静岡県川根本町にある「寸又峡（すまたきょう）」。原生林と清流に包まれたこの幽谷の地は、古くから、訪れる人々の心を癒してきました。寸又川を堰き止めてつくられた大間ダムの湖上に架かる「夢のつり橋」からの眺めはまさに絶景。時にエメラルドグリーンに輝き、またコバルトブルーに染まる湖面は、思わず息をのむ美しさです。最大の魅力は、手つかずの大自然が広がる、ロケーション。新緑や紅葉など、季節ごとのつり橋の姿を写真に収めるために、ここを訪れたい気持ちが沸きあがります。

大切な人との関わりが少しずつ戻ってきた今こそ、自然のパワーに満ちた「夢のつり橋」で感動を共有してみませんか？ 

「夢のつり橋」がある寸又峡エリアは奥大井県立自然公園に指定されていて、豊かな自然と貴重な生態系が守られています。つり橋の下に広がっているのは、大井川の支流である寸又川につくられた「大間ダム」。それを取り囲むように広がる森の新緑や紅葉がダム湖に映り、青い湖面にいっそうの美しさをもたらします。

このつり橋は、もともと深い山間に暮らす人々が行き来する生活の道だったそう。この絶景は寸又峡の大自然と人間の営みによるものと考えると、かつての光景を思い浮かべロマンを感じられるでしょう。「夢のつり橋」という名前の由来は、キラキラと輝く青い湖面に浮かび上がるつり橋の姿があまりにも幻想的で、夢に出てきそうだからという説があるそうです。

つり橋は全長90メートル、水面からの高さは8メートルで、中央に簡単な板を渡しただけという潔さ。そのため、渡る時の揺れはスリル満点です。

• 神秘的に輝く湖面「青色」の秘密

インターネット上で「死ぬまでに渡りたい世界の徒歩つり橋」に選ばれたこともある「夢のつり橋」。人々を魅きつけてやまない大きな理由は、青く澄んだ湖面の色です。水が青色に見えるのは自然界の作用によるもの。寸又川の澄んだ水に光が差し込むことで、波長の短い青い光だけが反射される「チンダル現象」が見られるのがその理由です。実は、水が透明すぎても青く輝かないと言われています。

• 夢のつり橋を渡る時の注意点

一度に橋を渡れるのは最大10名までと決められています。先を急ぐように集団で渡ったり、途中で立ち止まる、わざと大きく揺らすことなどはくれぐれも慎みましょう。

一度に橋を渡れる人数に制限があるので、新緑や紅葉などのハイシーズンや大型連休の際には数時間待ちの行列ができることがありますが、そんな時期でも比較的ゆっくり楽しめるのは早朝と言われています。美肌の湯として知られる寸又峡温泉に宿泊して、朝一番で訪れてみましょう。

つり橋までの道のりには急な下り坂や階段が、つり橋を渡った先には上り階段が続くので、スニーカーなど歩きやすい靴が必須です。また、夢のつり橋をはじめ豊かな緑の中を歩く散策路「寸又峡プロムナード」は、一周約90分の周遊コース。ゆとりをもって出かけましょう。

• おすすめの撮影ポイント

夢のつり橋をわざわざ早朝に訪れたい理由は、混雑を避けるためだけではありません。他の観光客が少ないため絶好の撮影タイムとしてもおすすめです。もちろん譲り合いの気持ちと節度のあるマナーはお忘れなく。自然豊かなロケーションに包まれた夢のつり橋の幻想的な立ち姿を、ぜひ思い出に残してください。

おすすめの撮影ポイントを２つご紹介します。ひとつめは「遠くからつり橋全体が見える場所」です。

ぐっと寄って撮影した写真も迫力がありますが、紅葉時期などは全体が収まるように撮影すると周りの色づいた木々が映えて素敵です。

ふたつめは「つり橋を渡る直前／直後」。ただし、つり橋の途中で立ち止まることは禁止されているので気を付けましょう。

夢のつり橋が架かる湖面はその時の光の入り方で色が変化します。たとえば「影のある場所は深いコバルトブルー」、「明るい場所はエメラルドグリーン」といった具合です。近くからだけではなく、少し離れて遠目からなど、さまざまな距離や角度から撮影して、とっておきの1枚を納めてください。

いずれにしても人が多すぎると撮影はなかなか厳しいもの。上手に撮影する一番のポイントは「早起きすること」かもしれません。

つり橋を渡る時のドキドキ感を、恋愛の高揚感と勘違いしてしまう「つり橋効果」はよく知られているところ。不安定に揺れるつり橋を一緒に渡ることで一体感が生まれ、ぐっと関係が深まると言われています。

さらに夢のつり橋には「橋の上でお祈りをすると願いが叶う」という言い伝えもあるそう。恋愛の悩みだけでなく、開運が期待できるパワースポットとも言われています。

夢のつり橋がある寸又峡へのアクセスは、大井川鐵道の千頭駅からバスを利用します。あわせて、山間をゆっくり進む、大井川鐵道井川線（南アルプスあぷとライン）の素晴らしい車窓も楽しみましょう。

千頭駅～井川駅間(片道1時間50分／大人1,340円)は、心が洗われるような秘境感に満ちたエリア。日本一の高さの鉄道橋（関の沢橋梁）や、湖に浮かんだように見える「奥大井湖上駅」など、思わずカメラを向けたくなるスポットがたくさん。車内放送でも沿線の見どころや四季折々の景色を案内してくれます。

もうひとつ注目したいのが、国内唯一の「アプト式列車」に乗れること。アプト式列車とは、レールの中央に歯車を設けて歯車と車両をかみ合わせることで、急勾配でも滑らずに登降できる鉄道のこと。「アプトいちしろ駅」と「長島ダム駅」間で体験でき、日本一の急こう配を登ります。

静岡県榛原郡川根本町の大間ダム湖に架けられた「夢のつり橋」。手つかずの自然と青く澄んだ湖面が調和する、ロマンチックな場所です。コバルトブルー、エメラルドグリーン、ターコイズブルーと、どのような色に感じられるかは人それぞれですが、自然の美しさに素直に感動できます。

車で訪れるのもおすすめですが、見どころがたくさん詰まった大井川鐵道井川線（南アルプスあぷとライン）を利用して秘境感たっぷりの車窓も満喫し、さらに濃厚な思い出を残しましょう。