【目次】
ビジネスモデルキャンバスとはビジネスモデルを可視化するフレームワーク
ビジネスモデルキャンバスの9つの構成要素
ビジネスモデルキャンバスを活用するメリット
ビジネスモデルキャンバスをより効果的に活用するには?
ビジネスモデルキャンバスのまとめ
ビジネスモデルキャンバスとはビジネスモデルを可視化するフレームワーク
ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスモデルを可視化し、チームや関係者と共有・議論するためのフレームワークです。BMCと略されることもあります。
ビジネスモデルキャンバスは、新たなビジネスモデルを確認、検証するためなどに活用されます。9つの要素を書き出して視覚化することで、ビジネスモデルを明確にし、客観視することができるようになります。また、既存のビジネスについても、ビジネスモデルキャンバスを活用して優位性や課題を洗い出すことが可能となり、自社の強みや弱み、置かれているビジネス環境などをより理解できるようになります。
ビジネスモデルキャンバスの9つの構成要素
ビジネスモデルキャンバスは、以下の9つの要素から構成されます。9つの要素を枠組みに入れると、それぞれの要素の関係性を可視化できます。以下にそれぞれの構成要素について紹介します。
1. 顧客セグメント(CS:Customer Segments)
顧客セグメントとは、ビジネスの対象となる顧客を特定することです。「最も重要な顧客は誰か」「その顧客が抱えている課題は何か」という視点で、自社の商品(製品・サービス)の顧客となるペルソナを挙げます。
例えば、カーシェアリングサービスを提供する企業の場合は、以下のような内容が考えられます。
<カーシェアリングサービスの顧客セグメントの一例>
・低コストで車を使いたい人
・少しの時間だけ車が必要な人
・低コストで社用車を利用したい法人
属性やライフスタイル、ニーズや課題など、BtoBビジネスの場合は対象企業の業種や規模、文化・理念といったものまで、可能な限り具体的に挙げていくことが考える際のポイントです。
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2. 価値提案(VP:Value Propositions)
価値提案とは、特定の顧客セグメントに提供する独自の価値やソリューションです。「競合他社にはない価値は何か」「どんなニーズに応えるのか」「どんな課題解決方法を提供するのか」といった視点で、自社の製品やサービスの特長や差別化ポイントを挙げます。
カーシェアリングサービスを提供する企業を例とする場合、以下のような内容が考えられます。
<カーシェアリングサービスの価値提案の一例>
・短時間利用の場合、レンタカーよりも安く借りられる
・24時間好きなときに、対面手続きなしで借りられて便利
・法人の場合、社用車を持つよりもコストが50%安くなる
BtoCはもちろん、BtoBの顧客に対しては特に価値提案が曖昧では、自社製品やサービスの訴求がうまくいかないおそれがあるため、顧客のどのようなニーズに応えるのかをなるべく具体的に挙げることが重要です。
3. 収益の流れ(RS:Revenue Streams)
収益の流れとは、ビジネスによって得られるお金の流れと仕組みです。「顧客はどんな価値にお金を払おうとするか」「どのような方法で払ってくれるのか」「どのような仕組みで収益を得るのか」などの視点で、マネタイズポイントを挙げます。
カーシェアリングサービスを提供する企業を例とする場合、以下の内容が考えられます。
<カーシェアリングサービスの収益の流れの一例>
・個人顧客と法人顧客が支払う月額利用料、その都度の利用料
・中古車市場へのカーシェアリング用車両の売却益
商品の収益構造を可視化することで、さまざまな角度から事業のマネタイズポイントを把握・検討することができます。
4. チャネル(CH:Channels)
チャネルとは、製品やサービスを販売する経路を指します。「どのチャネルを通じて顧客にリーチするのか」「どのような経路で価値を届けるのか」という視点で、販売経路や顧客とのタッチポイントなどを記述します。
カーシェアリングサービスを提供する企業を例とする場合、以下の内容が考えられます。
<カーシェアリングサービスのチャネルの一例>
・ウェブサイト
・SNS
・コールセンター
・法人営業
チャネルを考える際には、顧客セグメントで決めたペルソナに合うタッチポイントを踏まえることが大切です。例えば、個人利用目的の20代のドライバーならウェブサイトやSNS、社用車代わりの法人利用目的なら法人営業やコールセンター、といったように、それぞれに適切なチャネルを設定しましょう。
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5. 顧客との関係(CR:Customer Relationships)
顧客との関係とは、長期的な関係構築のための戦略や手法です。「顧客に対してどのようなコミュニケーションをとり続けるのか」「どのようなアフターサービスが適切か」などの視点で、顧客との関わり方や関係性を維持する方法を挙げます。
カーシェアリングサービスを提供する企業を例とする場合、以下の内容が考えられます。
<カーシェアリングサービスの顧客との関係の一例>
・会員登録をしてもらい、メルマガでお得情報などの発信を行う
・オペレーターが利用時のトラブル対応などのフォローを行う
顧客との関係構築には、時間やコストがかかるのが一般的です。ここでは、実際に行うことができる内容を挙げるようにしましょう。
6. 主要活動(KA:Key Activities)
主要活動とは、事業を行うにあたり重要となる業務や活動です。「必要な主要活動は何か?」「どんなタスクを遂行していくのか」などの視点で、価値の創出や差別化につなげるために必要不可欠な活動を挙げます。
カーシェアリングサービスを提供する企業を例とする場合、以下の内容が考えられます。
<カーシェアリングサービスの主要活動の一例>
・車両の整備や管理などのメンテナンス
・コールセンターによるカスタマサポート
・ウェブサイトの運用やメンテナンス
