■監修者プロフィール
田中 卓也(たなか・たくや)
税理士、CFP®
中央大学商学部で学んだ後、東京都内の税理士事務所での勤務を経て、田中卓也税理士事務所を開業。記帳代行・税務相談・税務申告をはじめ、事業計画の作成やサポート等の経営相談、キャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・事業継承対策など、経営者や個人事業主のサポートを幅広く行う。そのほか、一生活者目線で、講師・執筆活動や講演活動にも取り組んでいる。
田中卓也税理士事務所(外部サイトに移動します)
【目次】
リボ払いとは毎月一定の金額を返済する支払方法
リボ払いと分割払いの違い
リボ払いの主な種類
経費の支払いを法人カードでリボ払いするメリット
経費の支払いを法人カードでリボ払いするデメリット
法人カードでのリボ払いの利用方法
法人カードでリボ払いする際の注意点
リボ払いのまとめ
リボ払いとは毎月一定の金額を返済する支払方法
リボ払いとは、「リボルビング払い」の略で、毎月一定の金額を支払うクレジットカードの支払方法です。あらかじめ設定した一定の金額を毎月返済するため、経費の管理や返済計画が立てやすいのが大きな特徴です。
リボ払いは個人カードでの利用が一般的ですが、現在では一部の法人カードでもリボ払いや分割払いを利用することが可能となっています。
リボ払いと分割払いの違い
法人カードを利用する企業経営者や個人事業主にとって、支払方法の選択は非常に重要です。特にリボ払いと分割払いは、同じ支払金額でも支払期間や手数料が異なるため、それぞれの特徴を理解して適切に利用することが求められます。
リボ払いは前述のように、毎月の支払金額を一定の金額に固定する支払方法です。カードの利用額に対して手数料を加えた金額を、毎月定められた一定の金額で返済していきます。
一方の分割払いは、支払金額を2回以上の回数に分割して返済する支払方法です。分割払いでは、月々の支払金額ではなく、支払回数を指定します。指定した回数で返済が完了するため、返済期間がそれ以上長くなることは基本的にありません。
リボ払いの主な種類
リボ払いには、主に「残高スライド方式」と「定額方式」の2つの方式があります。2つの方式の特徴はそれぞれ次のとおりです。
残高スライド方式
残高スライド方式は、あらかじめ設定された支払残高に応じて、毎月の支払金額が変動する方式です。例えば、「支払残高が20万円以下の場合、毎月の支払い金額は2万円」「支払残高が10万円以下の場合、毎月の支払い金額は1万円」というように、支払残高によって毎月の支払金額がスライドします。
定額方式
定額方式は、支払残高が増えても、毎月支払う金額が変わらない方式です。クレジット会社によっては元利定額方式と呼んでいる会社もあります。支払金額には手数料も含まれており、支払残高が少なくなると、支払金額に占める手数料の比率も少なくなっていきます。逆に、支払残高が増えると返済に必要な期間も長くなり、結果的に手数料が増えていきます。
なお、両者の特徴を掛け合わせたものとして、残高スライド定額方式といわれるものもあります。残高スライド定額方式とは、支払残高が減ると毎月返済額が段階的に減少していき、逆に、支払残高が増えると毎月返済額が段階的に増加していく方式です。残高がいくらになると返済額がいくらに変動するのかはクレジット会社によるので事前に確認しておきましょう。
経費の支払いを法人カードでリボ払いするメリット
ここでは具体的に、企業や個人事業主が経費の支払いを法人カードのリボ払いで行うメリットを紹介します。
毎月の支払金額を一定に保てる
法人カードでのリボ払いのメリットとしてまず挙げられるのが、毎月の支払金額を一定に保つことができる点です。支払金額を一定に抑えることで経費管理を効率化できるほか、安定した資金繰りにもつながります。以下でさらに詳しくみていきましょう。
・経費管理の効率化
