【目次】
ROEとは経営効率を表す財務指標のこと
ROEで確認できる企業の特性
ROEを確認する際の注意点
ROEを高める6つの方法
ROEのまとめ
ROEとは経営効率を表す財務指標のこと
ROE(Return On Equity)とは、自己資本をどれだけ効率良く利用し、利益を生み出すことができているかを表す財務指標です。「自己資本利益率」や「株主資本利益率」と呼ばれ、株主の出資を元手に、どれだけ利益を生み出せているかを示しています。
一般的に、この数値が高ければ高いほど、企業が資本を効率良く活用して利益を生み出していると評価され、株価の上昇にもつながりやすいとされます。
ROEの計算方法
ROEは次の計算式によって求められます。
<ROEの計算式>
ROE(%)=当期純利益÷自己資本
当期純利益とは、1年間(1会計期間)の事業活動で得られた最終的な利益のことです。1年間の収益から、仕入れ代金や人件費などのすべての経費や税金を引いた金額が当期純利益となります。
また、自己資本とは株主からの出資などの返済の必要がない資産のことで、金融機関などから借り入れた負債は他人資本と呼ばれます。当期純利益をこの自己資本で割ることで、ROEが求められます。
ROEとROAの違い
ROEと同じ財務指標のひとつに、ROA(Return On Assets)もあります。ROAは、自己資本に他人資本を含めたすべての資産総資産に対する利益を測る指標で、「総資産利益率」とも呼ばれます。ROAの計算方法は下記のとおりです。
<ROAの計算式>
ROA(%)=当期純利益÷総資産
ROEとの違いは、対象となる資本です。ROEは自己資本だけを対象とするのに対し、ROAは総資産を対象としています。総資産は、会社が保有する試算の合計を指します。
ROEで確認できる企業の特性
ROEがわかれば、その数字からその企業の特性を読み取ることができます。ここでは、ROEで確認できることについて説明します。
経営効率
ROEからその企業の経営効率を判断することができます。ROEは、自己資本を効率的に利用できているかを示す数値のため、ROEが高ければ効率的に利益を生み出していると考えられます。
例えば、同じ規模の自己資本を保有している企業Aと企業Bがあり、企業AのROEが20%で、企業BのROEが10%だった場合を考えてみましょう。企業Aは企業Bの2倍の利益を生み出していることになり、企業Aのほうが企業Bよりも効率的な経営を行っていると評価できるのです。
ROEが高い企業は経営効率が高いとされ、投資家から見て投資価値のある企業と判断されます。一方、ROEが低い企業は自己資本の活用がうまくいっていないとみなされ、その企業の経営能力が疑われることもあります。
企業の投資価値
ROEを見れば、その企業の投資価値がわかります。一般的には、ROEが8~10%の企業は安定性があり、10%を超える企業は投資価値がある優良企業といわれています。
ただし、この数値は業種によって平均値が多少異なるため、同じ業種の企業同士で比較することが重要です。内閣府「金融市場における世界企業の評価(外部サイトに移動します)」によると、日本の上場企業は9%程度ですが、アメリカの上場企業のROEは18%程度、欧州の上場企業のROEも12%程度と、日本はアメリカや欧州より低い傾向があります。
また、投資家は、ROEとROAを併せて確認するのが一般的です。投資価値のある企業のROAは一般的には5%以上が目安とされています。
ROEを確認する際の注意点
ROEは経営効率を知るだけでなく投資の判断材料にもなりますが、ROEを確認する際には注意点もあります。ROEを確認する際の注意点を具体的に見てみましょう。
ROEには負債の影響が含まれない
ROEは自己資本利益率であり、この指標には負債(企業の借金)が含まれていない点に注意が必要です。ROEが高い企業でも、実際には借入金が多いという場合もあります。
例えば、自己資本1,000万円の企業Aと自己資本500万円と他人資本(借入金)500万円の企業Bがあり、ともに純利益100万円だった場合、企業AのROEは10%(100万円÷1,000万円)となりますが、企業BのROEは20%(100万円÷500万円)になります。借入金のある企業BのほうがROEは高くなってしまいます。投資の判断材料として考慮する際にROEだけで判断してしまわないよう、注意が必要です。
一般的にROEは、高いほうが投資価値のある企業だと判断されますが、あくまで企業を評価する要素のひとつにすぎないことを理解しておきましょう。
ROEだけでは企業を評価できない
先述のとおり、ROEの数値だけでは企業を評価することはできません。注意すべきは、ROEが高い一方でROAが低い場合です。ROAが低いということは、総資産全体に対する利益率が低いことを意味し、借入金を利用している可能性や、資産を効率良く活用できていない可能性があり、リスクがあるとも考えられるからです。したがって、企業を評価する際には、ROEだけを見るのではなく、ROAも併せてチェックし、全体的な経営効率と財務健全性を評価することが重要になります。
