利益を追求しながら理念も実現。両輪を回すのが「絆徳経営」
多くの経営者が「集客」や「組織づくり」、「売上アップ」に悩んでいます。どうすれば解決できるでしょうか。
相手が顧客であれ、社員であれ、絆をつくることが大切です。ラーニングエッジではこれを「絆徳(ばんとく)経営」と呼んでいます。
相手にとってよいことをする、つまり「この人といればよいことがある」「この会社と付き合えばよいことがある」と思ってもらえれば、絆ができます。絆ができれば、長期的にお付き合いを続けることができます。“よいこと”というのは、例えば笑顔で接する、感謝を伝えるなど、当たり前でごくシンプルなことです。
相手にとってよいことを実践するために最初に必要なステップが、「相手がどんな人で、何を求めているのか?」を知ることです。喜んでくれるはずだ!と恋人に100本のバラの花束をプレゼントしたけれども、相手はそれを望んでいなかった、というのと同じことがビジネスの世界でも起こり得ます。
顧客が何を望んでいるか分からないまま、どれだけSNSで集客しようとしても、相手には響きません。また、経営者が部下のことを理解していなければ、社員は定着しません。相手を知るにも、ただ闇雲にアプローチするのではなく、まずは相手の関心事に焦点を当ててコミュニケーションをとってみてください。それだけで関係性はぐっとよくなります。
我々が運営している経営スクールのマーケティング講座の中には、相手の本音を知るためのプログラムがあり、あなたの会社の製品やサービスを買う理由と買わない理由を言語化するグループワークを行っています。普段、なかなか顧客の本音を聞く機会はありません。さまざまな立場にいる受講者の意見を聞き、徹底的に本音を探ることで、多くの発見を得られます。
絆徳経営について、もう少し詳しく教えていただけますか。
「絆徳(ばんとく)」とは、「絆(きずな)」と「道徳」を大事にする経営手法です。
多くの場合、会社経営は売り上げや利益を増やすことが目的になっています。これを私は「所有の経営」と呼んでいます。一方で、世のため人のためにビジネスをすべきであるという考え方を「理念の経営」と呼びます。しかし、これには落とし穴があり、理念を軸にした経営をすると、「世のため人のためにやっていることだから、給料が少なくてもいいよね」と、サービス残業をするなど社員が犠牲になってしまうパターンも多いのです。
絆徳経営は、世のため人のために行っているけれど経済的にも満たされる、つまり「理念」と「利益」の両輪がきちんと成り立つ経営手法です。顧客と絆ができることで経済合理性が生まれるだけでなく、企業にとっては理念や社会的責任も同時に実現できます。また、顧客にリピーターになってもらったり、他のお客様を紹介してもらえたりするので、売り上げが伸びていきます。新規顧客を獲得するコストも減らすことができます。さらに、社員が定着するので、採用コストも抑えることができます。
「集客」や「組織づくり」の課題を解決するには、まずはリーダーが率先して、「お金儲けだけではない、お題目でなく絆や道徳を大事にしていくのだ」という姿勢を社員に示していくことが大切だと考えます。
「理念」と「利益」を両立できる。そんな「絆徳」という経営手法を考えられたきっかけは何だったのでしょうか。
私は以前から世界中の経営理論や思想、哲学を探求するのが好きでして、ギリシャに行ってギリシャ哲学を研究してみたり、インドの山奥でインド哲学を探究してみたり、中国の古典を勉強してみたりするのみならず、最新の欧米的なマーケティング理論も勉強してきました。そうしてさまざまな理論を探究していく中で、関わる人々との絆ができれば、会社はうまくいくのだという結論にたどり着きました。
もともとは英語で「モラルエンゲージメント」という言葉を考えました。これは「道徳的に絆を結ぶ」という意味です。ただ、日本人には日本語で伝えた方がイメージしやすいと考えて、「絆徳」という言葉で発信しています。
ラーニングエッジ株式会社 代表取締役社長・清水康一朗氏
売上アップや集客、組織づくりなど悩みを抱える経営者にプログラムを提供
ラーニングエッジが提供する経営スクールの特徴を教えてください。
柱となるのは、「MBS(Management of BANTOK School)」という経営スクールで、絆徳経営に基づいた5つのプログラムを提供しています。MBS1がマーケティング基礎、MBS 2がマネジメント基礎、MBS 3がリーダーシップ基礎、MBS 4がリーダーシップ実践、MBS 5がマネジメント実践といった構成で、各3日間です。
スクールの形式は、対面またはオンライン、ハイブリッドなどプログラムの特性によって変えており、複数日程で開催するので都合のよいタイミングで参加していただくことができます。
受講者は、どんな方が多いのでしょうか。
1つのプログラムには、150~400人ほどが参加します。講義を一方的に聞く座学ではなく、チームで売り上げを競ったり、会社のキャッチコピーを考えて、参加者同士で発表して反応を見たりと、グループワークで受講者同士のコミュニケーションが活発なのも当スクールの特徴です。業界、業種、年齢層のまったく違う人たちに出会えることが楽しみで参加する、というリピーターの方もおられます。
