こんにちは。NEUT MEDIA代表 / NEUT Magazine編集長の平山潤です。前回の「BUSINESS CLASS」の記事から少し時間が空いてしまいました。最近アメックスでビジネス・マッチングのサービスがスタートしました。そこでミレニアルズと呼ばれる僕の世代やZ世代の社会問題を向き合いながらお仕事をしている2名のゲストにお招きして、どんな相手と仕事をしたいのか / したくないのか、そして彼らにとって“いいビジネス・マッチング”とは何か、を探る記事を作りました。
平山潤氏
顧客の声を直接聞くこと、関係者に直接会いに行くこと
平山:それぞれ自己紹介をお願いします。
金丸:金丸百合花(かねまる・りりあん)です。株式会社ONE NOVAの代表取締役で、アンダーウェアブランド「one nova(ワンノバ)」のブランドディレクターをしています。ブランドは2017年に生産過程やコストの透明性を重視してスタートし、リニューアルを経て今年の12月で6年目に突入します。
現在の「one nova」は独自に開発した自然由来の素材を使って「気持ち良さ」を追求すること、幅広いサイズの製品やユニセックスの製品を展開することを大切にしています。
one novaのキービジュアル(提供:one nova)
中村:中村元気(なかむら・げんき)です。「530(ゴミゼロ)」というNPO法人の代表をしていて、資源や人の流れが循環する仕組みをつくっています。今日は活動の1つである「N.E.W.S PROJECT(ニュースプロジェクト)」を軸にお話ししたいと思います。
N.E.W.S PROJECTのUME SOUR(提供:530)
「N.E.W.S PROJECT」は食材にその時々で最適な加工をすることで、余すことなく楽しめるようにする試みです。これまでは果物をお酒やアイスクリームに加工しましたが、今後はお魚やお肉の加工もしていきたいと考えています。「530」は12月から5年目になります。
左から平山潤氏、NPO法人530 代表 中村元気氏、株式会社ONE NOVA代表取締役 金丸百合花氏
平山:まずは、2人が自分の仕事において大切にしている姿勢や考え方を聞きたいです。
金丸:「one nova」では、私がブランドアクションに関わる意思決定をして、相方の高山泰歌(たかやま たいが)がお金周りの意思決定をする、という役割分担をしているので、第一に社内でのコミュニケーションを大切にしています。
ブランドアクションに関しては、「お客さまに説明できないことはしない」ということを大切にしていますね。単一商品をどんどんアップデートしていくブランドなので特にお客さまの声を聞くことが重要だと考えています。そのためお問い合わせの対応を外注せずに自分でやるようにしていて、常にお客さまのニーズや商品へのフィードバックを受け止め、必要に応じて説明をしています。
中村:僕は食材の生産者と加工者をつなげる役割を担っているので、そのどちらにも光が当たるように意識しています。生産者と加工者、それぞれのファンを増やすためにも、OEMではなくしっかりお名前を出してやるようにしているんです。
あとは信頼し合って仕事を進めたいので、現地に直接会いに行って話すことを大切にしています。生産と加工の背景や関わる人たちのモチベーションを知り、発注と受注だけの関係にならないようにしています。
やはり大切なのはコミュニケーションが取れるかどうか
平山:2人が人との関係性を大切にしながらお仕事をしているのが伝わるお話ですが、あらためて誰かと仕事をする上でどんなことを大切にしているのか、どんな相手と仕事をしたいと思うか教えてください。
金丸:もともと関係がある人とお仕事をするときなど、楽しくやりたいという思いが先行してしまいそうになることもあったのですが、そうするとゆくゆくお互いにとってヘルシーではなくなってしまうと感じました。なので、まずは要求をしっかり聞いて、「すり合わせ」を大切にしています。あとは業務的なコミュニケーションも大事ですが、パーソナルな部分も見えるように時間をかけるようにしています。
金丸百合花氏
平山:こなしていくのではなく、ブランドとして大切にしている価値観も共有したいということですよね。
金丸:そうですね。やはりコミュニケーションが取れる相手、一緒にプロダクトを大切に思ってくれる相手とお仕事したいと思っています。
中村:「530」はNPO法人なので、「非営利=お金が介在しない」、「ボランティアでやっている」と思われることがあるのですが、もちろん活動するためにはお金が必要です。その部分を最初に共有するようにしていますね。
また、価値がないと思われている素材に新たな価値を見出すことが活動テーマの1つなので、固定観念に囚われない発想が大切です。たとえば「事例はあるのか」などと最初から否定的に考えるのではなく、ないものを生み出す前提で会話ができるかどうか、そういう柔軟性があるかどうかを気にしているかもしれません。
中村元気氏
平山:仕事で人と関わるなかで「これはやめてほしい」と思う場面はありますか?
