監修者プロフィール
原 千広(はら ちひろ)
弁護士
東京都出身。東京大学法科大学院を修了後、新司法試験合格。現在は日暮里中央法律会計事務所に所属。国内外の企業・私人に対する紛争から国際家族紛争まで国を跨ぐ案件に幅広く携わる。ロシア語能力検定1級。
【目次】
アライアンスとは、複数の企業や独立した組織が
特定の目的を達成するために協力しあう経営手法
アライアンスに関連するビジネス用語
アライアンスの種類
アライアンスのメリット
アライアンスを結ぶ際の注意点
アライアンスのまとめ
アライアンスとは、複数の企業や独立した組織が
特定の目的を達成するために協力しあう経営手法
アライアンス(alliance)は、「同盟」「連合」「提携」などに訳される言葉で、ビジネスにおいては一般的に、「複数の独立した企業や独立した組織が互いの強みを活かしながら、特定の目的を達成し互いに経済的なメリットを享受するために協力体制を構築する」経営手法を指します。
アライアンスの目的は様々ですが、競争力の向上や市場拡大、新規事業の立ち上げや新たな技術開発などを実現させる手段として用いられます。協力関係を築いて互いがメリットを享受する、「Win-Winの関係性」を構築するのがアライアンスの特徴といえます。
アライアンスとM&Aの違い
アライアンス混同しやすい言葉に、M&A(Mergers and Acquisitions)があります。どちらの言葉も「複数の企業が一定の目的のために、協力して競争力の向上などを目指す」という意味合いは同じですが、違いは経営権の譲渡が生じるか否かにあります。
M&Aによる企業結合の場合、一方の企業が他方の企業に経営権を譲渡するのに対し、アライアンスを構築する場合、経営権を譲渡する必要はなく、連携企業全体の利益や互いの企業成長を目的として協力し合います。
アライアンスに関連するビジネス用語
アライアンスに関連する、主なビジネス用語を紹介します。
アライアンス契約
アライアンス契約とは、企業同士が業務提携や資本提携などのアライアンスを締結する際に締結する契約を指します。経営資源である「ヒト、モノ、カネ、情報」の取り扱いや対象となる業務、契約期間や解約の方法や条件、守秘義務などについて企業間で協議し、契約書を作成します。
アライアンスパートナー
アライアンス契約を結び、アライアンス関係において共同で活動する企業や組織をアライアンスパートナーと呼びます。
アライアンス事業
アライアンス契約を結んだ企業、組織であるアライアンスパートナーとともに共同で行う事業を指します。
アライアンス戦略
企業の事業戦略の中の一つの手法で、企業間の連携を戦略的に構築し、実行する計画のことを指します。
戦略的アライアンス(戦略的提携)
戦略的アライアンスとは、異なる企業が単なる契約関係を超えて深い信頼関係と共通のビジョンに基づき、新しい市場への参入、技術開発、共同研究など、多岐にわたる目的を達成するために結ぶ中長期的なパートナーシップです。
アライアンスの種類
アライアンスの代表的な種類として「資本提携」「業務提携」「技術提携」「産学連携」「オープンイノベーション」が挙げられます。それぞれについて解説します。
資本提携
資本提携とは、2社以上の企業が資金面と業務面で協力し合う提携関係です。資本、つまり株式の移動をともないます。主体となる企業が提携先企業の株式を取得するか、提携する各企業が相互に株式を保有することで、提携関係を築きます。経営の独立性を保つために、取得、もしくは譲渡する株式数は取締役の解任や定款の変更のような特別決議を単独で阻止できない範囲の発行済株式総数の1/3未満に抑えるのが一般的です。
業務提携
業務提携とは、複数の企業がノウハウ、技術、人材などの経営リソースを提供し合い協力体制を築く提携関係です。互いの技術やノウハウを共有することで、競争力の向上やシェア拡大を目指します。
技術提携
技術提携とは、業務提携の一種であり、技術分野に特化して協力体制を築く提携関係です。これまで培ってきた研究開発力や生産力などの技術やノウハウを互いが提供し合い、共同開発や生産コストの低減などによる競争力の向上を目指します。
産学連携
産学連携とは、新事業や研究開発を共同して行うことを目的とし、大学などの教育機関や研究機関と民間企業が連携して築く提携関係です。教育機関や研究機関が培ってきた技術や知見、企業がもつビジネス視点などそれぞれが持つ強みを提供することで互いのウィークポイントを補完し、研究や開発範囲のスケールアップ、権威性の向上、コスト削減、期間短縮などを目指します。
