■監修者プロフィール
田中 卓也(たなか・たくや)
税理士、CFP®
中央大学商学部で学んだ後、東京都内の税理士事務所での勤務を経て、田中卓也税理士事務所を開業。記帳代行・税務相談・税務申告をはじめ、事業計画の作成やサポート等の経営相談、キャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・事業継承対策など、経営者や個人事業主のサポートを幅広く行う。そのほか、一生活者目線で、講師・執筆活動や講演活動にも取り組んでいる。
田中卓也税理士事務所(外部サイトに移動します)
【目次】
法人税とは法人の所得に対して課税される税金
法人税の課税対象となる法人の種類
法人税の税率と計算方法
法人に課される税金の種類
法人税の申告・納付方法
法人税のまとめ
法人税とは法人の所得に対して課税される税金
法人税とは、法人が事業活動によって得た所得に対して課税される税金です。法人税を納める義務のある法人とは、法人税法では国内に本店又は主たる事務所を有する内国法人と、内国法人以外の外国法人とに区分されます。中でも、内国法人には株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、医療法人といった登記を行った法人のほか、PTA、町内会やマンション管理組合といった登記を行っていない人格のない社団なども含まれます。ただし、人格のない社団であっても、法人税法の規定により収益事業から生じた所得に対して課税されます。一方、個人事業主などは法人ではないため法人税の課税対象にはなりません。
また、税金は課税する主体がどこにあるのかという考え方により、「国税」と「地方税」に区分されます。例えば、課税主体が国である税は「国税」といい、課税主体が地方自治体である税は「地方税」に分類されますが、法人税は課税主体が国であるので国税にあたります。
そのほかの税金の分類方法として、税を納める人と負担する人が同じ税金を「直接税」、税を納める人と負担する人が異なるものを「間接税」とする区分があり、法人税は納税者が国に直接納める直接税にあたります。したがって、納税者である法人みずからが収益を申告し、正しい税額を税務署に納めなくてはなりません。正しい税額を算出するには、課税所得がいくらなのかを計算する必要があります。
法人税の対象となる「課税所得」は、税法上の「所得」にあたり、以下の計算式で求められます。
<課税所得の計算式>
課税所得=益金(売上収入)-損金(売上原価、損失費用など)
「益金」とは、商品やサービスを販売したことによる売上収入や、不動産や土地、機械といった固定資産を譲渡したことによる収入などです。「損金」は、仕入費用のほか人件費などの支出になります。課税所得がマイナスになった場合は、法人税は課税されません。
ただし、注意が必要です。収益から費用と損失を差し引いた「利益」と益金から損金を差し引いた「課税所得」は同一になると混同されがちですが、課税所得は公平に課税することを目的としている一方、利益は企業の財政状態や経営成績を決算書に記載することを目的にしたものです。したがって、多くの場合は一致しません。
そのため、会計上の利益が赤字であったとしても、課税所得は黒字になることもあります。その場合は法人税を納めなければなりません。
実務上では、まず企業会計における「利益」が算定されていることを前提とし、そこに以下の4つの要素を加算・減算することによって求めることとなります。その4つの要素のうち加算項目とは「企業会計上は費用となるが、税務上は損金とはしないものを加算(損金不算入)」「企業会計上は収益とならないが、税務上は益金となるものは加算(益金算入)」の2点で、減算項目は「企業会計上は費用とならないが、税務上は損金となるものを減算(損金算入)」「企業会計上は収益となるが、税務上は益金とならないものは減算(益金不算入)」の2点です。
この4つの加算・減算項目のことを法人税法上、税務調整といいますが、まずは、企業会計における当期利益が算定されていることを前提として、この4つの加算・減算といった税務調整を行い、法人税における課税所得を求めることとなります。
法人税の課税対象となる法人の種類
法人は「営利目的の私法人」「非営利目的の私法人」「公法人」の3つに大きく分けられ、そこからさらに特性に応じて細かく分類されます。例えば、一般的によく知られている「株式会社」や「合同会社」は営利目的の私法人です。
営利目的の私法人の場合、すべての所得が課税対象となります。一方、非営利目的の私法人と公法人の場合は収益事業から生じた所得が課税対象となる法人と、法人税が課されない法人に分かれます。
以下に、法人税が課される法人と、収益事業に対して法人税が課される法人、法人税が課されない法人を整理して紹介します。
<法人税が課される法人>
・普通法人:株式会社、有限会社、合同会社、医療法人、一般社団法人、一般財団法人など
・協同組合等:農業協同組合、漁業協同組合、信用金庫、労働者協同組合など
<収益事業に対して法人税が課される法人>
