監修者プロフィール
赤羽 応介(あかはね・おうすけ)
公認会計士
公認会計士として10年以上にわたりコンサルティング業務(IFRS導入支援、BPR支援、J-SOX対応支援、システム導入支援等)、監査業務といった実務に従事。そのほか、専門誌への寄稿やセミナー講師等を経験し、ブログ「公認会計士によるわかりやすい解説シリーズ(外部サイトに移動します)」にて会計、税金、投資、ITに関する情報を発信している。
【目次】
起業とは新たに事業を起こすこと
起業の方法を5つのステップで解説
起業のアイデアの出し方
起業を成功させるためのポイント
起業のまとめ
起業とは新たに事業を起こすこと
起業とは、文字通り新しく事業を起こす際に使われる表現です。新しく事業を始めるという意味では開業と同じ意味合いですが、これまでにない分野の開拓を目指すケースや、新規領域に挑むスタートアップ企業やベンチャー企業などが、新しい事業を未来に立ち上げることに向けて法人を新たに立ち上げるケースなどを指すのが一般的です。法人設立だけでなく、個人事業主、フリーランス、フランチャイズ、M&Aなどの形態もあります。
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起業する方法を5つのステップで解説
起業するためには、さまざまな準備が必要です。5つのステップに分けて解説します。
Step1:アイデアや目的をまとめる
起業の準備の第一歩としてまずは、起業のアイデアを考え、「なにを実現したいか」という目的を明確に定めましょう。「地元を活気づけたい」「女性の社会進出をサポートしたい」「もっと利便性のいい複合サービスを実現したい」など、目的が具体的であるほど準備がしやすく、事業をスタートさせてからも、目的がモチベーションの維持や、適切な経営判断がしやすいでしょう。
起業のアイデアが見つかり、目的も明確になったら、「なにを」「誰に」「どのように」といった視点から事業コンセプトをまとめ、ビジネスとしての実現可能性を検証しましょう。
Step2:起業形態を決める
起業の形態には「個人事業主」「法人設立」「フランチャイズ」「M&A」などさまざまな種類があります。最終的な決定は開業手続きの際になりますが、まずはそれぞれの起業形態を確認し、自身の事業に合う起業形態の目星をつけましょう。以下に、提出が必要な書類や手続きやメリット、デメリットを解説します。
個人事業主
個人事業主として起業する場合は、開業から1ヶ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出する必要があります。メリットは、比較的開業手続きの手間と費用が少ない点と、法人と比較すると税金が少なく済む傾向にある点でといえるでしょう。デメリットは、法人と比較すると社会的信用が低いため、融資を受けづらい場合がある点です。
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法人設立
利益を得ることを目的とする法人を設立する場合、株式発行により外部より資金を集める「株式会社」、出資者と経営者が同じである「合同会社」、有限責任社員と無限責任社員の両方で構成される「合資会社」、全員が無限責任社員である「合名会社」のいずれかで起業します。
法人を設立する際には、定款を作成し、公証人役場、法務局、税務署、年金事務所、労働基準監督署で手続きを行います。ただし、出資形態によって、資本の払い込み等の手順は異なるため、事前に確認が必要です。法人を設立するメリットは、個人事業主とくらべて社会的信頼が高く、資金調達や大企業との契約がしやすい点、デメリットは、個人事業主とくらべて手続きに手間がかかるほか、会計処理が複雑である点だといえるでしょう。
フランチャイズ
フランチャイズとは、知名度が高く、ブランド力のある企業が運営元となり、サービスや商品、経営ノウハウなどを提供してもらうことで、加盟店がその対価を支払う形態です。メリットとしてあげられるのは、運営元のブランド力や体系化された経営ノウハウを活用できる点です。自由な経営が難しい点、ロイヤリティの支払いが必要な点はデメリットといえるでしょう。フランチャイズで独立する場合も、個人事業主になるか法人設立するケースが多いでしょう。
M&A
M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略で、会社を買収して起業する方法です。M&Aには、株式譲渡や事業譲渡、株式の交換や移転に関する法律上の手続きが必要になります。メリットとしては、人材や技術、ノウハウを引き継げるため、初期投資を抑えられる点、デメリットとしては、既存の従業員や顧客との関係維持に苦労することがある点があげられます。買収元の企業が個人事業主である場合もあれば、法人である場合もあります。
Step3:事業計画を立てる
