監修者プロフィール:
末永 寛(すえなが・ひろし)
税理士
一般企業における経理事務を約25年経験したのち、大手税理士法人勤務を経て税理士事務所を開業。フリーランス・中小企業専門の税理士として、税務業務のみならず、将来の企業運営も含めた経営サポート業務を提供。また、近年の電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も含めたITツール導入にも積極的に導入サポートを行っている。
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【目次】
資金調達とは会社を経営するために必要な運転資金を集めること
資金調達の方法
資金調達を成功させるポイント
資金調達のリスク
資金調達のまとめ
資金調達とは会社を経営するために必要な運転資金を集めること
資金調達は、起業するため、会社を成長させ持続的な運営を支えるために、必要な資金を得る活動を指します。資金調達を行うのは、新規事業を立ち上げたり、運転資金を確保したり、設備への投資や企業買収などを通して会社の経営規模を拡大するときなどです。
資金調達の目的
資金調達の主な目的は、会社の「存続」や「発展」です。会社経営ではお金の流れを管理し、入るお金と出ていくお金のバランスを保つ必要があります。一般的に入金と支払いにはタイムラグがあるため、日々の支出をまかなう運転資金の確保は不可欠です。
加えて、会社の経営には成長や発展も欠かせません。事業拡大や設備投資をする際には、初期費用をまかなえる資金調達方法を選ぶ必要があります。
資金調達の方法
新規事業の立ち上げや事業を拡大する場合、多額の資金が必要になることが多いです。適切な資金調達方法を選ぶことが、リスクを最小限に抑えることにつながるでしょう。主な資金調達の方法について解説します。
エクイティファイナンス(出資)
エクイティファイナンスとは、外部に出資を募って投資してもらう方法です。エクイティファイナンス(Equity Finance)の「Equity」とは株式という意味です。株式の発行によって資本を増やし(増資)、資金調達を行う方法です。第三者割当増資、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタル(VC)、クラウドファンディングなどがこれにあたります。
第三者割当増資
第三者割当増資では、新しく発行した株式を第三者に売却することで資金を調達します。売買によって得た資金のため返済義務がなく、純粋に自己資本を強化できるのがメリットです。一方で、株主に対して継続的に配当金を支払う必要があることや、多くの株式を購入された場合には会社経営の自由度を損なう可能性がデメリットとなります。
エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、スタートアップ企業や、起業前の会社に対して出資する個人投資家です。エンジェル投資家を通して資金調達をするメリットとしては、出資がスピーディーで、経営に関するアドバイスが得られる点があげられます。ただし、あくまでも投資が受けられるのは、投資家目線で成長が見込まれた場合のみであり、多額の出資を得ることは難しいでしょう。
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ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタル(VC)とは、成長が期待されるベンチャー企業やスタートアップ企業といった未上場の企業への投資を専門とする投資会社です。出資の際に未公開株式を取得し、企業が株式を公開(上場)した際には、株式を売却するなどして利益(キャピタルゲイン)を得るのが一般的です。エンジェル投資家と比べると多額の資金を調達することが可能であること、広い市場目線から成長するための実際的なアドバイスが得られる点がメリットだといえます。一方で、ベンチャーキャピタルは利益に重きを置いた判断をするため、より短期間での実績と結果が求められるでしょう。
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クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ集める資金調達方法です。出資元は個人となります。手軽さ、拡散性の高さが特徴で、テストマーケティングにも使えるといわれています。事前にファン(支持者)を集めた状態でビジネスをスタートできる点がメリットとなるでしょう。一方で、共感を得られなければ思うように資金は集めることはできないでしょう。
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デッドファイナンス(負債)
デッドファイナンスとは、借金や負債による資金の調達方法です。デットファイナンス(Debt Finance)の「Debt」とは負債という意味です。負債には買掛金や支払手形などの仕入れ債務を増やす、融資を受ける、社債を発行するなどの方法があります。