経費に関わる毎月の支出が一定額になれば、経費管理がシンプルになるので、月々の経費変動が大きい場合と比べて会計処理に手間がかからず、予算管理もしやすくなります。また、ビジネス・カードなど法人カードの利用明細も1枚の明細書にまとめられているため、経費の集計や確認も簡単です。税務処理に必要な情報が詳細に記載されている点も見逃せないポイントでしょう。
・資金繰りの安定化
急遽、多額の経費が必要になった場合でも、毎月の支払金額を一定に保つリボ払いを利用していれば、資金繰りがしやすくなります。特に起業の初期段階などは、月によって収入の増減幅が大きくなることも少なくありません。また、新しい事業やプロダクトの開発、仕入れや納税などのために支出が増えるタイミングもあります。そうした場面において支出の一部を抑え、平準化しておけば、資金繰りの安定化に役立ちます。
繰り上げ返済が可能
リボ払いできる法人カードの中には、資金に余裕のある月に、繰り上げ返済ができるものもあります。この繰り上げ返済が可能な点も、法人カードでリボ払いするメリットのひとつです。繰り上げ返済を利用して返済額を増やせば、返済期間を短縮し、手数料の総額を抑えられます。
一例として、アメリカン・エキスプレスのビジネス・カードで選べる支払方法「ペイフレックス® for Business あとリボ」の場合は、増額返済と一括返済のどちらも利用可能です。状況に応じた柔軟な対応ができるため、特定の季節やビジネスのサイクルによって収益が上昇する月や、一時的な収益増加の際などに増額返済または一括返済を利用し、将来の返済負担を軽減または完全に解消することが可能です。
ただし、すべての法人カードが繰り上げ返済に対応しているわけではないので、カードの申し込み時に、対応の有無や詳細な返済条件などを確認しておきましょう。
経費の支払いを法人カードでリボ払いするデメリット
法人カードを利用したリボ払いは、企業や個人事業主にとって便利な点が多いものの、メリットばかりではありません。事前に以下のデメリットについても理解しておくことが大切です。
手数料が発生する
法人カードにおけるリボ払いの手数料は、実質年率15%~18%程度が一般的です。この手数料はリボ払いを長く利用するほど増えていくため、長期間利用する場合には返済総額が高くなる大きな要因となります。リボ払いを利用するときは、どれだけの手数料が発生し、返済総額がいくらになるのかをしっかりと把握しておくことが大切です。
ただし前述のように、一部の法人カードでは、繰り上げ返済により手数料の負担を軽減させるオプションが用意されています。これらを利用して早めに返済すれば、実際に支払う手数料を抑えることができます。
支払期間が長期化して借入額を把握しにくくなる
リボ払いはその特性上、重ねて何度も借り入れするなどして利用残高が多くなった場合に、返済期間が長期化してしまう傾向があります。
リボ払いの支払い期間が長期化すると、全体の借入額、手数料、返済の進捗の把握が難しくなります。継続してリボ払いを利用する場合は、定期的な返済状況の確認や返済シミュレーションを行うことが欠かせません。経費などの支出や収益の流れとともに、返済計画を明確にしておくことが非常に重要です。この作業を怠ると、財務管理にも支障をきたすことになります。
ただ、この問題も、繰り上げ返済や一括返済によって軽減させることが可能です。また、借入額などは公式Webサイトや専用アプリで把握する以外に、借入金管理ツールを導入するのも有効です。
法人カードでのリボ払いの利用方法
法人カードでリボ払いを利用するときは、支払いの際に直接リボ払いを選択する方法と、支払い後に一括払いからリボ払いに変更する方法の主に2つがあります。
支払いの際にリボ払いを指定する
法人カードでのリボ払いの利用方法の1つは、商品購入時にカードの支払方法としてリボ払いを選択する方法です。
実店舗で商品を購入する場合は、支払方法としてリボ払いを希望する旨を会計時に伝えます。また、インターネットで商品を購入する場合は、支払方法の選択画面でリボ払いを選びます。リボ払いが可能な法人カードなら、このように支払い時に指定することでリボ払いを選択・利用できます。
