【目次】
ブランディングとは
ブランディングを行う目的や得られる効果
ブランディングの種類
ブランディングを実施する際の具体的な手順
ブランディングを成功させるためのポイント
ブランディングのまとめ
ブランディングとは
ブランディングとは、企業が自社や自社の商品、サービスなどを通してつくった独自のブランドを構築し、その価値を最大化させ、差別化をはかる活動を指します。ケビン・レーン・ケラーは、著書の『戦略的ブランド・マネジメント』の中で「ブランディングは精神的な構造を創り出すこと、消費者が意思決定を単純化できるように、製品・サービスについての知識を整理すること」と定義しています。
ブランディングをより深く理解するためにはブランドの定義も理解する必要があります。ここでは、ブランドの定義を紹介しブランディングとマーケティングの違いを解説します。
ブランドの定義
「現代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラー氏は「ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」と定義しています。一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会による 消費者・顧客から見た「ブランド」の定義(外部リンクに移動します)は、「ある特定の商品やサービスが、消費者・顧客によって『識別されている』とき、その商品やサービスを『ブランド』と呼ぶ」となっています。
ブランディングとマーケティングの違い
フィリップ・コトラー氏は『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント第12版』の中で「マーケティングとは、人間や社会のニーズを見極めてそれに応えることである。 マーケティングを最も短い言葉で定義すれば、『ニーズに応えて利益を上げること』となろう」とマーケティングを定義しています。マーケティングでは、商品やサービスをより効果的に販売するための戦略を立案し、実施します。ブランディングは、ブランドの価値を最大化させ、差別化をはかる活動ですので、競争優位性を確保するための戦略のひとつです。よって、マーケティングの一環であるとも言えるでしょう。
商品やサービスを販売する、利益が上がる仕組みをつくるためには、ブランドのイメージを形成することは重要な要素となります。また、様々なマーケティング活動において、一貫したイメージやメッセージを発信しつづけることがブランディングを成功させるために必要不可欠だといえます。ブランディングとマーケティングは目的や手法などは違いますが、どちらも競合優位性を高めて購買につなげるための活動です。バランスをコントロールしながら連動させることで効果を増幅できます。
ブランディングを行う目的や得られる効果
ブランディングを行うと様々な効果が得られます。これらの効果はブランディングに取り組む際の目的となるでしょう。主な効果を紹介します。
信頼性の向上
ブランディングを行うと、企業や商品、サービスのブランド価値が向上します。ブランド価値が向上することで、信頼性も向上し、リピーターの増加や顧客維持を高めることにもつながるでしょう。
リピーターの増加や顧客維持を高めることは、顧客のLTV(生涯価値)向上に寄与します。LTVが大きいほど多くの収益を生み出すため、長期的な売上の安定や事業成長などが期待できます。
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ロイヤルユーザー(ロイヤルカスタマー)の獲得およびファンの定着
ブランドイメージが向上すると、購買意欲が高められるだけでなく、顧客ロイヤリティも育成できます。顧客ロイヤリティとは、企業、商品やサービス、ブランドに対する信頼度や愛着の大きさを測る指標です。
顧客ロイヤリティが高くブランドに対して愛着があるロイヤルユーザーが獲得できていれば、値上げや競合他社の値下げが発生した場合などにブランドから離れてしまう可能性も下がるでしょう。また、ロイヤルユーザーからのフィードバックは有効です。商品やサービスの改善、開発などに役立てることができるでしょう。
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また、ブランディングを適切に行うことで企業やブランド、商品、サービスのファンを獲得できるようにもなります。ファンになってもらえると、SNSや口コミなどを通じて、企業やブランド、商品、サービスの魅力を発信してもらえることもあるでしょう。ファンの自発的なコミュニケーションによるブランドイメージのさらなる強化や新規顧客の獲得も期待できます。ファンが増えることで、広告での宣伝をする必要がなくなる可能性もあるので、ファンの定着はコスト削減にもつながるといえるでしょう。
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採用力の向上
ブランディングによって企業の信頼、価値や認知が向上すると、応募者が集まりやすくなり、人材を採用しやすくなるでしょう。ブランドのファンが求人に応募してくれる可能性も高まります。高いモチベーションが期待できるブランドに対して好感をもっている人材の確保や、求人広告費にかかるコストの削減も期待できます。
ブランディングの種類
ブランディングにはさまざまな種類があります。ここでは経営に役立つ5つのブランディングを紹介します。
インナーブランディング
インナーブランディングとは、企業が自社の従業員を対象に行うブランディングのことです。従業員が企業のビジョンやミッション、価値観、文化を理解し、自社のブランド価値を外部に伝えることができるようにすることが目的です。インナーブランディングを行うことは部門や部署を超えたコミュニケーションが図れるため、良好な人間関係の構築にもつながるでしょう。
アウターブランディング