・公益法人等:公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人など
・人格のない社団:マンション管理組合、各種研究会、同窓会、PTAなど
<法人税が課されない法人>
・公共法人:地方公共団体、金融公庫、国立大学法人、地方独立行政法人、日本中央競馬会、日本年金機構、日本放送協会など
法人税の税率と計算方法
法人が納める法人税と、個人事業主が納める所得税の最も大きな違いは、所得の計算方法と税率です。個人事業主は売上高から必要経費を差し引いた利益がそのまま事業所得になり、そこから所得控除を差引き、算出された課税所得に応じて税率が高くなる累進税率を掛け合わせて算出した所得税を納めます。
一方、法人税は、一部中小法人等を除き所得の大きさにかかわらず、税率が固定された比例税率を掛け合わせて算出されます。そのため、個人事業主の所得総額がある一定の金額を超える場合は、法人化して法人税に切り替えたほうが税負担を軽減できる可能性がありますが、他方で、社会保険に強制加入する、法人住民税の均等割が課税されるなどのデメリットもあるので、総合的に判断することが重要です。
国税庁「法人税の税率(外部サイトに移動します)」によれば、2023年11月現在の法人税の税率は、普通法人、一般社団法人等または人格のない社団等については23.20%です。ただし、資本金1億円以下の普通法人、および一般社団法人等または人格のない社団等の所得の金額のうち年800万円以下の金額については15%となっています。
法人税の計算方法
法人税は、課税所得金額に所定の税率を掛け合わせ、税額控除額を差し引くことで求められます。
<法人税の計算式>
法人税額=課税所得×税率-税額控除額
法人税の税額控除とは、法人税の計算の際、本来納めるべき法人税額から税額控除額を差し引くことをいいます。税額控除には、利息などの源泉徴収を防ぐ目的で行われる「所得税額控除」、外国で課税された税金が国内で二重課税されるのを防ぐ「外国税額控除」などがあり、法人が支払いを受ける利子等、配当等、給付補てん金、賞金などについて所得税法、租税特別措置法等によって規定されている所得税等の額が対象です。
ただし、配当などにかかる所得税の額には煩雑な決まりがあるほか、最近では「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」など、臨時的に設けられる控除もあるため、正確に処理するのは容易ではありません。ミスを防いで確実に控除を受けられるよう、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
法人に課される税金の種類
法人に課される税金には、法人税のほか「法人住民税」「法人事業税」「特別法人事業税・地方法人特別税」「消費税および地方消費税」があります。また、法人税、法人住民税、法人事業税の3つを合わせて「法人税等」と呼びます。ここからは、法人税以外の4つの税金について概要を解説しましょう。
法人住民税
法人住民税は、地域社会の構成員である法人が、事業所がある地方自治体に納める税金です。課税主体が都道府県にあるものを「都道府県民税」、課税主体が市区町村にあるものを「市町村民税」と呼び、それぞれ「法人税割」と「均等割」の2つがあります。
・法人税割
法人税額に法人税割の税率をかけて算出します。都道府県民税と市町村民税で税率が変わり、赤字の場合は課税されません。
<法人税割の税率>
都道府県民税…法人税額×1.0%
市町村民税…法人税額×6.0%
上記は標準税率です。例えば、東京都の場合では資本金の額、あるいは出資金の額が1億円を超え、かつ法人税額が年1,000万円を超える法人は、都道府県民税相当額2.0%、市町村民税相当額8.4%の合計10.4%の超過税率が課されます。
・均等割
均等割は、法人の資本金、事業所がある自治体、従業員数などによって税額が変わります。資本金額や従業員数が多いほど税額は高くなります。均等割は、所得の多少にかかわらず納付が必要です。
法人事業税
法人事業税は、事業を行う際に利用する公共サービスや施設にかかる費用を法人に負担してもらうために課される税金で、事業所がある都道府県に納付します。法人事業税は所得に法人事業税の税率をかけて算出されますが、法人が営む事業の種類や都道府県、規模などによって税率は変わり、付加価値割・資本割・所得割・収入割の4種類のいずれかが、あるいは所得割と付加価値割と資本割のすべてが課税されるといったように適用区分が定められています。
一方、所得割ひとつとってみても、東京都の場合では、年400万円以下の所得、年400万円を超え800万円以下の所得、年800万円を超える所得といったように所得の区分が細分化されて軽減税率が適用される法人もあります。法人の事業区分、法人の種類、資本金といった事業区分により、どのような法人事業税の税率が課されるのかを整理しておくことが重要です。
なお、法人事業税の場合も、法人住民税の税割と同様、標準税率と超過税率があるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