中村:呼ばれたイベントなどでペットボトル飲料を渡されると、ゴミを生み出さない活動をしているのは調べたらすぐにわかるはずなのに……と思ってしまいますね。もちろん仕方がない場合もありますが、活動を否定されているように感じるときがあります。
金丸:取材などで時々あるのが、枠に当てはめるような言い方をされたり、一方的になにかを求められたりする場面です。一緒に考える気がないと感じてしまいますね。
平山:相手が大きな企業の人や年長の人だとそれだけでもプレッシャーに感じることもありますよね。
大切にしていることとお金とのバランスの取り方
平山:ここまでのお話にもあった通りそれぞれ大切にしていることがたくさんあると思うのですが、大切にしていることとお金のバランスはどう考えていますか?
金丸:法人なのでもちろん利益を出さなくてはいけないのですが、やはり数値で測れない部分や効率化によって排除されてしまうようなことも大切にしたいと思っています。
一緒に会社をやっている高山とは、最近買ったものとか個人的な話から、ニュースで知った社会的な話まで、雑談をたくさんします。その延長でプロダクトのことも話しますし、さまざまな価値観を共有することによってブランドとして大切にしたいことが具体的に見えてきます。
そのうえでお金とのバランスを見極めて。お金のためになにかを犠牲にしなくてはいけないような無理が出てきたら、ブランドを続けないというのも1つの選択肢としてもっています。
中村:僕は大切にしたいこととお金とのバランスを取るために規模感を意識しています。ものをつくって売る以上どれだけ売れたかが1つの指標になりますが、やはり売り上げを増やすためにゴミを生み出したら本末転倒です。
それに、無理な供給を迫るようなこともしたくない。もちろんおいしいものをつくって届けようとしているのですが、量にはばらつきがあってもいいと考えているんです。あるだけのもので、その時々に最高だと思えるものをつくる。そして少しずつ味わってもらう。損をする人が出てこないような進め方で、必要以上には求めないようにしています。
まとめ:大切にしたい価値観を起点にしたビジネスの可能性
今回話を伺った2人のビジネスはともに、それぞれが大切にしたい価値観を広めるためにつくられたモデルだと言えるのではないでしょうか。そのうえでビジネスパートナーに求めるのは、互いにリスペクトを持ってコミュニケーションできることや、大切にしたい価値観を共有して一緒に育てていけるような姿勢だと感じられるインタビューになりました。
■プロフィール
平山潤(ひらやま じゅん)
NEUT MEDIA株式会社 代表 / NEUT Magazine編集長
1992年相模原市生まれ。成蹊大学卒。大学卒業後、ウェブメディア『Be inspired!』編集長を経て、『NEUT Magazine(ニュートマガジン)』にリニューアル創刊させ、編集長を務める。2019年に自社媒体の運営と企業やブランドとのメディアタイアップやコンテンツプロダクションの事業を展開するNEUT MEDIA株式会社を設立し、「先入観に縛られないNEUTRALな視点」を届けられるよう活動中。
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金丸百合花(かねまる・りりあん)
株式会社ONE NOVA 代表 / ブランドディレクター
1999年生まれ。大学在学中にアンダーウェアブランド「one nova」を設立。自然由来素材の高機能アンダーウェアを展開し、Forbes 30 under 30 Asia に選出される。「一生で一番着る服」である下着から、曇りのない「気持ち良さ」を創造するために、ブランドの運営を手掛けている。
中村元気(なかむら・げんき)
一般社団法人530 代表
1992年生まれ。2013年に原宿のキャットストリートで地域コミュニティ「CATs」を始め、クリーンアップやアーバンファーミングを行う。その後、2018年に循環するライフスタイルの提案を行う「530」を立ち上げ、特にアップサイクルという、様々な理由で廃棄され価値がないとされる素材を活用したものづくりのプロジェクトを行う。現在は、今年7月から始めた、日本中の未来の食を担う生産者と加工者を繋げて食品加工品をつくる「N.E.W.S PROJECT」に力を注ぐ。
■スタッフクレジット
文・撮影:日比楽那 編集:平山潤、服部桃子(株式会社CINRA)
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