STP分析を行ううえで注意すべき点として、主に以下の3つを紹介します。
STP分析の手順にこだわりすぎない
前項でSTP分析の手順を紹介しましたが、STP分析の手順にこだわりすぎないことが大切です。セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングのプロセスは、それぞれが連動しているため、最初に目的を定めたら、3つのうち取り組みやすいプロセスから分析を開始し、それぞれを横断しながら分析を深めていきましょう。
3つのプロセスを同時並行的に、繰り返し分析することによって、各プロセスの精度を高めることができます。
STP分析だけして満足しない
STP分析は、あくまでも最適な市場を見つけるためのワークフローのひとつです。STP分析をして市場を特定しても、魅力的なプロモーションができなければ売り上げにはつながりません。顧客へのアプローチ方法を決める際には、STP分析だけで満足せず、そのほかのフレームワークも活用しましょう。
また、分析をすること自体に集中しすぎると、顧客の存在を忘れた自社中心の分析になりがちです。STP分析は、自社の新規事業の成功に向けた効果的なマーケティング戦略を導き出すために行いますが、売り手目線になりすぎると顧客に選ばれるプロダクトとのあいだに乖離が生まれてしまいます。
世の中には多くの製品やサービスがあふれ、顧客のニーズは多様化しているため、常に顧客のニーズや行動を俯瞰して、「顧客が何を求めているか」を念頭に置き、さまざまなフレームワークを用いて分析することを心がけましょう。
多角的な視点で検討する
STP分析を行って最適な市場を見つけても、自社の経営資源などを考えると展開が難しいこともあります。こうした場合は、STP分析の結果にこだわりすぎず、多角的な視点を持ち、現実に即して再検討することが大切です。
同様に、STP分析で絞り込んだ市場を「将来性」や「市場の大きさ」といった別の切り口で見ると、実は自社にとって適当ではないこともあります。例えば、先行する競合が多すぎる、市場が極端に小さい、今後先細りの懸念があるといった業界では、STP分析の結果だけを信じて突き進むのはリスクが大きいといえるでしょう。
得られた分析結果は、必ず多角的な視点で見直し、慎重に実現可能性を見極めることが大切です。
STP分析のまとめ
ここまで、新規事業の立ち上げに有用なSTP分析について見てきました。以下に要点をまとめます。
- STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つの単語の頭文字を取ったもので、市場戦略を構築し、新規事業の立ち上げに有用なフレームワーク
- STP分析を行うメリットとしては、顧客のニーズに沿った効率的なビジネスや効果的なマーケティング戦略ができるほか、競合との消耗戦を回避できることが挙げられる
- STP分析だけでなく、多角的な視点でマーケティング戦略を検討することも大切
STP分析によって市場戦略を構築し、具体的なマーケティング戦略の策定が可能になります。STP分析の基本を身につけ、活用してみてください。
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