人の往来が制限された昨今、eコマース市場にはどのような変化がありましたか?
石堂:世界的にステイホーム状態が続いたことで、eコマースでの売り上げは劇的な伸びを記録しました。2020年度の全消費活動における割合は、アメリカで27%、ヨーロッパで31%となり、前年比で約10%も増加。2019年度までと比較して、約7倍のスピードで市場規模が急成長したことになるんです。
その中でも特に「越境ECビジネス」が拡大していると聞きました。
石堂:越境ECとは、国境を越えて取引されるeコマースのことをいいます。DHLが2020年度に運搬した越境ECの貨物は、全世界で見ると前年比でじつに40%増。この背景には、旅客機の貨物室に頼らず自社機を所有しているインテグレーターとしての強み、さらには世界的な物流が滞った状況だからこそ臨時便を飛ばしたという決断が、大きく影響したと考えています。
日本から海外に向けての販売についてはいかがでしょうか?
石堂:グローバルに比べると、まだまだマーケット規模が小さいのが現状です。参入障壁としてまず挙げられるのが、日本語という独自の言語文化。さらに、国内だけで1億3000万人の市場が存在し、商品としても高品質なものがそろっている。つまり、一国でひとつのマーケットとして完結していたという点が要因だと思います。
しかし、昨年より続く不安定な状況だけでなく、人口減、少子高齢化、デフレなどのさまざまな社会的変化を考えると、よりビジネスチャンスの見い出せる海外マーケットへと視野を広げる必要性は大いにあると思います。
言語以外で、新規参入事業者が不安に思うポイントはなんですか?
石堂:国境を越えての配送となったとき、皆さんがもっとも懸念されるのは「きちんと届くか」という点。DHLではその不安を払拭するべく、「オンデマンドデリバリー」、というサービスをご用意しています。
これは、荷受け人の方の連絡先を登録しておくことで配達予定日を事前にお知らせし、受け取り方法などのオプションをオンライン上で選択できるというもの。荷物の位置情報も常に確認していただくことができるので、販売者様への直接の問い合わせがぐっと減ったというお声もいただいています。
海外への販売となると、通関の方法や関税などを気にされる方も多いかと思います。
石堂:よく受けるご質問としては、通関業務に際して必要な書類は何か、関税はいくらかかるのか、そもそも輸出が禁止されている規制商品にあたっていないか、さらに梱包の方法や、返品になった場合の対応についてなどが多いです。
DHLでは、「ドア・ツー・ドア」という考え方をベースにしています。これは、物流に関してはすべてDHLが一貫して責任をもつというもの。たとえば通関であれば、日本を出る際の輸出申告と到着国でおこなう輸入申告、すべてDHL社内の通関士が担当します。
実際の越境ECの成功事例には、どのようなものがありますか?
石堂:日本製の包丁やデニム製品は、高品質で人気が高いです。あとはアニメやゲーム関連。トレーディングカードの中には、1枚数千万円で取り引きされるなんてものもあるんですよ。ただ、日本で売れ筋の商品がそのまま海外で売れるとも限らない。適切なマーケティングが重要になってきます。
マーケティングに関する相談にも乗ってもらえるのですか?
石堂:私たちの本業は物流ですが、越境ECはいわば“総合格闘技”。物流、マーケティング、翻訳、決済など、いろいろな企業がチームを組んでこそ成功できるビジネスなんです。企業同士の横のネットワークがありますので、ご相談いただければ最適なパートナーをご紹介させていただきます。
これからの越境ECは、どのような展開を見せるとお考えですか?
石堂:今日これまでお話してきたのは、基本的にB to Cマーケットについてでした。しかし、B to Bにも確実に越境ECの波が押し寄せてきています。
要は、これまで営業担当者に電話、FAX、メールなどで連絡をしたうえで仕入れていた業務用商材が、今後はクリックひとつで購入する形にシフトしていくだろうということなんです。
背景にはどのような要因があるのでしょうか?
石堂:近年ビジネスのメインプレイヤーとして存在感を見せつつあるのが、ミレニアル世代やY世代と呼ばれるデジタルネイティブたちです。彼らにとっては、誰とも直接的なコミュニケーションをとらずに、オンラインで買い物を完結させることが当たり前。そのため仕事においても、営業担当者とコンタクトを取るのが煩わしいと感じてしまうんですね。そのような購買活動の変化を受けて、越境ECでもB to Bプラットフォームの整備が急務になることは明らかです。
DHLでは、越境ECについてのトレーニングプログラムも社内で実施。全世界のDHLグループ内で成功事例の共有もおこなっています。B to C、B to Bにかかわらず、越境ECで困ったことがあれば、なんでも相談できる窓口。そんなふうに気軽に利用していただければと考えています。
DHLジャパン株式会社をはじめ、輸送・購買・在庫管理を簡略化をサポートするサービスのお支払いにアメリカン・エキスプレスのビジネス・カードがご利用いただけます。
■ プロフィール
石堂正
DHLジャパン株式会社
Eコマース・ビジネスデベロップメント スペシャリスト
■スタッフクレジット
記事:中村真紀 編集:芝山 一(ADDIX)