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【目次】
コーチングとは成長や自発的な行動を促すコミュニケーション手法
コーチングの種類
コーチングのメリットとデメリット
コーチングに必要な3つのスキル:「傾聴」「質問」「承認」
コーチングの手順
コーチングを習得する方法
コーチングの資格
コーチングのまとめ
コーチングとは成長や自発的な行動を促すコミュニケーション手法
コーチングは、馬車という意味を持つ「コーチ(Coach)」から派生した言葉です。馬車を意味する言葉にあります。馬車の「目的地まで送り届ける」という馬車の役割から派生し、目標に向かって導くことを「コーチング」と呼ぶようになったと考えられています。
自己成長や人材育成の面で効果が期待できることから、現在では教育やスポーツ、ビジネスなどさまざまな場面で用いられています。
コーチングの定義
コーチングとは一般的に、「目標達成に向けて能力やモチベーションを引き上げ、成長や自発的な行動を促すコミュニケーション手法」と定義されています。ビジネスはもとより、日常生活や趣味、教育などさまざまな場面で活用されています。
コーチングでは、コーチングを受ける対象者が目標達成に必要なプロセスや課題の解決策を自ら見つけ出せるように、コーチングを行うコーチが導き、サポートします。
「ティーチング」や「カウンセリング」とコーチングの違い
コーチングと混同した使い方をされやすいのが、「ティーチング」や「カウンセリング」です。それぞれの説明は下記のとおりです。
・コーチング:目標達成に向けて、自らの力で答えにたどり着くよう導く
・ティーチング:目的を達成するために知識とスキルを教える(最初に目的がある)
・カウンセリング:不安や悩みなどを聞き、解消するサポートをする
コーチングの特長は、ティーチングやカウンセリングと異なり、対象者が自ら答えを引き出せるようにアドバイスし、導くことです。効果的にコーチングが実施できると対象者の自己成長につながるので、結果として対象者は継続して目標達成に取り組めるようになるでしょう。
コーチングの種類
コーチングには手法やアプローチの仕方、目的別にさまざまな種類があり、多岐にわたります。精神面にフォーカスした「メンタルコーチング」、人生に関する目標や問題を取り扱う「ライフコーチング」、自分自身をコーチと見なす「セルフコーチング」など、多岐にわたります。
ビジネスで一般的に用いられるのは、目標達成のために行う「ビジネスコーチング」です。ビジネスコーチングでは、上司が部下を管理したり指示を出したりするだけではなく、目標の達成に向けてアドバイスを送り、目標達成に必要な要素はなにか等の気付きを与えて主体的な行動を促し、能力を引き出します。モチベーションが高まるよう信頼関係を重視し、メンタル面でサポートすることも重要でしょう。
また、経営者や経営者層、リーダー層を対象にして実施されるものに「エグゼクティブコーチング」があります。
コーチングのメリットとデメリット
コーチングを行うことのメリット、デメリットを理解しておきましょう。
コーチングのメリット
コーチングのメリットは、対象者に「自分で考える力」が身に付くことだといえます。目標達成に必要な現状の分析や計画の立案、業務の遂行などで主体的に行動できるような人材の育成が期待できるでしょう。
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また、コーチと一緒にプロセスを踏むことで課題解決能力が養われることもメリットだといえます。さまざまな場面で効率良く解決策を見出せるようになることも期待できるでしょう。
コーチングは対話を通じて行うため、コーチと対象者の信頼関係強化にもつながります。コミュニケーションが円滑になり、風通しの良い関係構築に役立つこともメリットだといえるでしょう。
コーチングのデメリット
コーチングのデメリットは、効果を実感するまでに時間がかかる可能性があることだといえるでしょう。答えを教えるものではないため、対象者自らが気付きを得られるようになるまでじっと待ち続ける必要がある分、時間を要す場合もあります。
コーチングを行うためには「傾聴」「質問」「承認」といったスキルが必要です。コーチの能力によって効果に差が出てしまうことがあるでしょう。
また、コーチングの基本は一対一でのコミュニケーションにあるため、多くの人材を育成対象にする人材開発手法には不向きとされています。従業員の人数が多くなるほど、コーチングに必要な人材や時間などのリソースも増加します。
コーチングに必要な3つのスキル:「傾聴」「質問」「承認」
コーチングを実践するうえで必要となる、「傾聴」「質問」「承認」という3つのスキルについてそれぞれ説明します。
「傾聴」
傾聴とは、アクティブリスニング(Active Listening)とも言われますが、相手の話にじっくりと耳を傾け相手に理解と共感を示しながら、話が尽きるまで聴くスキルです。
傾聴については厚生労働省(外部サイトに移動します)でも紹介されており、主に3つの原則があるとされています。
・共感的理解:相手の立場になり、気持ちを共感・理解しようとすること
・無条件の肯定的関心:相手をありのままに受け入れ否定しないこと
・自己一致:聴き手は相手に真摯な態度を取ること
この3つの原則を意識し、対象者が考えていることを理解し、自ら答えを引き出せるようなサポートを心がけましょう。
「質問」
質問をする際にコーチに必要なのは、対象者が自ら気付きの機会を多く持てるような質問をするスキルです。コーチングでは、対象者自身に考えさせるような質問を用います。対象者に考えさせることで、本音や課題が認識できるようになります。質問の際に役立つのは、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」「なぜ」といった5W1Hです。ただし、実際に質問する際には「なぜ」を使うと、威圧感を与えてしまう可能性があるので、代わりに「何を」を使ってコミュニケーションするようにしましょう。