受講者の半数近くが中小企業の経営者です。経営者はまず、集客や売上アップという課題に直面します。それらをある程度解決すると、今度は人についての悩みが大きくなります。特に、社員数が30人を超えると、組織づくりが難しくなっていきます。受講者は、「離職率が高い」「優秀な人材を採用できない」といった、組織づくりに悩みを抱える社員数20~50人くらいの会社の経営者が多いですね。
経営者の次に多いのが、中小企業の幹部層です。まず経営者が受講され、次に従業員が受講される例や、経営者が従業員と一緒に受講される例も多いですね。そのほか、個人事業主や弁護士、中小企業診断士、社労士、税理士といった士業の方、研修講師をされている方などもいます。
個人事業主は集客もプロモーションも1人でしなければなりません。SNSやメルマガの発信をしたいけれど、なかなか手が回らないと悩んでいます。また、相談に乗ってもらえる人がほしい、仲間を見つけたいなど、ネットワークを求めて来られる方も多くいます。
ドクターが全体の2割ほどいるのも当スクールの特徴です。ドクターの皆さんは、医療の専門知識は豊富でも、経営やマーケティング、集客については学んだ経験のない方がほとんどです。そのため、スタッフをうまくマネジメントできず、看護師や事務スタッフがすぐに辞めてしまうといった悩みを抱えられていることが多いですね。
絆徳経営スクールの様子
スクールに参加された方の事例を紹介いただけますか?
あるプライム市場上場のコンサルティング会社の現社長は、当スクールの受講生でした。受講した当初、彼の役職はまだリーダーでしたが、受講後に顧客である経営者と絆をつくるための業種別社内勉強会を立ち上げて売り上げを大きく伸ばし、その功績が認められ社長にまでなりました。
また、ある飲食店では、コロナ禍での人手不足解消や、店員と顧客の接触を減らすことを目的に、テーブルにお客様が自由に注げるサワーの蛇口を取り付けて飲み放題にしました。コロナ禍であっても外食の場でコミュニケーションをとりたいというニーズに刺さり、これがたちまち大人気となって爆発的に売り上げが伸びました。
これらに共通することは、顧客が喜ぶことをしたということです。もちろん、絆徳経営を実践したからといって、必ず成功するということではありませんが、当スクールでは陥りがちな失敗に対しても丁寧にフォローアップを行っています。
「集客」や「組織づくり」、「売上アップ」に悩んでいる、経営者の方々にメッセージをお願いします。
私たちは、本来幸せになるために働いているはずなのに、売り上げや利益など、数字を求めるがゆえに苦しくなる働き方をせざるを得ない状況があるのではないでしょうか。絆徳経営を実践すると、絆を大切にした経営になるので働く幸せを取り戻すことができ、業績が上がるだけでなく会社の雰囲気が非常によくなります。
きれいごとだと思われるかもしれませんが、今はきれいごとが経済合理性を生む時代になったと、私は考えています。
私自身、以前は経営についてまったく知識がなく、多くの先輩経営者に教えていただきました。解くまではとても難しいものですが、一度解き方が分かれば簡単に解けるようになる知恵の輪と、経営も同じです。だからノウハウや知識を持っている人のコミュニティに参加することが重要なのです。「絆徳経営スクール」には、多くの先輩経営者がいますし、知恵の輪を解くための実践的なノウハウをたくさん学ぶことができます。経営者ご本人はもちろん、従業員の方に受講いただくことでも事業の成長に繋がる内容になっていますし、無料のセミナーもありますので、ぜひ気軽にチェックしてみていただけると嬉しいです。
「MBS(Management of BANTOK School)」の受講には、特典のご用意があるアメリカン・エキスプレスのビジネス・カードをご利用ください。
■プロフィール
清水康一朗(しみず・こういちろう)
ラーニングエッジ株式会社 代表取締役社長
「セミナーズ」総合プロデューサー
「教育を通じて、精神的にも経済的にも豊かな日本を作り上げたい」という想いから、業界最大級のセミナーポータルサイト「セミナーズ」を立ち上げ、経営教育の流通に尽力。大企業から中小企業まで、5万社以上の経営支援実績がある。鮎川義介氏などの日本的経営の研究のみならず、アンソニーロビンズ日本事務局長、ブライアントレーシージャパン株式会社の代表取締役会長、ジェイエイブラハムジャパン株式会社の代表取締役会長、ドラッカー学会推進委員などを歴任。「絆徳経営」「円形欲求モデル」「W-PDCA」など数多くの経営理論を提唱し、日本人の経済教育、歴史教育、道徳教育をライフワークとして力を注いでいる。世界トップクラスの外国人講師を招いたビジネスセミナーでは日本最大規模のイベントを開催。Forbes JAPANオフィシャルコラムニスト。
ラーニングエッジ株式会社(外部リンクに移動します)
■スタッフクレジット
取材・文:尾越まり恵 編集:日経BPコンサルティング