アウターブランディングとは、企業が社外を対象に実施するブランディングのことです。ウェブ広告やSNS、テレビCM、展示会やイベントへの出展などによるプロモーション活動を通して企業やブランド、商品やサービスの価値を社外に伝え、認知度を向上させることが実施の目的となります。
企業ブランディング(コーポレートブランディング)
企業ブランディングは、コーポレートブランディングとも呼ばれますが、アウターブランディングの1つで、商品やサービスではなく、企業のビジョンやミッションや価値を認知してもらうことを目的に行うブランディングです。自社のイメージや価値を高め、他社との差別化がはかれるでしょう。
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ブランディング実施する際の具体的な手順
ブランディングを実施する際、流れとしては以下のとおり大きく4つのステップがあります。
1. 自社もしくは商品やサービスの強みや現状など、環境の分析
2.ブランディングを実施する目的やターゲット、ブランドコンセプトの設定
3.実施戦略の立案と実施
4.効果の検証
それぞれのステップを解説します。
Step1:自社もしくは商品やサービスの強みや現状など、環境の分析
まずは、客観的に自社もしくは商品やサービスの強みや価値、現状や置かれている環境などを把握し、分析しましょう。環境分析に活用できる代表的なフレームワークには、ポジティブな面とネガティブな面を可視化し、内部および外部環境の両側面から環境分析を進める際に役立つSWOT分析、重要成功要因(Key Success Factor)を発見するために役立つ3C分析、該当する業界全体に影響を与える中長期的な傾向やトレンドなどを把握する際に役立つPEST分析などがあります。
関連記事:【テンプレあり】「SWOT分析」成功法!初心者でもビジネス戦略が高まるやり方や具体例を図で説明
Step2:ブランディングを実施する目的やターゲット、ブランドコンセプトの設定
環境分析の結果をもとに、ブランディングを行う目的を明確にしましょう。ブランディングの目的や取り組む意味を共通の理解としておくことは、一貫したブランディングを行っていくために重要です。
目的が明確になったら、ターゲットを設定しましょう。ステップ1の分析結果により、自社もしくは商品やサービスの見込み客(ターゲット層)を設定します。ターゲット層をより具体的に想定するためには、ペルソナの作成が有効です。
ターゲットおよびペルソナの設定ができたら、ブランドコンセプトを決めましょう。ブランドコンセプトとは、ブランドの価値を言語化したものです。その際に注意すべきなのは、伝えたい価値や強みが伝わらないといけない相手はターゲットであるということです。ターゲット層に伝わる言葉を探して言語化しましょう。もしまだブランド名やブランドロゴがない場合は、ここで、ターゲットペルソナとブランドコンセプトを具現化し、発信するためにブランド名やブランドロゴを決めましょう。
Step3:戦略の立案と実施
ステップ1と2を行うことで、ブランドが大切にしていることは何か(ブランド哲学)、ブランドの商品やサービスにはどのような個性や特性があるか(パーソナリティ)、ブランドを視覚的に表現した場合にどうなるか(視覚的要素)などが明確になります。そうすると、どのようなブランディングがしたいかの方向性を定義したものである、「ブランドアイデンティティ」が構築できます。
構築したブランドアイデンティティをどのような形で浸透させるのが効果的なのかを検討し、戦略を立てましょう。手法や活用するチャネルの決定、ターゲット層とのタッチポイントを設定し、戦略に沿った施策を実施します。
Step4:効果の検証
一定期間が経過したら、戦略や実施方法が適切か、どの程度認知されているかを検証しましょう。検証結果をもとに、必要に応じて軌道修正や施策の改善に取り組むことが大切です。ブランディングは中長期的な取り組みですので、効果測定と分析を繰り返し、目的の達成を目指しましょう。
ブランディングを成功させるためのポイント
ブランディングの成功のために意識すべきポイントを2つ紹介します。
自社やブランド、商品やサービスといった、取り組むブランディングの対象がもつ価値やブランドコンセプトが共有できているかが1つ目の重要なポイントとなります。たとえば、環境問題に高い関心があるターゲットに対し、環境に優しい商品をブランディングする場合、品質や機能だけでなく、「環境に優しい」というブランドコンセプトや「商品を購入することで環境保護に貢献できる」という価値がしっかりと伝わるようにできているかが大切です。しっかりと伝えることで、購買意欲につながる「共感」を得られるでしょう。
ユーザー目線を持つことも、ブランディングを成功させるために重要なポイントです。自社や、自社のブランド、商品、サービスに対して客観的な分析をすることは難しいですが、ユーザー目線に立つこと、客観的な視点を持つことを常に意識しましょう。そうすることで、ターゲット層が求めている価値となるように、客観的に分析した自社だけが持つ強みを活かすことができるでしょう。また、SNSなどを活用して口コミや評判、反応、反響を集めることで、製品やサービスの改善に活かすこともできるでしょう。
ブランディングのまとめ
ブランディングについて以下に、主要なポイントをまとめます。
・ブランディングとは自社や自社の商品、サービスなどを通して独自のブランドを構築し、その価値を最大化し差別化をはかる活動
・ブランディングにより信頼性の獲得、ファンの定着、採用力の向上などの効果が期待できる
・ブランディングには、インナーブランディング、アウターブランディング、企業ブランディングなどがある
・ブランディングに成功するためには、企業が提供する商品やサービスの価値やブランドコンセプトを消費者と共有することが重要
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