決めた事業形態と事業コンセプトを元に、実現に向け事業計画を立てます。事業の内容を言語化することで目標や課題を明確にできるため、事業を成功へ導く重要なツールとしても活用されている事業計画書を作成しましょう。事業計画書は、事業の利益見込みや事業方針などを説明することができる、事業の実現可能性を具体的に示す書類です。内容は具体的か、整合性がとれているか、競合分析は十分か、模倣困難か、内容が専門的すぎないか、に気をつけましょう。事業計画書は融資や出資などにおいて外部からの協力を得たい際にも必要です。そういった際には、特に記載内容が妥当で実現可能性から乖離しておらず、信頼できるものになっているかが重要になるでしょう。
関連記事:事業計画書の書き方とは?テンプレートや作成の目的、書き方のポイントを紹介
Step4:資金を調達する
資金の調達も重要です。ここでは自己資金以外の主な資金調達の方法について解説します。
融資
日本政策金融公庫や銀行をはじめとする金融機関、信用保証協会、自治体などの公的機関は、起業家を対象とした創業融資を行っており、一定の審査条件を満たす場合、会社設立に必要な資金を貸し付けます。審査に必要となるのが事業計画書です。なお、融資は返済する義務があります。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルとは、成長が期待されるベンチャー企業やスタートアップ企業といった未上場の企業への投資を専門とする投資会社です。英語では「Venture Capital」で、省略して「VC」と呼ばれることも少なくありません。通常、ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業やスタートアップ企業といった未上場の企業に出資して、未公開株式を取得します。その後、企業が株式を公開(上場)した際には、株式を売却するなどして利益(キャピタルゲイン)を得るのが一般的です。また、投資だけでなく、経営ノウハウやネットワークの提供、戦略的アドバイスなど、投資先の成長を促すためのサポートを行うのもベンチャーキャピタルの特徴です。このサポートは、投資リスクを軽減し、未上場企業の価値向上を図ることで、より多くの株式売却益を得る目的で行われます。
関連記事:ベンチャーキャピタル(VC)とは?種類、メリット・デメリットを解説
補助金や助成金
補助金や助成金は、中小企業庁や厚生労働省など国や地方自治体による支援制度です。補助金や助成金制度も審査はありますが、融資とは異なり、返済義務はありません。補助金は募集期間や金額、採択件数があらかじめ決められているものが多く、審査や条件もあるでしょう。非常に重要だといえる、申請の際の提出書類をしっかりと準備することが大切です。一方、助成金は随時受け付けているものが多く、一定要件を満たしていれば受給できる可能性は高いでしょう。
ただし、審査の手続きなどで時間を要すること、基本的に「後払い」となることには注意が必要です。補助金や助成金を受給できるとしても、自己資金や借入金などで当面の資金を準備しなければなりません。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを利用して不特定多数からの出資を受け、資金を調達する方法です。クラウドファンディングには、寄付型、購入型、融資型など、さまざまな種類があります。起業の理由や目的に対して共感を多く得られれば、予想以上に多くの資金を調達できることもあるでしょう。
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Step5:開業の手続きを行い、事業を始める
これまでの準備をふまえ、適切な起業形態を決定し開業の手続きをします。開業の手続きとは、個人事業主の場合は税務署へ開業届を出すこと、法人の場合は会社設立登記を申請することを指します。手続きを行い、無事に開業できたら、事業計画書に基づいた商材・サービスを展開し、ビジネスを開始しましょう。ビジネスによっては必要な許認可がある場合があります。事前に調べて準備しましょう。
起業のアイデアの出し方
アイデアの発想方法やツールとしては、「デザイン思考法」や「オズボーンのチェックリスト」「スキャンパー法」「マンダラート」などがあげられます。
これらと、起業の動機や自身の経験やスキルを活かしてみてください。興味関心に目を向ける「起業する自身のニーズ」と、身近な困りごとや世の中の困りごとに目を向けるという「社会にあるニーズ」という2つの視点から考えれば、ビジネスとして成り立つアイデアを発想しやすくなるでしょう。以下でそれぞれの発想方法を紹介します。
デザイン思考法
ユーザーの視点に立って、徹底的に求められているものを追求したうえで、その実現を目指す考え方です。デザイナーなどが用いる思考法を業務に応用させる考え方であり、「好きな絵を描く」のではなく「求められる絵を描く」と例えるとわかりやすいかもしれません。
関連記事:デザイン思考(デザインシンキング)とは?フレームワークやプロセスを解説
オズボーンのチェックリスト
ブレインストーミングを考案したことでも有名なアメリカの実業家であるアレックス・F・オズボーン氏が開発したアイデア発想のためのフレームワークです。ある特定のテーマや対象について、以下の9つのチェックリストを使って問いかけを行うことで、一定の網羅性をもって新しいアイデアを発想するという方法で、既存アイデアの拡張、派生を行う際に有効なツールです。