総務省「法人事業税(外部サイトに移動します)」に記載のとおり、資本金1億円以下の普通法人の場合、所得に対して以下の税率で課税され、翌期の費用として損金計上することができます。
<資本金1億円以下の普通法人の法人事業税率(所得割)>
・年400万円以下の所得…3.5%
・年400万円を超え年800万円以下の所得…5.3%
・年800万円を超える所得…7.0%
上記は標準税率です。例えば、東京都の場合では、普通法人であっても、資本金の額または出資金の額が1億円超か、あるいは年所得金額が2,500万円超、または年収入金額が2億円超の場合は超過税率が適用されます。
なお、法人事業税は事業を行う法人に納付義務がありますが、公益法人の公益事業などの所得には課税されません。つまり、公益法人等で、収益事業を行っていない、あるいは、人格のない社団や財団で収益事業を行っていなければ法人事業税は課せられることはありません。
特別法人事業税・地方法人特別税
特別法人事業税および地方法人特別税は、法人事業税の税率の引き下げ分を国税として分離させたものです。国税ではありますが、法人事業税とともに都道府県に申告・納付します。
消費税および地方消費税
消費税および地方消費税は、商品やサービスの提供を受けた消費者に広く公平に課される税金で、消費者が負担して事業者が納付する間接税です。消費税は国に納付する国税、地方消費税は都道府県や市区町村に納付する地方税で、国税が7.8%、地方税が2.2%の割合で同時に課税されます。
消費税の課税対象となるのは資本金が1,000万円以上の法人ですが、資本金1,000万円未満の法人であっても、課税売上が1,000万円を超えた場合はその翌々年度から課税対象となります。
また、前事業年度の上半期の課税売上および給与等の支払額が1,000万円を超えた場合はその翌年度から課税対象となります。
また、近年話題になっている消費税のインボイス制度ですが、インボイス制度における適格請求書発行事業者に登録すると、登録日以降、強制的に消費税の課税事業者になるので注意しましょう。
法人税の申告・納付方法
法人税は、決められた期間内に申告書と添付書類を所轄の税務署に提出して申告します。納付の方法は、「クレジットカード納付」、「現金納付」、「ダイレクト納付」、「インターネット納付」の4つから選ぶことができます。それぞれについて詳しく説明します。
なお、国税庁「延滞税の割合(外部サイトに移動します)」に記載のとおり、原則として1日の延滞でも以下の割合で延滞税が発生するため、注意しましょう。
<延滞税の割合>
・法定納期限の翌日から2ヶ月以内に納付する場合
原則年7.3%の延滞税率、あるいは延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い割合。2023年1月1日~2023年12月31日までの間で、納期限の翌日から2月を経過する日までの期間の割合は年2.4%とされています。
・2ヵ月を過ぎてから納付する場合
年14.6%の延滞税率、あるいは延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合。2023年1月1日~2023年12月31日までの間で、納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後の割合は年8.7%とされています。
クレジットカード納付
「国税クレジットカードお支払サイト(外部サイトに移動します)」経由で、クレジットカード納付ができます。ただし、決済手数料がかかるなど利用にあたっての注意事項があるため、納付の前にウェブサイトに記載されている内容をよく確認しましょう。
現金納付
金融機関や所轄の税務署の窓口で納付する場合は、現金納付ができます。税務署から送付・交付された納付書や、「国税庁のウェブサイト(外部サイトに移動します)」で作成できる専用の二次元コードをコンビニの店舗に持参すれば、現金での支払いが可能です。ただし、二次元コードで納付する場合は納税額が30万円までとなりますので、注意しましょう。
ダイレクト納付
ダイレクト納付は、e-Taxで申告書等を提出し、納税者名義の預貯金口座から納付額を引き落とす方法です。事前にe-Taxの利用開始手続きを済ませ、税務署または金融機関に専用の届出書を提出する必要があります。
インターネットバンキング納付
e-Taxの利用開始手続きを済ませておけば、インターネットバンキングから納付できます。法人税の納付時期は原則「事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内」です。
法人税のまとめ
法人税について解説してきました。以下に要点をまとめます。
・法人税は、法人が事業活動によって得た所得に対して課税される国税
・法人税の申告・納付は、納税者である法人みずからが行う
・法人が納付する税金には、法人税以外に法人住民税、法人事業税、特別法人事業税、消費税および地方消費税がある
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