ストレスの多いZ世代
職場で最もストレスを強く感じている層は、パンデミックの前後で社会人になったZ世代の従業員たちだと、英メディア「BBC」が2023年2月掲載の記事(外部サイトに移動します)で指摘している。
BBCが引用する米保険大手シグナ・インターナショナル・ヘルスの調査(外部サイトに移動します)では、職場でストレスを抱えていると答えたのが全世代平均で84%だったのに対し、18〜24歳のZ世代では91%にのぼった。世界の約1万2000人の労働者を対象にしたこの調査では、Z世代の23%が対処しきれないストレスを抱え、98%が燃え尽き症候群の症状が出ているとも回答している。
Z世代の多くは、パンデミックのために孤独にオンライン環境で学び、バーチャル、あるいはハイブリッドの環境で仕事を始めることを余儀なくされた。そのため、職場でも同僚やメンターとの有意義な関係を、上の世代よりもうまく築きにくい状態にある。
また、上記のBBCの記事で参照されているLinkedIn(リンクドイン)の2022年12月の調査では、18〜25歳は仕事や役割に自信を持てていないと回答している。ミレニアル世代以上の59%が、「自分があらゆる面で完璧にこなせると感じている」と回答したのに対し、そう答えたZ世代はわずか43%だった。
従業員の心の状態に向き合う
では、このようなZ世代の不安を取り除き、彼らがうまく職場で力を発揮できるようにするために、企業は何ができるのだろうか。
英紙「フィナンシャル・タイムズ」が2024年1月に掲載した記事(外部サイトに移動します)によると、企業は若い従業員の心の状態に向き合う必要があるという。
職場のメンタルヘルス問題を支援する、英国発の非営利団体マインドフォワード・アライアンスのファリマ・ダービシャーは、「Z世代は、雇用主が自分のメンタルヘルスをサポートしてくれるという期待を抱いている」と指摘する。
Z世代の若者たちは、上の世代に比べてメンタルヘルスの問題に詳しい。ソーシャルメディア上で心の悩みがオープンにされ、それについて話し合うことが当たり前の時代に育ってきたからだ。だからこそ、職場が自分のストレスの原因にも向き合ってくれることを期待している。
だが、まだ多くの企業がZ世代の期待を認識できていないのが実情のようだ。コンサルティング会社「デロイト」が米国のZ世代に対して実施した2023年5月の調査 (外部サイトに移動します)によると、Z世代の多くは、職場から必要なメンタルヘルスに関するサポートを得られていないと感じていることがわかった。
特に自宅から仕事をすることが増えたいま、従業員のストレスや仕事の状況は上司からも見えにくくなっている。従業員のひとりが仕事を抱えすぎていたとしても調整が遅れがちで、メンタルヘルスの問題も生じやすい。同調査ではZ世代の半数以上が、「仕事量が適切ではない」と回答している。
ハイブリッドな職場環境下において、マネジメント層は従業員の心の状態や仕事の状況に常に「目を配り」、積極的に従業員のつながりを持つ機会を作る必要がある。
Z世代は自分を尊重してもらいたがっている
また、デロイトの調査(外部サイトに移動します)では、Z世代は上司に「共感力」を求めていることがわかった。彼らは、自分がまず人として尊重されることを重視している。自分の気持ちを気にかけず、仕事の生産性ばかりを語られては、ストレスに感じてしまうのだ。
なお、同調査ではZ世代の28%が上司との関係から大きなストレスを受けていると回答している。ロンドンを拠点に20代の管理・採用について企業にアドバイスをする研究者のイライザ・フィルビーは、職場環境自体がZ世代のストレスの一因になっていることが多いと指摘する。
「仕事を始めて職場で管理されるようになると、多くの若者は違和感を覚えます。仕事をする場は、依然として威圧的なのです」
上司にまず求められるのは、自分が従業員の不安の原因になりうると自覚することだ。そしてZ世代の意見に耳を傾け、彼らの興味に関心を示し、相手を尊重する姿勢を示す必要がある。
しかし、どうZ世代の心に向き合うかは、重要な課題だ。すべての支援が効果的であるとは限らない。マインドフルネス・セッションのようなプログラムを実施する企業もあるが、それではZ世代がストレスに感じている職場の問題解決にはつながらない。表面的な気晴らしに過ぎないため、前出のフィナンシャル・タイムズ紙の記事(外部サイトに移動します)は、Z世代はそれらを「ウェルネス・ウォッシング」と見破るだろうと指摘する。
また、ストレス解消の方法は世代によっても違うため、上の世代が自分のやり方を押し付けるのも良くない。英保険バイタリティによる「英国で最も健康的な職場」調査(外部サイトに移動します)では、50代以上の多くがアルコールは不安な感情を麻痺させ、ストレス解消源になると考えている一方、ストレスを抱えたZ世代がアルコールに手を出すと、不安がさらに高まる傾向があることがわかった。
企業が提供すべきは、職場がZ世代のストレスの一因となっていることを認識し、不調を抱えた従業員が気軽にサポートを得られるようにすることだ。その上で、仕事の量を適切にするなど、ストレスの原因となる職場の問題を解決していく必要があるだろう。
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文・編集:クーリエ・ジャポン(講談社)
写真:Getty Images