ディップ株式会社が創業した1997年から現在に至るまで、求人業界はどのように変化してきましたか?
紙からWEBへ、という変化が何よりも大きかったですね。20年前の求人メディアというと、メインは駅などに置かれているフリーペーパー。毎週新しいものが発行され、それを見た求職者の方が応募のための電話をかける、という形が一般的でした。これがWEB化されたことによって、求職者がいつでも最新の情報を入手できるようになった。さらに、欲しい情報を自ら検索するということが当たり前になったんです。
このデジタル化の流れは、スマートフォンが登場したことでさらに加速。スマホによる求人情報の閲覧が一般的になったことで、ウェブサイトからアプリへの移行が進みました。アプリで会員登録をしてもらい、求職者にプッシュ通信で情報を送れるようになったという点でも、求人メディアのあり方が大きく変わったといえます。
2000年にスタートした「はたらこねっと」は、最初からデジタルのメディアだったとお聞きしました。
そうなんです。完全にまだ紙が主流だった時代に、先を見据えてデジタルでスタートしました。「はたらこねっと」は、非正規社員雇用、主に派遣社員の求人情報を掲載したメディアです。当時、正社員とパート・アルバイトの求人メディアは既存媒体がいろいろあったんですが、派遣ジャンルにフォーカスしたものは少なかった。そこで、そのニーズに応えるために「はたらこねっと」を立ち上げたという流れです。
ディップというと、「バイトル」のイメージも強いです。
パート・アルバイトの方向けの求人情報サイトとして始めたのが、「バイトル」です。その後、「バイトルNEXT」というメディアもスタートしたのですが、こちらはそのネーミング通り「アルバイトの次のステージ」。正社員として採用されることを目指す、現在パート・アルバイトで働いている方向けのサービスです。非正規から正規雇用への転職を支援するメディア、これも当時はほとんど見られませんでした。
また、採用難業種にターゲットを絞った「バイトルPRO」というメディアも運営しています。医療、介護、保育といった、比較的人材確保が難しいといわれる分野で、スキルのある方の求職活動をしっかりと支援していこうというサービスです。
いまの時代、採用活動において求められていることは何だと考えますか?
膨大な量の情報があふれているので、求職者が欲しい情報をいかに的確に届けられるかが重要です。そのために、我々もそれぞれの求人メディアをターゲットごとにセグメント化しています。そうすることで、間違った採用、つまり「雇用と求職のアンマッチ」を避けることができるんです。
情報を伝える手段でいえば、写真だけでなく動画掲載サービスも10年前から提供していて、どんな人がどんな風に働いているかという職場の様子や、採用担当者のメッセージなどを公開しています。さらに独自のサービスとしては、職場の体験・見学の実施という機能も備えています。
採用前に、求職者が実際に仕事現場を訪れるということですか?
はい。勤務先を数時間訪問して、職場の雰囲気を実際に確かめられる機会をつくっています。採用前なのでお給料は出ませんが、賄いごはんを出してくれたりと、実際の労働環境をよりリアルに体験してもらうための仕掛けを用意される企業さんもいらっしゃいます。
でも、発信する情報量をやみくもに増やせばいいかというとそうではない。文字なのか、写真なのか、動画なのか、実際に見てもらった方がいいのか。そこをジャッジしたうえで、どんなアウトプットをするかの判断が非常に重要になってくるんです。
企業からしても、数名の採用枠に対して何百人もの応募がくることよりも、求めている人材が確実に採用できるという結果が大切。そのマッチングをいかに的確におこなえるかということこそが、私たちのサービスの存在意義だと考えています。
スタッフ数の少ない中小企業では、採用活動にそこまで人員と時間を割けないという場合がほとんどだと思います。
そういったニーズに応えるべく始めたのが、2019年から展開しているDX事業です。DXなんてうちには関係ないと言われる中小企業経営者の方も多いんですが、スモールビジネスでこそ、積極的にデジタルを活用していくべきなんです。
単純作業やルーチン業務などの仕事をデジタルで処理する、「コボット」というサービスを展開しているんですが、たとえば「面接コボット」では、応募受付から面接日時の設定まで、ロボットが自動で対応してくれます。ある飲食店を展開する企業さんでは、これまで応募者対応をひとりのスタッフで担当していたため、せっかく応募があっても初動の遅れから取り逃がしが多く発生していました。ところが、面接コボットを導入したことで、面接設定率が89%にまでアップしたんです。
人間が対応する必要のない業務や、むしろデジタルに任せた方が早いうえに間違いが少ない作業も実は多い。そういうものをDXすることで、もっとクリエイティブな時間の使い方が可能になるんです。
何をどう伝えるか、よりコンテンツに時間がかけられるということですね。
2020年からの2年間において、非正規雇用の募集は減っていました。しかし、それがここ数ヶ月で経済が再び動き出して一転、人材不足の予兆が出ています。さらに正規雇用市場に関していうと、実は昨今の状況でもずっと堅調をキープしていたんです。というのも、世界的な非常事態になって働き方を見直す人がすごく増えた。待遇がほぼ変わらない仕事ならテレワークが許可されるなどより柔軟な働き方ができる職場へ移ろう、という考え方に社会全体がシフトしてきているんです。
企業側からすれば、優秀な人材がマーケットに出ているまたとないチャンス。中小企業でもいまの時代に即した労働環境を整えることで、より求めている形の採用活動がおこなえる可能性が高いといえます。
ひとくちに求人・採用といっても、それは会社全体のビジョンを考えることとイコール。私たちはそういった経営戦略から関わっていけるようなサービス提供をしています。採用活動というコミュニケーションにおけるコンサルティングとして、ぜひご活用ください。
dipをはじめ、採用をサポートするサービスのお支払いにもアメリカン・エキスプレスのビジネス・カードがご利用いただけます。
■ プロフィール
西谷 龍二
ディップ株式会社
企画・統括本部 戦略推進統括部 営業企画部
セールスマーケティング課
■スタッフクレジット
記事:中村真紀 編集:芝山 一(ADDIX)