デッドファイナンスのメリットは、資金の貸し手による経営介入がなく、支払利息を損金として計上できる「レバレッジ効果」があることだといえ、一方で、元本や利息の返済義務が発生するため、支払い分のキャッシュフローが圧迫されてしまうことはデメリットといえるでしょう。
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出資と融資の違い
出資も融資も資金調達の方法ですが、違いは資金を得るプロセスにあります。出資とは文字通り、必要な資金を出してもらうことで、返済の必要がありません。一方、融資は第三者から資金を借り入れて得る方法であるため、返済しなければなりません。
アセットファイナンス(資産売却)
アセットファイナンスとは、自社が保有している資産を使って資金を調達する方法です。アセットファイナンス(Asset Finance)の「Asset」とは資産という意味です。固定資産、売掛金(債権)、有価証券のほか、在庫の売却をするファクタリング、リースバックなどもアセットファイナンスに該当します。
買い手さえ見つかれば、スムーズに資金調達することが可能ですが、資産に価値がないとみなされる場合は、計画通りに資金が調達できない可能性があるでしょう。また、資産を売却する際には手数料の発生に留意が必要です。
補助金と助成金
国や一部の自治体が実施している補助金や助成金制度を活用して、資金調達をする方法もあります。メリットは、要件を満たせば返済不要で資金を調達できることです。補助金は、あらかじめ総予算や募集期間が定められ、募集期間内であっても予算上限に達すると締め切られます。また、審査は厳しく、期間を要するため、実際に資金を手にできるまでに時間がかかる点に注意しましょう。
資金調達を成功させるポイント
資金調達前にやっておくべきこと、最適な方法の選び方などのポイントを解説します。
ビジネスプランの明確化
適切な資金調達の方法を選ぶために、事前にビジネスプランを明確にしておきましょう。
・資金調達をする目的(なぜ資金が必要なのか)
・調達した資金の使われ方
・資金調達によってどのような結果になるのか
・どのようなリターンが期待できるのか
こうした点は、資金調達の実務に移行した際、資金調達元となる投資家や金融機関にわかりやすく説明するためには不可欠です。市場分析や財務計画に基づいた現実的なプランを具体的かつ包括的にまとめ、説得力のあるものに整えておきましょう。
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自社の規模やフェーズに最適な方法の選定
資金調達の方法は、会社の成長具合や事業規模によって必要となる資金額や求められるスピード感が異なります。そのため自社の分析、現実的な目標設定、明確なビジネスプランを元に自社に合った方法を選ぶ必要があります。
たとえば、将来性や信頼性の面で不透明な要素が多い起業前やスタートアップにとって、個人の資産や証券を投資信託や金融資産に投資する個人投資家や、ベンチャーキャピタルからの出資は難しい場合もあります。政府系金融機関の融資申請やクラウドファンディングを足掛かりにすることを検討しましょう。
業績を拡大している非上場の中小企業で、将来的な上場やM&Aを見据えている場合は、 これまでの実績や経営ノウハウを基盤とした成長計画を提示しやすいため、個人資産を金融資産に投資する個人投資家やベンチャーキャピタルからの出資を期待できるでしょう。
ただし、業績が悪化している際は、赤字補填のために資金調達をしていると判断され、個人投資家やベンチャーキャピタルからの出資を受けられない可能性もあります。業績の悪化が見られる場合は、アセットファイナンス、補助金や助成金の利用、政府系金融機関からの融資などの利用を検討してみてください。
資金調達のリスク
どのような資金調達の方法を選択した場合でも、事前に起こり得るリスクを認識し備えておく必要があります。特に注意が必要なのは、返済や支払いが必要になる資金調達方法を選んだ場合の、キャッシュフロー(お金の流れ)に悪影響が出て資金繰りをより悪化させてしまうケースです。
資金調達後に業績が悪化すれば、返済が困難になり倒産につながる可能性もあるでしょう。株式発行による資金調達への依存度が高い場合には、経営権が希薄化し、自由な経営が難しくなる可能性も考えられます。資金調達をする際は、現実的な目標と返済計画、多角的な経営戦略を立て、最も効果的なタイミングで資金調達をすることが大切です。
資金調達のまとめ
以下に、資金調達についての要点をまとめます。
・資金調達とは起業や新規事業の立ち上げ、運転資金の確保や経営の立て直しに必要な資金を集めること
・資金調達にはエクイティファイナンス(出資)、デッドファイナンス(負債)、アセットファイナンス(資産売却)に加え、補助金や助成金の利用という方法がある
・資金調達を成功させるポイントは、自社と市場分析に基づいたビジネスプランを立て、事業規模やフェーズに合わせて適切な方法を選ぶこと
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