「グリーンウォッシング(グリーンウォッシュ)」とは?
「グリーンウォッシング」とは「欠点を隠すこと」を意味する「ホワイトウォッシング」と「環境(グリーン)」をかけあわせた言葉だ。企業が自社製品や事業は「環境に配慮している」と謳っているにもかかわらず、実態が伴っていないことを指す。
グリーンウォッシングという言葉は、1980年代からすでに使われてきた。米メディア「ビジネス・ニュース・デイリー」が2024年2月に掲載した記事(外部サイトに移動します)によれば、「タオルを節約しよう」と呼びかけるキャンペーンを展開したホテルに対する批判として、環境保護活動家のジェイ・ウェスターベルトが用いたのが最初だとされる。
その後、石油企業や化学企業を中心に、環境保護活動を過度に強調する広告を打ち出していながらも、実際には環境破壊を起こす活動に関与していた企業が大きな批判にさらされた。
前出のビジネス・ニュース・デイリーの記事では、米国の決済サービス企業サイトライン・ペイメント社副社長のフィリップ・ビアの指摘が紹介されている。
「グリーンウォッシングは悪意のある計画によって引き起こされることは稀で、たいていは過剰な熱狂の結果です」
マーケティング担当者は、サステナビリティを指向する消費者の関心を惹くために自社の商品を誇張して伝えがちだと、ビアは指摘する。
避けるべき6種のグリーンウォッシング
英国のシンクタンク、プラネット・トラッカーは、2023年の報告書(外部サイトに移動します)でグリーンウォッシングのタイプを6つに分けて解説している。
1. グリーンクラウディング
企業連盟などを組成して気候変動対策を目標に掲げるものの、行動が伴っておらず、透明性のある情報が報告書にも記載されていないこと。投資家やメディアの目を欺きやすく、特に巧妙な手段だと指摘されている。
2. グリーンライティング
企業の環境破壊につながる行為から注意を逸らすために、自社事業や製品の環境にやさしい特徴にだけ焦点を当てること。
3. グリーンシフティング
企業が環境問題は消費者に問題があるとほのめかし、責任転嫁すること。自社の事業が環境に与える負荷を認識しているにもかかわらず、顧客とのコミュニケーションにおいてはそれを想起させる言葉(たとえば「化石燃料」など)を使わずに、消費者の問題だけを主に語るなどの行為がこれに該当する。
4. グリーンラベリング
「グリーン」「サステナブル」「自然由来」「ナチュラル」「バイオ」など定義が不明確な用語をマーケティングにおいて使用すること。消費者が製品および製造企業が環境負担をかけていないと誤認する可能性がある。
5. グリーンリンシング
企業がESG目標を掲げながらも期限前になると目標値を変更すること。
6. グリーンハッシング
環境への取り組みに関する自社の取り組みの公開を控えること。自社の取り組みを公表することでグリーンウォッシングだと批判されるリスクを抑えたり、規制機関の監視を免れたりする目的で講じられる。開示される情報が少ないため投資家や消費者が正しい判断を下せない可能性がある。
企業は今後、上記の6項目に注意しながら自社のサステナビリティへの道筋を明示し、社会的責任を果たす必要に迫られるだろう。
グリーンウォッシングかどうか疑いはじめた消費者たち
環境問題への意識が高い消費者が増えたことから、企業は誤ったメッセージを発することによって顧客離れを起こすばかりか、訴訟に直面するリスクすらある。
実際、広告などでサステナビリティを全面に打ち出す企業は増えたものの、今日の消費者はそれらに懐疑的だ。米環境テック企業グリーンプリントが実施した調査(外部サイトに移動します)では、「ほとんどの米国人が環境に配慮しているとの企業の主張に疑問を抱いており、53%はまったく信じないか、ほとんど信じていない」ことが明らかになった。
同調査では、「米国人の64%は持続可能な製品にもっとお金を払ってもいいと考えているが、うち74%は適切な見分け方がわからない」との回答結果も出た。消費者の「サステナブルな消費をしたい」というニーズに対して、企業が判断材料を提供できていないという問題点が浮き彫りになっている。
重いグリーンウォッシングの代償
ベルギーのメディア「ユーロニュース」が2024年3月に掲載した記事(外部サイトに移動します)では、英国内で同国の競争・市場庁やEUの消費者保護法の施行が強化されることで、英国の大企業のほぼ半数が違反する可能性があると報じられている。
違反企業は世界売上高の10分の1の罰金が課される可能性もあり、グリーンウォッシングの代償は非常に重い。同記事では、EU内でグリーンクレーム指令案が可決されたことも報じられている。これにより、欧州市場で環境保全に関わる主張を盛り込む際は独立した第三者機関の認証が必要になる。
企業のESG関連の主張内容が適切かを調査する英国のプラットフォーム企業コンペア・エシックスは、今後数年内に、グリーンウォッシングに対する罰金が増加すると予想する。同社CEOのアビー・モリスは次のように語る。
「もはや規制当局が提示するチェックリストをもとに考えるといった単純なことではありません。環境配慮を謳うすべての広告やパッケージは公開前に確認される必要があります」
しかしながらモリスは、それを怠ることのリスクを多くの経営層が見逃していると警告する。
グリーンウォッシングを避けるためには
意図せぬグリーンウォッシングを避けるべきにはどうすればいいのか。冒頭のビジネス・ニュース・デイリーの記事(外部サイトに移動します)ではいくつかのアドバイスが提示されている。
まずは、曖昧な用語の使用を避けることが挙げられる。「エコフレンドリー」「ナチュラル」「グリーン」といった言葉を無闇に製品のパッケージや広告に記載するのは避けるべきだ。自社の製品が環境にやさしいものであるかのように誤認させる加工画像も同様に避けるべきである。
自社の商品がいかに環境負荷を低減しているかを示すためには、具体的な測定単位を用いることが重要だ。たとえば「オーガニックコットンを使用」ではなく、「オーガニックコットンを〇〇%使用」といった表記が適切だと考えられる。
さらに重要なのは第三者団体から認証を受け、環境への負荷を低減していることを示すデータをウェブサイトで開示することだ。サプライチェーン全体でサステナビリティを推し進めることや、その取り組みの目標や進捗状況を開示するなど、透明性の担保も強く求められる。マーケティング担当者へのグリーンマーケティングに関する教育も欠かせないだろう。
サステナビリティへの機運は日本企業のあいだでも高まるなか、グリーンウォッシュに陥らない適切なマーケティングはグローバル市場で生き残るうえでの必須の戦略となるだろう。
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■スタッフクレジット
文・編集:クーリエ・ジャポン(講談社)
写真:Getty Images