変化の時代ゆえに複雑化し、ひっ迫する経理関連業務
多岐にわたる法令対応やDXの推進は、多くの企業の経理関連業務に影響を与えています。クライアントの方々と向き合う中で感じる、現場の課題や状況について教えてください。
私たちGrowthPartners税理士法人は、さまざまな業種業態のビジネスをサポートしています。日々の業務を通じて実感するのは、多くの企業の経理関連部門が、変化するビジネス環境への適応に迫られ、苦労している現状です。もちろん企業によって課題は異なりますが、大きく分けて以下の2つが負担になっているケースが多いと思います。
GrowthPartners税理士法人 代表社員/代表取締役 山岸秀地氏
1つ目は、税制改正の頻度の高さと、その複雑さへの対応です。たとえば、消費税法や所得税法、法人税法などは毎年のように改正されており、多くの企業の経理部門では、その一つひとつに対応することにとても苦労されています。また、2024年から電子取引のデータ保存が完全義務化された電子帳簿保存法への対応も同様です。同法では、生産性の向上を目的にさまざまな要件緩和も行われていますが、やはり以前のデータ管理方法とは大きな違いがあります。さらに、グローバル展開する企業の場合、国際会計基準の改正に対応していくことも求められます。もちろん、インボイス制度が経理部門の業務に与える影響も大きいです。適格請求書の発行や確認、保存のためには、ITツールを活用した新たなチェック体制の構築なども必要です。その運用コストを含めて、経理部門の負担は増しています。
2つ目は、デジタル化に対応するための業務負担の増加です。経理関連業務のデジタル化は年々進んでおり、AIやRPA(Robotic Process Automation)を活用したソフトウェアやシステムが次々と登場しています。たとえば、手作業では膨大な時間がかかってしまうインボイス登録番号のチェックなども、デジタルツールを活用することで大幅な負担軽減が可能です。また、会計、販売、物流、生産、人事などを一元管理できるERP(Enterprise Resources Planning)パッケージも普及しています。ただし、これらの新しいソフトウェアやシステムを使いこなすためには、一定のITリテラシーやスキルの習得が必要です。馴染みのないシステムに戸惑ったり、使用しているさまざまなシステム間の連携に苦労したりと、業務効率化のためとはいえ、経理担当者の工数が想像以上にかかってしまっていることも多いのが現状だと感じています。
ポイントとなるのは、“見える化”
経理をはじめ、バックオフィス業務の効率化をスムーズに進めるためのコツのようなものはあるのでしょうか。
まず、事業全体を可視化することが重要でしょう。そのためには、各業務のフローチャートやプロセスマップを作成し、それぞれの部門のメンバーとコミュニケーションを取りながら、自社の事業の全体像や課題を把握する。その上で前述のERPパッケージなどを活用することが、バックオフィス業務の効率化につながる一つの道筋だと思います。また、プロジェクト管理ツールや勤怠管理システムなどを通じて、社員一人ひとりのパフォーマンスを把握し、分析することも大切なポイントです。デジタルツールを通じて、ヒト、モノ、カネの動きを見える化することは、バックオフィス業務効率化はもちろん、経営における意思決定のスピードや、各部門で働く社員の満足度向上にもつながると思います。
実際には、バックオフィスに割く人的リソースをどの程度減らせるものなのでしょうか。
事業規模や業種によって異なるので一概には言えませんが、たとえば私たちGrowthPartnersグループは現在6社で構成されていて、70名ほどのメンバーがいます。かつてのような紙ベースでの会計処理を行った場合、経理部門だけでも3、4名は必要な規模になると思います。私たちはデジタルツールを最大限に活用し業務フローなどの見直しを行いましたので、結果として、現在は1名の経理担当者で十分に回る体制を構築することができています。あるクライアント企業様の事例を紹介すると、「もともと5名で行っていた経理業務を2名で回せるようになった」というケースもありました。
