監修者プロフィール:
末永 寛(すえなが・ひろし)
税理士
一般企業における経理事務を約25年経験したのち、大手税理士法人勤務を経て税理士事務所を開業。フリーランス・中小企業専門の税理士として、税務業務のみならず、将来の企業運営も含めた経営サポート業務を提供。また、近年の電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も含めたITツールの導入にも積極的に導入サポートを行っている。
スエナガ会計事務所(外部サイトに移動します)
【目次】
収入印紙とは
領収書に収入印紙の貼付が必要なケース
領収書に収入印紙の貼付が不要なケース
収入印紙の購入:支払方法や購入できる場所
収入印紙の貼り方と貼る際の注意点
領収書に貼る収入印紙のまとめ
収入印紙とは
収入印紙は、政府が発行する証票の一つです。取引や文書に税金がかかる場合に、納税を証明するために必要になります。この税金は「印紙税法」という法律によって課せられている税金で、切手のような形状の収入印紙を購入して領収書をはじめとする、課税文書に添付することで、納めることができます。
印紙税法第3条によると、印紙税の納税義務者は「課税文書の作成者」とあるため、契約書や領収書といった文書の作成者が、収入印紙を購入(負担)しなければなりません。
収入印紙とよく似たものに、収入証紙というものがあります。相違点は納税先です。収入印紙の納税先は「国」であり、収入証紙の納税先は「地方公共団体」となります。
印紙税がかかる主な文書
税金のかかる書類のことを「課税文書」と言います。この課税文書は20種類以上あり、以下は代表的な課税文書です。
・売上代金に係る金銭等の受取書
・請負に関する契約書
・約束手形、為替手形
・預金証書、貯金証書
・保険証券
・信用状
・預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳
使用方法や、そのほかの課税文書は、国税庁の公式サイト(外部サイトに移動します)で確認することができます。
領収書に収入印紙の貼付が必要なケース
受け取り金額が5万円以上の領収書は、収入印紙の貼り付けが必要です。必要となる収入印紙の金額は、領収書に記載されている受け取り金額によって異なります。
また、受け取り金額が消費税込みで記載されている領収書の場合は、消費税や地方消費税などが区分記載されている場合に限り、税抜価格で収入印紙の金額を判定できます。ただし、消費税及び地方消費税額の区分記載のない領収書は、税込価格で収入印紙の金額を判定します。
必要な収入印紙の金額
収入印紙は、領収書に記載されている金額によって必要になる金額が異なります。国税庁「 No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書(外部サイトに移動します)」によると、領収書の金額と、必要な収入印紙の金額は以下の通りです。「売上代金以外の領収書」とは、借入金や担保としての保証金、保険金など、売上には該当しない金銭の受け取りが対象になります。
【売上代金にかかる領収書】
【売上代金以外の領収書】
領収書に収入印紙の貼付が不要なケース
通常、経費などの領収書には収入印紙が必要ですが、貼付が不要となるケースがあります。
非営利目的での取引
収入印紙は、課税文書にかかる税金を納めるものです。利益を目的としない取引による領収書は、「非課税文書」になるので収入印紙の貼付は不要です。
クレジットカードの領収書
クレジットカードを使った取引は信用取引に該当します。金銭の受領事実がないことから、課税文書である領収書を作成したとはみなされません。そのため、クレジットカード決済を通して行われた取引の場合、収入印紙の貼付は不要です。ただし、領収書にクレジットカードを利用した旨が記載されている必要があります。注意しましょう。
債権を相殺した取引の場合(条件による)
互いに債権、債務のある事業者同士で取引を行った場合、受領した代金を債権で相殺でき、収入印紙が不要になるケースがあります。債権で相殺した場合「売掛債権の消滅」のみが発生しており、金銭の受領は発生していません。そのため、相殺部分については非課税となります。また、債権で相殺しきれなかった金額が発生しても、その金額が5万円未満であれば、金銭の受領を証明する領収書も非課税の金額であるため、収入印紙は不要です。もし、債権で相殺しきれなかった金額が5万円以上の場合は、課税対象となり、収入印紙が必要になるため注意しましょう。
たとえば、A社に対して5万円の債権を持っているB社が、A社から現金で8万円の商品を購入する場合、債権と相殺して購入すれば3万円の現金で買うことができます。このケースでは8万円の取引が行われていますが、実際に動いたのは3万円のため、5万円未満の取引として扱われ、非課税文書となります。このケースでは、収入印紙は不要です。
収入印紙の購入:支払い方法や購入できる場所
収入印紙を購入する場合の支払い方法は、現金のみとなり、電子マネーやクレジットカードによる支払いはできないため注意が必要です。購入できる代表的な場所は以下の通りです。
郵便局・法務局
郵便局(外部サイトに移動します)や法務局(外部サイトに移動します)では、どんな種類の収入印紙でも購入が可能です。金額の大きな収入印紙など普段あまり使用しない収入印紙が必要になる場合でも安心でしょう。
夜間や土日祝日に購入する必要がある場合でも、対応している郵便局の「ゆうゆう窓口(外部サイトへ移動します)」を検索することが可能です。使用頻度が少ない金額の収入印紙や複数枚必要な場合などは、在庫を置いていない可能性もあるので、夜間や土日祝日に購入する場合に限らず、事前に在庫を確認しておくといいでしょう。
コンビニエンスストア
コンビニエンスストアでも収入印紙の購入は可能です。しかし、店舗によって取り扱っていない場合や、購入できるものが200円の収入印紙などに限定される場合もあります。必要なものが購入できるかを、事前に確認するようにしましょう。
収入印紙の貼り方と貼る際の注意点
収入印紙は、切手と同様に水をつければ貼ることができるようにつくられています。領収書を含む課税文書には、収入印紙を貼る枠があらかじめ用意されている場合もありますが、指定の枠がない場合、必ず書類の文字と重ならない余白部分に貼付する必要があるので注意しましょう。また、複数の収入印紙を貼る場合、印紙同士が重ならないように貼付しなければなりません。
収入印紙はただ貼付するだけではなく、収入印紙を貼付した箇所に、使用済みであることを示すために必ず消印もしくは直筆の署名をする必要があります。消印とは、課税文書と収入印紙の彩紋を重ね、収入印紙が消えるように捺印することを指します。いわゆる割印と同じ捺印方法です。
消印の場合は、課税文書の作成者がわかる会社名もしくは氏名がわかる印鑑が必要で、直筆のサインで対応する場合は、鉛筆やシャープペンシル、摩擦で消えるようなボールペンではなく、消えないボールペンを使用しましょう。また、捺印および署名をする場所にも注意が必要です。課税文書の紙面と印紙にまたがって捺印する、または署名がされているか、どちらか片方だけにしかかかっていない、ということがないように注意しましょう。なお、複数の収入印紙を貼る場合は、どの印紙においても消印もしくは直筆の署名が必要です。
領収書に貼る収入印紙のまとめ
以下に、領収書に貼る印紙についての要点をまとめます。
・収入印紙は、政府が発行する証書で課税文書と呼ばれる税金がかかる文書の納税を示すもの
・収入印紙の金額は、課税文書に記載されている金額によって異なり、非営利の取引やクレジット決済の場合など、収入印紙が不要になるケースもある
・収入印紙はコンビニエンスストアや郵便局、法務局や役所で購入することができ、領収書に切手のように貼ったあとは、紙面と印紙にまたがる形で消印を押すか、直筆のサインをする必要がある
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