ここで大事なポイントは、自社のビジネスにとって特に重要な活動を挙げることです。そのためには、顧客セグメントや価値提案を再度確認したうえで、優先すべき活動を決めるとよいでしょう。
7. 主要リソース(KR:Key Resources)
リソースとは、ビジネスモデルの実現に必要な経営資源で、主に人材や物、資金、情報などを指します。「自社の事業にはどのようなリソースが、どれくらい必要か」という視点で、リソースの種類や最適な量を考えます。
カーシェアリングサービスを提供する企業を例とする場合、以下の内容が考えられます。
<カーシェアリングサービスのリソースの一例>
・駐車スペース
・車両本体やメンテナンス設備
・オフィスやコールセンターなどの施設やスタッフ
運営ノウハウやオペレーティングシステム、技術や知的財産などの無形資産もリソースとなります。自社の事業に必要なリソースはすべて挙げることが大切です。
8. 主要パートナー(LP:Key Partners)
パートナーとは、事業の展開に必要な外部のパートナーを指します。自社の事業と協業するうえで、「どのようなシナジーが生み出せるか」「リスクヘッジができるか」などの視点で考えます。
カーシェアリングサービスを提供する企業を例とする場合、以下の内容が考えられます。
<カーシェアリングサービスのパートナーの一例>
・カーディーラー
・レンタカー会社
・保険会社
ここでは、自社のビジネスにとって必要不可欠なパートナーを洗い出しましょう。自社の足りないリソースを補ってくれたり、安定的な売り上げにつなげられたりするパートナーは、事業を運営していくうえでも不可欠な存在といえます。
9. コスト構造(CS:Cost Structure)
コスト構造とは、事業を運営するために必要なコストや経費です。固定費や変動費、「どのようなコストが発生するか」「最も重要なコストは何か」といった視点で、自社に必要なコストを挙げます。
カーシェアリングサービスを提供する企業を例とする場合、以下の内容が考えられます。
<カーシェアリングサービスのコスト構造の一例>
・車両の調達・維持管理費
・燃料(ガソリン)費
・人件費や賃料
・駐車場代
あまり細かく挙げる必要はなく、コストを構成している大まかなカテゴリーを把握できれば問題ありません。
ビジネスモデルキャンバスを活用するメリット
ビジネスモデルキャンバスは、企業規模や業種を問わず、さまざまな企業で利用可能です。ここではこのツールを経営に活かすメリットを3つ紹介します。
ビジネスモデルの全体像を理解できる
ビジネスモデルキャンバスを使うと、複雑なビジネスモデルも社内の誰もが一目で把握できることがメリットです。ビジネスには多くの要素が複雑に絡み合っていますが、ビジネスモデルキャンバスではそれらの要素を9つに整理するため、ビジネスに関するアイデアをシンプルに理解することが可能です。
イメージの共有やそれに基づいた議論ができる
ビジネスモデルキャンバスを使うことで、企業内のチームや組織全体、パートナー企業といったステークホルダーとの間で、ビジネスのアイデアを共有できます。その共有した認識に基づく議論ができることもメリットです。議論によってビジネスモデルをブラッシュアップすることもできるでしょう。
競合他社のビジネスモデルを分析できる
ビジネスモデルキャンバスを使って、競合他社のビジネスモデルを分析できる点もメリットです。競合他社が提供する商品の価値や顧客との関係性、収益の流れなどを可視化し、分析することで、自社のビジネスモデルとの比較、自社の強みや弱みを明確にすることが可能になります。その中で、自社のビジネスに関する新しいアイデアや改善のヒントが得られることも期待できます。
ビジネスモデルキャンバスをより効果的に活用するには?
ここからは、ビジネスモデルキャンバスをより効果的に活用する方法について解説します。
定期的なレビューをする
ビジネスモデルキャンバスのレビューを、定期的に行いましょう。ビジネスの状況や市場環境が変化すれば、それに応じた見直しも求められます。ビジネスモデルが現状にマッチしているかどうかを定期的に評価し、アップデートしていくことが重要です。
顧客との対話を重視する
作成したビジネスモデルキャンバスをベースにしたヒアリングなどを行い、顧客からフィードバックを得ましょう。ビジネスモデルキャンバスを効果的に活用するには、顧客との対話を重視することが大切です。顧客との対話によって取得したインサイトを反映することで、より市場ニーズに合致したビジネスモデルを構築することが可能になります。
検証を行う
ビジネスモデルキャンバス上で描いた仮説を、小規模な実証実験やテストを通じて検証することも有効な活用方法です。検証を行うことで事前にリスクを見極めることができるのは、特に新しいビジネスを始める際に役立つでしょう。
ほかのフレームワークとも組み合わせる
ビジネスモデルキャンバスをほかのフレームワークと組み合わせて活用すると、より緻密にビジネスモデルを構築することが可能です。例えば、ビジネス戦略や計画を立てるときに有効なSWOT分析や、マーケティング環境を分析するのに役立つ3C分析などのフレームワークも併せて利用すれば、より広い視野からビジネスモデルを捉えることができるでしょう。
関連記事:【テンプレあり】「SWOT分析」成功法!初心者でもビジネス戦略が高まるやり方や具体例を図で説明
ビジネスモデルキャンバスのまとめ
この記事で紹介した内容を基に、ビジネスモデルキャンバスの要点を以下にまとめます。
・ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを視覚的に表現するフレームワークであり、9つの構成要素から成り立っている
・ビジネスモデルキャンバスは、新しいビジネスのアイデア出しや既存ビジネスの改善・進化のために有用
・ビジネスモデルキャンバスを活用することで、ビジネスモデルの全体像を可視化したり、競合他社を分析したりすることが可能
・ビジネスモデルキャンバスの効果的な活用のためには、定期的なレビュー、顧客との対話、実証実験、ほかのフレームワークとの組み合わせが有効
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