ただ、私たちは大前提として、DX化はバックオフィスの人員整理のためだけではなく、企業としての可能性を広げるために行うべきだと考えています。経理部門のスタッフは経営の中枢にまで精通するキーパーソンです。さまざまなツールを活用することで彼らの日々の業務負荷を軽減し、これまで手を付けられなかった財務分析や金融機関との関係構築などに時間を割けるようになれば、企業としてさらに飛躍できるのではないでしょうか。
取り組みやすくて実感のある業務効率化、ETCカードの活用
ETCカードの活用は業務効率化に貢献するものでしょうか。アメリカン・エキスプレスのビジネス・カードには、1枚につき20枚まで年会費、手数料無料でETCカードを発行できるという特典があります。
私自身もアメリカン・エキスプレスのビジネス・カードを使っていますが、さまざまなクレジットカードの中でも、手数料無料で20枚ものETCカードを発行できる特典は大変珍しいと思います。
経営の観点では、発行手数料を抑えられることがまず大きな利点です。加えて業務効率化の観点から申し上げると、1枚のビジネス・カードに全てのETCカードの請求を紐づけられることも、経理業務の効率化につながります。アメリカン・エキスプレスのビジネス・カードは、「弥生会計」や「freee」、「マネーフォワード」などといったクラウド会計ソフトとの連携ができるため、各種の会計処理を自動で正確に実行できることも大きなポイントだと思います。API接続が可能なクラウド会計ソフトであれば、安全にデータ連携ができるのも利点といえるでしょう。
ETCカードを活用すること自体のメリットも教えてください。
クライアントの方々にもよくお話ししているのですが、ETCカードの活用には主に以下の5点のメリットがあります。
1. 時間の節約
現金車とETC車では、料金所の通行に要する時間が明らかに違います。一回の差はわずか数十秒かもしれませんが、年間でみると大きな差が生まれます。
2. 交通費の削減
ETC割引を活用することで、交通費を軽減することができます。
3. 管理コストの低減
ETCの通行記録はデータ上で管理されているため、ドライバーも経理スタッフも紙の領収書を保管、チェックする必要がありません。現金管理のストレスが軽減されることは、従業員の満足感にもつながるポイントです。
4. 透明性の確保
通行区間や通行時間など使用状況が明確になり、誤った申告や業務外の利用を防ぐことができます。
5. 通行ルート等の分析
ETCの利用履歴を分析することで、より効率的な営業ルートや時間帯について検討しやすくなります。
アメックスのビジネス・カードでETCカードを発行することで、この5つだけでなくさらにメリットが増えるということですね。
そうですね。よりメリットを実感しやすくなると思います。それに、カードに付帯されているサービスなので、導入しやすいのではないでしょうか。
最後に、業務効率化に取り組む経営者の方々に向けてメッセージをお願いします。
さまざまなツールを活用した業務効率化は、企業の持続的な成長や競争力の強化にとって欠かせない要素になっています。新しいツールの導入には、時間や手間がかかります。しかし、今しっかりとこの点に対応することができれば、企業としての可能性はさらに広がっていくはずです。これまで多くのクライアントの方々と向き合ってきましたが、経営者の強い意志があれば、事業のDXは予想以上のスピードで進みます。変化の大きな時代だからこそ、一つひとつできることから着実に、業務効率化に取り組んでほしいです。
■プロフィール
山岸秀地(やまぎし・しゅうじ)
1989年、埼玉県生まれ。明治大学経営学部を卒業後、税理士試験に合格。大手税理士法人など3社を経て、2016年に「GrowthPartners会計事務所」を開業。2018年「GrowthPartners税理士法人」に組織再編し、現在約800社ものクライアントを抱える。「GrowthPartners」グループ6社には、税理士法人のほか、社会保険労務士法人、バックオフィス業務支援企業などがあり、「お客様と共に。企業の成長を支えるパートナー」をビジョンに掲げ、経営全般を支援する活動を行っている。
■スタッフクレジット
取材・文:吉原徹 編集:日経BPコンサルティング