オープンイノベーション
オープンイノベーションとは、組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果、組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすために築く提携関係です。企業の枠にとらわれない、事業の促進や創出を目指します。
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アライアンスのメリット
アライアンスの締結によって得られる主なメリットを紹介します。
競争力の向上
企業同士が、技術、資金、人材などそれぞれの経営リソースを共有することで、より効率的な経営が実現可能となること、シナジー効果によって互いの強みを活かし、弱みを補完することで市場での優位性向上が可能となることは、大きなメリットだといえるでしょう。
関連記事:シナジー効果とは?ビジネスシーンにおける効果や創出する方法を解説
コスト削減
企業が単独で新規事業の立ち上げや新たな技術開発に取り組むよりも、パートナーとなる企業が持つ経営リソースを有効活用できるアライアンスを締結したうえで取り組む方が、時間を短縮し、費用を抑えることが可能です。コスト削減につながることはメリットといえます。
また、アライアンスの締結にはM&Aのように会社法上の厳格な手続きは不要なため、M&Aと比べると、事前準備の手間やコスト、また万が一失敗した場合のリスクも比較的抑えやすいともいえるでしょう。
新規市場への迅速な参入
新規市場への参入には常にリスクが伴うため、入念な準備が必要です。既に参入を希望している市場で活動している組織や企業とアライアンスを締結することで、新たな市場への参入障壁を低くすることが可能となることもまた、アライアンスのメリットといえるでしょう。
アライアンスを結ぶ際の注意点
アライアンスを結ぶにあたって注意しておくべき点も紹介します。
機密情報の管理
アライアンスにおいては自社の持つ顧客情報、技術やノウハウなどの自社の強みといった機密情報を共有するため、機密情報が外部流出するリスクがあります。流出リスクに晒されないよう、情報管理の徹底や対策が必要でしょう。
成果に対する期待値の調節(エクスペクテーションコントロール)
アライアンス契約はあくまでも協力関係を築くために締結するものであり、企業の成長や利益といった目的の達成を目指すものの、一定の成果を約束するものではありません。成果が出ない場合もあることを想定したうえで準備を進めましょう。
アライアンスによるシナジー効果を最大限享受するために、アライアンスパートナーを選定する段階から、具体的にどのように互いを補完し合うのが効率的かつ効果的かを検証し、実際にアライアンスを締結する際には、各社の役割分担を明確に取り決めましょう。そうすることで、アライアンス契約を締結したアライアンスパートナーにより、フリーライド(経済的、時間的、労力的に必要なコストを負担せずに便益やサービスを得る行為)される事態も防止できます。
責任の所在の明確化
万が一、トラブルが起こった際のリスク対応も必要でしょう。責任の所在が曖昧になになっていると、対応が遅れるなどが原因となり、結果的に社会的な評価を下げてしまう可能性があります。そのようなリスクを回避するために、アライアンス契約を締結する段階で責任の所在を明確にしておきましょう。必要に応じて、事業に損害を与えた場合の対処方法についてなどを協議事項に盛り込むことも検討しましょう。
管理・運用の複雑化
アライアンスの締結のもとで事業を行う場合、単一企業下で行う場合より管理業務や運営業務などが複雑になる傾向にあります。業務フローの見直しが必要となるなど、結果的に管理コストが増える可能性もあるでしょう。
アライアンスのまとめ
アライアンスについての要点を以下にまとめます。
・アライアンスとは複数の企業や独立した組織が特定の目的を達成するために協力しあう経営手法
・アライアンスはM&Aとは異なり、経営権の譲渡が生じない
・アライアンスのメリットは経営面の独立性を保ちながら競争力の向上、コスト削減、新規市場への迅速な参入ができること
・アライアンスを締結する際には機密情報流出のリスクや管理・運用の複雑化への対策が必要
・成果を約束するものではないことを認識し、事前に責任の所在の明確化させることが重要
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