例えば、次のような質問を投げかけてみましょう。
・「うまくいかなかった原因は何だと思う?」
・「どのようにすれば、できたと自分では感じている?」
・「いつから取り組めばよかっただろう?」
5W1Hを駆使した質問は、内容を考えなければ返答できないため、本人から気付きを引き出すことに役立つでしょう。
「承認」
承認とは、英語で言うとAcknowledgementとなり、「そこにいることに気づく」という意味です。コーチングで必要なのは、対象者の存在自体、また変化や成長、成果、長所など気づいたことを、言葉や態度で伝えるスキルです。
承認することはとても重要なことなので、承認していることが確実に伝わるように意識しましょう。
コーチングの手順
コーチングにはさまざまな手法がありますが、参考までに、一般的なコーチングの6つの手順を紹介します。
1.目的や目標を明確にする
まずはコーチングを行う目的や目標を明確にしましょう。目的や目標が明瞭であるほど、実施する側の意図を対象者がくみ取りやすくなります。目的や目標が曖昧だと、対象者にコーチングの重要性を理解してもらうことも難しくなるので、「何のためにコーチングを行うのか」を明確にすることが大切です。
2.目標と現状の差分を確認する
目標と現状で、どのような差分があるかを確認します。対象者が目指すゴールと現在の状況を比較し、目標到達のために想定される障壁やプロセスを検討しましょう。
3.差分を生んでいる原因課題を確認する
目標達成の妨げになっている要因を明らかにし、現状にどういう影響を及ぼしているかを洗い出します。目的や目標を達成するには実行可能な解決策の立案が大切であるため、可能な限り具体的に洗い出すことが重要です。
4.原因課題を埋めるために必要な手段を検討する
直面している課題に対し、解決策や必要な手段を検討します。「どうすれば解決できると思う?」「何が必要になるだろう?」など、相手に質問して気付きを促すことが大切です。必要な手段を検討したあとは、実際の行動に移します。
5.途中時点での目標を定め、良否を判断できるようにする
一定期間が経過したら、実践した手段が「良いか」「悪いか」を検討します。単に良し悪しで判断するだけでなく、「なぜ良いと思ったか(もしくは悪いと思ったか)」を気付かせることも大切です。
6.経過を見つつ、継続的にフォローする
コーチングを実施する側は、経過を定期的に観察します。最初に決めた目的や目標に達するまで、継続的にフォローしましょう。コーチングから十分な効果を期待するために重要となるのは、対象者本人の意欲です。残念ながら対象者から「変わる意志」を感じられない場合には、一度コーチングからはなれ、対象者本人が「何を考えているのか」を聞いてみるといいでしょう。
コーチングを習得する方法
コーチのスキルが不足している場合、対象者から気付きを引き出すことができなかったり、効果が出るまでに時間を要したりするでしょう。コーチングスキルの向上に取り組むことが必要です。ここでは、コーチングを習得するための5つの方法を紹介します。
資格を取得する
資格の取得を目指すことによって、コーチングのノウハウを学べます。どのような質問を投げかければよいか、どうフォローすればよいかなど、具体的な手法が学べるため、効率的にコーチングを習得することができるでしょう。
本を読んで学ぶ
本は時間や場所に縛られることなく、自分のペースでコーチングの知識を深めることができます。コーチングに関する本にはさまざまな種類があるので、自分が納得できる内容のものを見つけることが大切でしょう。
eラーニングを受けて学ぶ
eラーニングは動画を用いて学べるため、コーチングを深く学ぶことができるでしょう。コースによってはテストが付いていたり、リアルタイムで受講できたりするものもあります。
コーチングを受けることで学ぶ
「コーチングを実施するために」コーチングを受けるという選択肢もあります。プロのコーチから具体的なコーチングの手法を直接学べるため、短期間で実務的な知識やスキルを身に付けられるでしょう。
セミナーや研修を受けてみて学ぶ
セミナーや研修を受講することで、講義や実践的な演習、グループディスカッション、ロールプレーなどを通じて、コーチングの基本から応用技術までを学ぶことができます。ほかの参加者と交流し、さまざまな視点やアイデアを得ることもできるでしょう。
コーチングの資格
先ほどコーチングを習得する方法として資格を取ることを紹介しましたが、ここでは3つの資格を紹介します。
日本コーチ連盟のコーチング資格
日本コーチ連盟のコーチング資格(外部サイトに移動します)とは、一般社団法人日本コーチ連盟が実施している民間資格を指します。学科試験と実技試験に合格すると取得できる「認定コーチング・ファシリテータ」資格と、論文試験と実技試験で実施される「認定コーチ」資格があります。
一般財団法人生涯学習開発財団のコーチング資格
文部科学省の外郭団体である、一般財団法人生涯学習開発財団の後援を受けて、1998年に始まった日本で最初のコーチ認定制度が、一般財団法人生涯学習開発財団のコーチ資格(外部サイトに移動します)です。コーチ資格の種類は「認定コーチ」「認定プロフェッショナルコーチ」「認定マスターコーチ」があります。延べ9,800人(2023年1月現在)が認定コーチ資格を取得しています。
国際コーチング連盟(ICF)のコーチング資格
143の国や地域が加盟する国際コーチング連盟(ICF)には、日本支部があり(外部サイトに移動します)、 日本においては1,179名(2024年2月現在)が資格取得者として活躍しています。
コーチングのまとめ
コーチングについて以下に、主要なポイントをまとめます。
・コーチングとは、目標達成に向けて能力やモチベーションを引き上げ、成長や自発的な行動を促すコミュニケーション手法
・主体性や課題解決能力が身に付けられるビジネスコーチングは人材育成に役立つ
・コーチングには、主に「傾聴」「質問」「承認」といったスキルが必要になる
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