ROEを高める6つの方法
では、ROEを高めるために企業は何をすれば良いのでしょうか。ここからは、企業がROEを高めるための6つの方法とそれぞれの注意点について説明します。
1. コストを削減する
ROEを高める方法のひとつは、コスト削減による利益の増加です。不要や無駄な費用がないかの見直し、IT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)などの推進による生産性の向上によって、売り上げが同じであっても利益を増加させることができます。
コスト削減で効果が高いとされるのは人件費ですが、人件費を削減することにより従業員からの信頼を失うおそれや、人員の削減が個々への過度な負担につながってしまうおそれ、また結果的に長期的な生産性の低下を招いてしまう可能性もあるため、慎重に検討しましょう。コストを削減した結果、商品の品質やサービスを低下させてしまうことがないよう、注意が必要です。
2. M&Aを実施する
利益率の高い企業を買収(M&A)すると自社の利益を増やすことにつながるので、ROEを高めることができます。
ただし、M&Aにも注意点があります。双方の企業の経済状況や企業文化の違いなどから経営統合がうまくいかず、思うような効果が得られないケースもあります。また、大規模なM&Aには高額な費用が発生し、その負担が企業の財務状況を圧迫することがある点にも考慮が必要です。
3. 積極的な投資を行う
設備投資や新規事業など、積極的な投資を行うことでも、ROEを高めることが可能です。積極的・戦略的な投資を推し進めることで、自社の純利益を増やせれば、ROEを高められます。
しかし、投資が必ず利益につながるとは限りません。特に注意が必要なのは新規事業への投資でしょう。成功させるには市場の見極めや周到なビジネスプランの策定が必要なだけでなく、新規事業は軌道に乗るまでに時間とリソースを要し、初期投資を回収できるまでの体力も不可欠です。
4. 配当を増やす
ROEを高めることは、配当を増やすという方法でも可能です。配当は企業の自己資本から支払われます。配当を増やすと自己資本が減少することになるので、利益が同じであっても、ROEが高くなります。
ただし、配当を増やすことで短期的にROEを上げられますが、配当を増やした分、再投資可能な資金は減ることになります。そのため、長期的な成長が鈍化する可能性には注意すべきです。
5. 自社株買いをする
自社株買いも、ROEを高める方法のひとつです。自社株買いとは、企業が市場から自社の株式を買い戻す行為を差します。余剰資金を使って自社株を買うと発行株式数が減少するため、その分だけ株主資本(自己資本の一部)も減少することになり、ROEが高くなります。資金の豊富な企業にとってROEを上げる効果的な手法といえるでしょう。
ただし、自社株買いは企業が保有する現金を使用するため、財務状況を悪化させてしまう可能性もあります。また、自社株買いはROEが機械的に上昇するだけで、実際のビジネスパフォーマンスが改善しているわけではないことにも注意が必要です。
6. 財務レバレッジを高める
財務レバレッジを高めることでもROEを高めることができます。財務レバレッジとは、企業が借入金や社債などの他人資本(負債)を利用して事業を拡大することをいいます。企業が借入金を増やすと、総資本(負債と自己資本)が増え、自己資本だけによる事業よりも大規模な事業を展開できます。財務レバレッジを高めることで、企業の利益を創出する力(レバレッジ)が増し、ROEを高められるのです。
しかし、借入金を増やせばリスクも増えます。例えば、経済状況が悪化した場合や事業がうまくいかなかった場合には、借入金の利息負担や返済負担が重くなり、経営に悪影響をおよぼし、最悪の場合、倒産につながるおそれもあるでしょう。そのため、他人資本を利用する際には、財務基盤のバランスを考慮することが大切です。
ROEのまとめ
ここまで、ROEについて解説してきました。以下に要点をまとめます。
・ROE(Return On Equity)とは、自己資本をどれだけ効率良く利用し、利益を生み出すことができているかを表す財務指標
・ROEは当期純利益を自己資本で割ることで求められる
・ROEを理解することで、企業の経営効率や投資価値を読み取ることができる
ROEは、企業が自己資本をどれだけ効率的に活用して利益を上げることができたかを示す財務指標ですが、ROEを高める方法には、それぞれメリットとデメリットがあります。そのバランスを理解したうえで適切な経営戦略を立てることが必要です。ROEを正しく理解して自社の経営を見直し、経営に活かしてください。
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