【目次】
メンターとは
メンター制度を導入するメリット
メンタリングを実施する際のポイント
メンターのまとめ
メンターとは
メンター(mentor)は、日本語としては「支援者」や「助言者」と訳されます。ギリシャ時代の詩人ホメロスが書いた叙事詩に登場する賢人「メントール(Mentor)」に由来し、「良き指導者」という意味で使われてきました。ビジネスシーンにおいては、知識や技術を必要としている対象、主に若手社員や新入社員に対して、指導や育成の役割を担う人物を指します。人材育成を目的に、企業が「メンター制度」として導入するケースも多いです。
メンター制度は、1980年代のアメリカで個別に指導する人材育成制度として確立されました。メンターの自発的な成長を支援するためのサポートや、指導育成方法を「メンタリング(mentoring)」と呼び、メンタリングを行う人であるメンターに対し、メンタリングを受ける人を「メンティー(mentee)」と呼びます。多くの場合、メンティーが悩みや不安も打ち明けやすくするように他部署など少し離れた所に属している、メンティーと世代の近いメンターを選ぶことが推奨されています。
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メンターの役割とは
メンターは、指定されたメンティーのメンタリングを行います。メンターは上司ではありません。仕事を直接振ることはありませんが、仕事に対しての指導役となります。また、直属の上司には言いづらい相談事や置かれている状況、持っているスキル、理想としているキャリアや働き方を聞き、アドバイスをすることで、メンティーの精神面をサポートする役割もあります。メンタリングの目的は、対話を通じてメンティーの自発的な行動や成長を促すことです。メンティーの目標設定やキャリア形成の明確化をサポートすることもメンターの役割の一つといえるでしょう。
労働環境の変化やコロナ禍による社会全体の意識の変化、ワークライフバランスを重視する傾向などにより、価値観や働き方の多様化が加速しています。仕事上の関係や上下関係から離れた公平な立場から相談ができるメンターの存在は、より求められるようになっているといえるでしょう。また、新入社員の早期戦力化や効率的な育成は企業にとってどのような時代においても重要なトピックです。メンター制度により、スムーズなコミュニケーションができる環境を用意することは、人材育成にも寄与するといえます。さらに、社員の離職防止にもつながるでしょう。
チューターやコーチング、OJTとの違い
人材育成の文脈において使われる言葉には、メンター以外に、チューターやコーチング、OJTがあります。メンターは、仕事の進め方、中長期的なキャリアプラン、ワークライフバランス、職場の人間関係、プライベートなど、多岐にわたる内容について、対話を通してメンティー自身が気づき、答えを見つけられるよう導きます。長期的に精神的なサポートまで行うという点が1番の違いと言えるでしょう。チューター、コーチング、OJTそれぞれの意味についての説明は以下の通りです。
・チューター
ビジネスにおいては、若手社員に仕事をする上で必要なことや業務の進め方などを、1対1で具体的に指導することを担った、先輩社員。
・コーチング
コーチングとは、目標達成に向けて能力やモチベーションを引き上げ、成長や自発的な行動を促すコミュニケーション手法。
・ OJT(On-the-Job Training)
実務における即戦力となることを目的に、実際の職場での実務を通して、業務に必要な知識やノウハウを教える教育方法。
メンター制度を導入するメリット
メンター制度を導入することのメリットを企業、メンター、メンティー、それぞれの立場から整理します。
企業としてのメリット
企業が享受するメリットとしては、社員の定着率の向上、社内環境の改善および、社内コミュニケーションの活性化、社員の指導力の向上、の3つが挙げられます。
・社員の定着率の向上
メンター制度を取り入れることで、メンティーの業務やプライベートに関する心配事や悩み事を軽減し、疎外感や孤立感を解消につながります。若手社員が抱えがちな仕事や人間関係におけるストレスを和らげることができれば、社員の定着率向上も期待できるでしょう。メンター制度の導入は企業にとって重要である人材確保にも有効だといえます。
・社内環境の改善および、社内コミュニケーションの活性化
メンターとメンティーの交流、メンター同士、メンティー同士での交流も発生するため、組織の壁を越えた人間関係が築かれます。交流関係の広がりにより、社内環境の風通しが良くなることや社内コミュニケーションの活性化が期待できます。