1. Put to other uses「転用」: 他の使い道はないか?
2. Adapt「応用」:他からアイデアを借用できないか?
3. Modify「変更」: 変えてみるとどうなるのか?
4. Magnify「拡大」: 大きくするとどうなるのか?
5. Minify「縮小」: 小さくするとどうなるのか?
6. Substitute「代用」: 他に代用できるものはないか?
7. Rearrange「置換」: 入れ替えてみるとどうなるのか?
8. Reverse「逆転」 :逆さにしてみるとどうなるのか?
9. Combine「結合」: 組み合わせてみるとどうなるのか?
スキャンパー法(SCAMPER)
オズボーンのチェックリストを元に、アメリカの研究家であるボブ・エバール氏がより使いやすいものに改良したフレームワークです。以下の7つのチェックリストを使いますが、7つの要素を英語表記した頭文字を並べて 「SCAMPER」 と呼ばれています。
1. Substitute「代替」:入れ替えみるとどうなるのか?
2. Combine「結合」: 組み合わせてみるとどうなるのか?
3. Adapt「応用」:他からアイデアを借用できないか?
4. Modify「変更」: 変えてみるとどうなるのか?
5. Put to other uses「転用」: 他の使い道はないか?
6. Eliminate「削除」:取り除いたらどうなるのか?
7. Rearrange or Reverse「再編成」または「逆転」:再構成、逆さにしたらどうなるのか?
マンダラート(マンダラチャート)
マンダラートとは、マス目にアイデアを書き込んでいくことでアイデアを広げていくアイデア発想法で、目標達成のためのフレームワークとして活用されています。縦横3マスずつ並べた合計9マスのマス目を、9つ使って行うのが一般的です。中心に目標を書き、周囲のマスに目標達成に必要なアイデアや要素を書き込んでいくことで、目標達成のために「何が不足していて、何をするべきか」を明確化できます。漠然としていた思考が整理され、深く考えられるようになるため、新しいアイデアや発想が生まれやすくなると考えられています。
起業を成功させるためのポイント
起業を成功させるために重要となる、心構えは以下の3つです。
・起業の目的を明確にする
・人とのつながりを大切にする
・小さく始める
起業をすると、あらゆる業務に関する判断や実行を自身で行わなければなりません。自分が実現したいことである、「目的」をしっかりと設定できていないと、優先順位も決められないでしょう。また、一人では解決できない問題に直面することも多いでしょう。人との縁やつながりを大切にすることも重要です。目的の実現に取り組む際、スモールスタートから取り組むこともポイントのひとつです。成功確率も上げやすくなるでしょう。
また、必要な事前準備の一つひとつを丁寧に行うことが大切です。起業において特に重要なフェーズは「目的を決め」「事業計画を立てる」フェーズです。現実的に実行できるものになっているのか、何度も見返しましょう。また、周囲にも見てもらうことも有効です。見落としに気づくこともあるでしょう。
また、慎重に準備を進める必要がある資金調達や法務手続きをする際は、信頼できる専門家に依頼することも検討するといいでしょう。
起業のまとめ
起業について、以下に要点をまとめます。
・起業とは新しいビジネス(事業)を起こすこと
・起業するためには、アイデア整理、事業形態の決定、事業計画の作成、資金調達、開業手続きなどのステップが必要
・起業の成功には目的を明確にし、人とのつながりを大切にし、小さく始めることが重要
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