支払い後にリボ払いに変更する
法人カードでのリボ払いの利用方法として、商品購入の際に一括払いを選択した後に、リボ払いに変更する方法もあります。
具体的には、カード会社の公式Webサイトや専用アプリから、支払方法をリボ払いに変更する方法です。また、リボ払いに未対応の店舗で購入した場合でも、後日、法人カードの管理画面からリボ払いに変更することが可能なカードもあります。ただし、リボ払い変更サービスは、一般的に毎月の最終受付日が決まっているため注意が必要です。
支払い後にリボ払いへの変更が可能な法人カードであれば、あとからでも状況に応じた支払方法の選択が可能になります。そのため、売上入金の遅れや納税、突発的な支出が増えた際など、ビジネスの状況に応じて収支のバランスをコントロールし、支払金額を調整することも可能です。
法人カードでリボ払いする際の注意点
法人カードでリボ払いを利用する際は、そのメリットや利便性を上手に活用し、デメリットによる不利益を最小限に抑えるための注意点がいくつかあります。以下で具体的に紹介します。
カード申し込み前:手数料や支払方法、会計処理について確認する
リボ払いを利用する場合に限らず、法人カードを申し込む前には、手数料や支払方法の種類についてしっかりと確認することが不可欠です。具体的な借入金額を想定した返済シミュレーション、リボ払いが用意されているのか、用意されていた場合には支払い後のリボ払いへの変更が可能なのか、といった点などをチェックします。
また、経費の支払いや商品の仕入れでリボ払い・分割払いを利用した場合は、一括払いで購入する場合とは会計処理や仕訳の方法が変わります。その計上方法についても事前に理解しておきましょう。
関連記事:クレジットカード(リボ払い/未払金)の仕訳方法をわかりやすく解説
カード申し込み・受け取り時:利用限度額などを確認する
法人カードの申し込み時や受け取り時には、カードの有効期限、利用限度額、リボ払いの月々の支払い金額とその設定方法、手数料の実質年率も必ず確認します。リボ払いは、カード会社やカードによって支払い金額の設定方法やリボ払いの利用限度額、実質年率が異なるため、ほかの法人カードとも比較検討しておきましょう。
カード利用時:計画的に利用する
前述したように、リボ払いは利用残高が増えやすく、支払期間も長期化しやすい傾向があります。利用頻度が増して支払期間が長期化すると手数料の負担も大きくなるため、カード利用時は、利用残高や手数料の額をしっかりと確認して管理し、計画的に利用することが大切です。
資金繰りの安定化、財務の透明性の確保、キャッシュフローの最適化を実現するためにも、リボ払いの計画的な運用を心掛けましょう。
カード利用後:毎月の利用明細を確認する
カードを利用して商品などを購入したあとは、毎月、カード会社の公式Webサイトや専用アプリなどで利用明細を確認します。リボ払いの利用明細は、月々の支払金額や支払残高、手数料などをチェックできるだけでなく、帳簿への記載の元データや予算策定のための参考データとしても活用できます。
実際、会計処理については通常、リボ払いを利用した際には「未払金」勘定を用い、クレジットカード会社に未払金の一部を返済していき、手数料は支払利息で処理するといった方法が一般的です。
その際、全体の借入額(つまりカード会社への未払額)、手数料、返済の進捗の把握を定期的に行い、「財務ソフトの未払金勘定の残高がクレジット会社とのデータと照合しているか」などを確認しておくことが重要です。
リボ払いのまとめ
ここまで、法人カードによるリボ払いについて解説してきました。以下に要点をまとめます。
・法人カードのリボ払いを利用することで、毎月の支払金額を一定に保つことが可能
・資金に余裕のある時に、繰り上げ返済や一括返済ができる法人カードもある
・計画的に利用すれば、リボ払いは経費管理の簡略化や資金繰りの安定化に役立つ
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