・社員の指導力の向上
メンティーへの指導により業務を再確認する機会、課題の認識や改善を意識する機会になるので、メンターの成長にもつながります。
メンターとしてのメリット
メンター自身にとっても、成長の機会になることでしょう。メンタリングを行っていく過程で、メンティーの悩みや業務内容に対する質問、中長期的なキャリアの相談を受けます。会社や業務、キャリアについての深い理解が必要になるでしょう。メンターの役割をしっかりと担うためには自身も学ばなければなりません。
また、常にメンティーに「見られている」という意識が芽生えるので、自然と責任感が強まるでしょう。精神的なサポートも担うメンターをするためには、傾聴力やメンティーが自発的に成長するよう促すスキルも必要です。メンタリングを通して、育成スキルを磨いていくこともできるでしょう。
メンター自身にとってのキャリア形成について考えるきっかけにもなります。メンタリングの過程で、自身のスキルやこれまでの経験や失敗などを振り返る機会があるため、キャリアにおいて自身がどのようなステージにいて、これからどのように進んでいきたいのかを考えるようになるでしょう。
メンティーとしてのメリット
メンティーにとってのメリットは、やはり精神的な支えといえるでしょう。メンター制度によって、わからないことや不安なことを相談しやすくなります。また、業務や組織、会社についての理解もしやすくなることで、職場になじみやすくもなるでしょう。
メンタリングを実施する際のポイント
メンタリングを行う際、注意すべきポイントがあります。メンターが持っておくべき心構えを4つ紹介します。
傾聴する
傾聴とは、アクティブリスニング(Active Listening)とも言われますが、相手の話にじっくりと耳を傾け相手に理解と共感を示しながら、話が尽きるまで聴くスキルです。メンティーの非言語情報をよく観察することも大切です。表情や視線の動き、顔色、声のトーン、態度などがいつもと違うなど気になる点がある場合は確認をしましょう。対話の際は、常にメンティーのペースに合わせるように心がけ、肯定的な言葉を選ぶようにしましょう。メンティーの発言がネガティブな内容だった場合でも、ポジティブに言い換えることで建設的に考えやすくなり気づきを促しやすくなります。
命令や説教をしない
メンティーに気づきを与えて自発的な行動を促すことがメンタリングの目的であることを常に意識しましょう。対話の中で、もし愚痴や批判など、好ましいとは言えない発言が出てしまった場合でも、まずは傾聴に徹する事が大切です。命令、強制、注意、説教といったようにメンティーが感じてしまわないように注意し、言葉遣いにも気を配ることも重要です。求めていないアドバイスを受けることで、命令された、説教をされたという印象をメンティーが抱いてしまい信頼関係が崩れる懸念があります。メンターの主観を混ぜることなく、気づきにつながるような質問を投げかけることで、メンティー自身で答えを見つけられるよう、促しましょう。
個人差を理解し尊重する
人はそれぞれ違います。個人差があることを常に念頭に置き、メンター自身の価値観で判断したり比較したりすることのないよう常に意識しましょう。メンティーの価値観や考え方、ペースを理解し、尊重し、許容して接しましょう。メンティーの変化が見えにくいこともありますが、常に見守る意識を持つことが重要になります。
話の内容を他言しない
メンタリングで話される内容は、仕事からプライベートまで幅広いです。どのような内容であれ、「他言無用」が基本です。この前提があるからこそ、心理的安全性が担保され、メンターとメンティーの信頼関係が成立します。評価と結びついてしまうかもしれない、とメンティーが心配することもないよう、人事評価と関係のないメンターをアサインすることも大切なポイントです。
他言無用が大前提ですが、メンタルヘルスやハラスメント、生命に関わるような内容の場合、メンティーに事前に了承をもらい、決められている手順に従って社内の専門部署や産業医に相談しましょう。深刻な不利益、法令遵守違反などの重大事案でも同様の対応を行いましょう。
メンターのまとめ
メンターについて、以下に要点をまとめます。
・メンターとは主に若手社員や新入社員に対して、指導や育成の役割を担う人物のこと
・メンティーの精神面をサポートし、自発的な成長を促すことで、離職防止や想起戦力化貢献できる
・メンタリングには傾聴、命令や説教はしない、個人の尊重、他言しないことに注意する
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